閑話 ジーンとリーガス愛の劇場6

第6話 愛の結晶


 殿下の救出に成功した。しかし、バカ皇子どもから受けた暴行により、思った以上に殿下の体は弱っておられる。しかも殿下だけでなく、復帰したばかりのアスター卿も受けた傷の後遺症とかで寝込んでしまわれた。

 仕方なく事後処理は我々が行ったのだが、なかなか仕事がはかどらない。結局、総督府で待っておられる姫君に報告出来たのは夜明け前だった。

「そうですか、良かった……」

 ユリウス卿に付き添われてお出ましになられた姫君は不安気にしておられたが、報告を聞いて安堵の表情を浮かべる。同席した総督殿もクレスト卿も同様にほっとした表情を浮かべていた。

 だが……先程から気になっているのだが、妻のジーンの姿が見えない。自らアルメリア姫の護衛を申し出て総督府に残ったはずなのだが……。

「リーガス卿、ジーン卿の事が気になりますか?」

 どうやら彼女を気にかけているのがバレバレだったようだ。

「気分が優れないらしいので、休ませました」

「え?」




 気が動転し、気がつけば挨拶もそこそこに姫様の御前を辞去して妻の部屋に向かっていた。

「ジーン!」

「……リーガス?」

 寝台で横になっていた妻は目をこすりながら体を起こした。

「ジーン、気分が悪いって……クララかヘイルに診てもらったのか?」

 いつも元気な彼女が寝こむなんて、何か悪い病気じゃないのかと心配になってしまう。

「うん……」

「ジーン」

 寝台に腰かけて体を起こした彼女を抱きしめる。すると彼女は、気持ちを落ち着けるためか一番のお気に入りである私の二の腕の筋肉に手を這わせる。

「あのね……」

 何を告げられるのか、私は覚悟を決めて彼女の言葉に耳を傾ける。

「出来ちゃったの」

「は?」

「赤ちゃん」

「……」

 それこそ予想外の答えに私は頭の中が真っ白になった。


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