第3話 物上茅
物上茅。
龍太郎の父の姉の娘。
つまりは龍太郎から見て伯母さんの娘であり、家系図で見たときの従妹に位置する。
年は六つ程離れている。おそらく今は高校一年のはずだ。茅と最後に会ったのは去年のお盆での集まり以来。あの時と比べると、背も伸びて顔が締まっている気がする。
……これが成長なのかなぁ。
龍太郎はなんとも年より臭い思考をする。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
二階で話すのもなんなので、二人は一階のリビングに移動している。本日の気温は高く、コップの麦茶に氷を加えて茅に差し出した。茅は礼を言って、麦茶を半分程飲むと話しを切り出す。
「お久しぶりです、龍兄さん」
水を含んだ茅の声が少し瑞々しい。
ちなみに、彼女ーー物上茅が加藤龍太郎を龍兄さんと呼ぶのは、龍太郎は三人姉弟で上に姉と兄が一人ずついるからだ。そのため、各々の名を上から瞳姉さん、宏兄さん、龍兄さんと呼ばれている。
「久し振りだね、茅ちゃん。今日は叔母さんと一緒に来たの?」
「いえ、違います。遅れましたが、今日は挨拶に来ました」
「挨拶?」
なんの? と聞き返す龍太郎に、
「はい。先ほど叔母様に挨拶しましたがーー実は私、今年からこちらの専門学校に通うことになりましたので、こちらに引っ越したんです」
「えっ、そうなの」
「はい。初めは引っ越してすぐに挨拶に伺おうと思っていたのですが。引っ越しの作業や初めての一人暮らしだったもので、今日に至るまで挨拶が遅れてしまいました」
「全然気にしなくていいのに」
「そう、ですか?」
相変わらず真面目な性格な子だ。と龍太郎は思った。
大雑把な伯母の娘とは思えない。あの人は、月に三回ぐらいの頻度で車ぶつけてるし。それを笑いながら電話する。無茶苦茶な人物である。
茅は麦茶を飲み干すと、ところで龍太郎さん、
「さっきまで部屋の掃除を……?」
「あぁ。汚いところ見せてごめんね。久々に始めたけど中々上手く出来なくて。全然片付いてないんだ」
まだ纏めたゴミは捨ててないしロフトベッドとか残ってるからね、と続けて。
「まっ、ゆっくりしていきなよ。麦茶のおかわりでもいるーー」
ダンッ!!
「龍兄さん」
「うおっ!」
机を叩く音に驚くと、茅がぐいっと体を前にだし、
「私も龍兄さんの部屋を掃除します」
「な、なんで?」
「龍兄さんは掃除が苦手そうなので」
女子高生に真顔で言われたっ!! と軽くショックを受ける龍太郎。
「それに私は掃除が好きです。龍兄さんの部屋はパッと見でしたが、中々掃除のしがいがありそうでした!」
テンションが上がってる……? 茅ちゃんの張り切るポイントがわからん!
四度目の混乱を迎える龍太郎を余所に、茅は二階の部屋に向かった。
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