第17話 約束の消滅
大学に入って、2年目の夏休みを迎えた。
一年の夏は忙しくて帰ることが出来ず。正月は帰ってきたが親戚との挨拶やら家族との初詣やらで忙しく。そして春休みは海外研修で戻って来られず。これらの理由により、僕はグリ活メンバーに会うことはできなかった。だが、それも今日で終わり。やっとのことで、長い休みを取り、地元に戻り、部活メンバーで集まることができた。
「
まず初めに会ったのは
こんな美女、高島じゃなくても心を射抜かれる……!
幸い、部活仲間というスタンスのおかげで僕は大丈夫だったが、たとえばこれが大学で初めて出会った人とかだったら、正直どうなっていたかわからない。そのくらい、冴島さんは変わっていた。女の子って、なんかすごい。
「冴島さん、久しぶり。髪、伸びたね」
出来るだけ自然に話を振ってみた。緊張して少し声が上ずる。
「うん、伸ばしてるの」
「あれ、でも高校のときはあんまり長すぎても邪魔だって言ってたよね?」
普通に話していたつもりだったのだが、なぜかそこで冴島さんの様子が変わった。その先を言うか言わぬか迷っている、みたいな。でも、すぐに彼女は口を開いた。
「……
え。ちょっと待て。冴島さん、頬染めてる。え。ナニコレ。ナニコレ!? まさか、いやまさかね。ないない。それだけはさすがにない。……とは思ったが、念のため僕は聞いてみた。というか好奇心で半ば無意識に聞いていた。
「あの……も、もしかしてだけど、冴島さんと高島って、付き合っ……」
「ち、違う違う! これは、その……私の一方的な思いであって……向こうは何とも思ってないだろうし……」
和也くんには言わないでね、と冴島さんが口元に指を当てて内緒ポーズをしてきた。うわ、顔近づけるのやめてくれ。そりゃ反則だ。
にしても。
高島、よかったな。
数分後、高島も来て、僕ら3人は行きつけのファミレスに向かった。結局、ここが一番落ち着くのだ。
「戸塚くんは卒業式ぶりだね」
「高島たちは、そのあと会ったりしてたの?」
すると、高島が頭をポリポリと掻きながら「まあな」と笑った。うわぁ、すげぇ初々しい。恋愛経験ゼロの僕が言えたことではないけど。
「もう卒業してから2年も経ったのか。……俺、グリ活、
「私も! 戸塚くんがいたから勇気出せた」
「な、なんだよ、今更。ていうか、僕にお礼言うなら、もっと言うべき人がいるだろ?」
そこで異変が起きた。
2人が首を傾げたのだ。
「言うべき人?」
「あ、アレか?
「え、あ、まあ先生もそうだけど……」
そうじゃなくて。
「誰だよ? 後輩か? まあ後輩いなかったら俺たち部活できなかったからな。人数不足で」
「うん! 感謝しなきゃだよね!」
違う。後輩じゃない、その逆だ。僕らには、もっと大切な人が…………。
いた?
「そうそう! 後輩たちにもちゃんと感謝しろよ。僕、初代グリーン活動部部長からの命令です」
「こういうときだけ部長ヅラすんじゃねぇっつーの!」
「和也くんのその台詞、なんかデジャヴ……」
その後も、僕らの会話は続いた。あのときの高島はダサかったとか、翼は意外とボケが上手いとか、冴島さんは綺麗になったとか……昔話から近況まで、全部。
楽しくて笑い合っていた、その視界の外れで。
暗闇の中、ひとりぼっちの松の木が小さく揺れているのが、ぼんやりと見えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます