閑話 アイドルの座は譲れない4

★ファイナルラウンド



今日はなんだか騒がしい。

折角お昼寝をしていたのに、うるさくって眠れないじゃない。

もう、仕方ないわねぇ。

目がすっかり冴えてしまったアタシは大きく伸びをして、いつもの窓辺に登って外を眺めた。


外を歩いている人達、なんだかみんな嬉しそう?

なんかいいことあったのかな?


「お、いた、いた」


お兄さんが忙しいときに代わりにお世話をしてくれる人がアタシを見つけてヒョイと抱き上げた。

な、何よ、いきなり?


驚いて手に爪を立てたが、何ともないらしい……。

「ああ、驚かせてごめんよ」

その人は謝りながらそのごつごつした手で撫でてくれる。……気持ちいいから、ま、いいか……。


連れて行かれたのは広いお部屋。そこには先客がいて……。

「あ、ブルーメだ!」

真っ先にアタシを見つけた女の子が駆け寄ってくる。いつも遊んでくれたあの女の子だ。

「まあ、ブルーメ、無事だったのね」

「ルークが世話をしていたそうです」

あの優しいお姉さんも、いつもおいしいご飯を用意してくれたお姉さんもいる!


お兄さんが床に降ろしてくれたので、ニャオンと一番かわいい声で鳴いて擦り寄ると、優しいお姉さんはその手で撫でてくれる。

うーん、やっぱりこの人の手が一番気持ちいい。ゴロゴロと喉を鳴らして体を摺り寄せると、抱き上げて膝にのせてくれた。


「ブルーメも大変だったのね。良かったわ、また会えて」

頭から背中にかけて優しく撫で、喉の下もくすぐってくれる。もう、たまんない。


あー幸せ……。


ピシッ!


撫でられる心地良さに身を任せていると、急に何かが打ち付けられる。

痛いにゃない!

ガバッと体を起こすと、目の前に尻尾をゆらゆらと揺らしているアイツがいた。アタシの幸せなひと時を邪魔するなんて許さない!


グッ?


アイツは素知らぬ顔をして首を傾げているが、尻尾をわざと揺らして挑発してくる。ムカついたアタシは狙いを定めてアイツに飛びかかった。


フミャー!


「あらあら……」

「ルルーと仲良しだったもんね。ブルーメも嬉しいのかな?」


ドスッ!ガタン!

オンギャー!


激しい取っ組み合いをしながら床を転げまわっていると、何か硬いものにぶつかった。とたんにけたたましい泣き声が聞こえてアタシもアイツも動きが止まる。


「あぁ、びっくりしたのね。よしよし……」

いつもご飯をくれるお姉さんが人間の赤ん坊を抱き上げてあの優しいお姉さんに手渡した。そしてそのお姉さんはもうアタシには目もくれずにその赤ん坊をあやし始める。


「あ~、エルヴィンが起きちゃったじゃない。騒ぐんならお外に行って」

アタシとアイツは女の子に掴まり、部屋の外へ追い出された。


バタン


無情にも目の前で扉が閉められる。

中からはお姉さん達の楽しげな声が聞こえる。

え~ちょっと待って~。


ニィー、ニィー……

クルクルクル……


アタシもアイツも中に入れてもらおうと、甘えた声を出して扉を引っ掻いていたら、何時かの黒い服を着た男の人に見つかって、また何時かの様に難しい言葉で小言を言われた。



結局、喧嘩両成敗で勝敗はつかず。しかも第三者エルヴィンに横取りされて終結となった。



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ちなみにファイナルラウンドはベルクの糾弾が行われた日、フォルビア正神殿から城に移動した直後のお話。エドワルドは執務でこの場にはいなかった。


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