閑話 ルークとティムの野外活動1 ルークの覚書

あけましておめでとうございます。

今年もどうぞよろしくお願いします。

今日と明日は閑話を更新します。

楽しんで頂けたら幸いです。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




1日目


見送りの為にわざわざ館に来てくれていたオリガが朝ごはんだけでなくお弁当を用意してくれた。

今からお昼が楽しみだ。

昨夜は今日に備えて早く寝てしまい、オリガと過ごすことが出来なかったのが悔やまれる。だけど……この旅を終えたら休暇を貰い、一緒にアジュガへ帰省する約束だ。

へましないように気を引き締めて行こう。

日の出とともに館を出発。

街道を道なりに北西に向かい、一旦フォルビアの街を目指す。

大過なく進み、フォルビアの街に着く。今日はここで宿をとった。




2日目


宿で朝食をとってから出発。

街道に沿って北部を目指す。

昼を過ぎた頃に穀倉地帯を抜ける。いいペースだ。

最北の山岳地帯を目指す。

日が暮れる頃、ふもとに到着。水場を見つけたので今夜はここで野宿。

ティムもまだ余力があるみたいなので不寝番は交代でする。

エアリアルは今頃どうしてるかな。




3日目


日の出とともに出発。

山道はよく整備されていて思った以上に旅が捗る。

それにしても不思議だ。

確かにこの先には湯治場があるが、その規模に対してあまりにも道が立派過ぎる。

むしろ今まで通ってきた街道の整備の方が遅れている気がする。

昨年は気づかなかったが、この先に何かあるのだろうか?

今夜も野営。交代で不寝番をした。

オリガに早く会いたいな。




4日目


今日も日の出とともに出発。

午前中に最初の目的地、古傷に効能があると言う温泉が湧く湯治場に着く。

早めに宿を決めて食堂で昼食を摂りながら情報収集する。

陽気な食堂のおばちゃんが、色々サービスしてくれる。

ありがたいが、さすがに満腹だ。

小さな食堂だが随分と羽振りが良さそうだ。

夜になると隣のワールウェイド領から頻繁に人が来るらしい。

主に自警団員の様なガタイのいい男達なので、食べる量も飲む量も相当なのだとか。

とりあえず夜を待って出直す事にする。




5日目


頭が痛い……。

さすがに昨夜は飲み過ぎた。

こんなに飲んだのは昨年の夏至祭以来だ。

オリガが持たせてくれた薬を飲んで昼まで寝てしまった。

しかし、その甲斐があって情報が得られた。

男達はここから更に北にある施設の自警団らしい。

貴重な薬草を温泉の熱を利用した温室で育てているのだとか。

そんな話をどこかでも聞いた気がするが、今の頭では思いつかない。

彼等は自慢げに楽な仕事だと言っていた。

夕方から丸一日勤務して次の者と交代して1日休みを貰える。

給料もなかなかいいらしい。

同じ釜の飯を食った仲だといって俺も誘われたが、答えは保留にしておいた。

俺が寝ている間にティムはそこまで様子を見に行き、施設のスケッチを何枚か持ち帰ってきた。

良くできた子だよ、本当に。

明日は早朝に出発するので今夜は大人しくしておく。

あーオリガとエアリアルに会いたい。




6日目


早朝に出発する。

今度は山を下り、南東に向かう。

次の目的地は一族の重鎮、ヘデラ夫妻のおひざ元だ。

最低限の変装はしているけど、ばれないように気を引き締めて行こう。

午後になって雨が降り出したので、途中の村で一泊する事に。

ティムと2人で力仕事を手伝ったら随分感謝された。

農繁期のはずだが若者は出稼ぎに行っているらしい。

詮索しすぎない程度に話を聞くと、無理やり連れて行かれた様だ。

残念ながら何をさせられているかまでは分からなかった。

何か企んでいるなら阻止しなければ。

今夜は野宿を覚悟していたが、思いがけず屋根の下で眠ることが出来て良かった。

ここからなら一日あれば次の町に着く。

雨でも出発するから今日は早めに就寝した。

おやすみ、オリガ、エアリアル。




7日目


どうにか雨が止んでくれた。

一晩世話になった家の人たちに見送られて出発する。

道がぬかるんでいて馬が歩きにくそうだ。

とても主要な街道とは思えない。

去年も指摘したはずなのに、全く改善されていない。

帰って報告すれば、殿下はきっと改善して下さるはずだ。

夕方、目的の町に着いた。

宿は下町の方を選んだが、気を抜かないようにした方がよさそうだ。




8日目


ほとんど眠れずに夜を明かした。

深夜と明け方に2度ほど物取りが侵入してきたので、至って紳士的にお引き取り願った。

ティムは余程疲れていたのか、この騒ぎにも目を覚まさなかった。

まあ、いいか。

さっさと宿を引き払い、午前中は町中を見て歩く。

残りの旅に必要な物をあがないながら歩くが、相変わらず格差がひどい。

ヘデラ夫妻の館に近い一帯は清潔でよく整備されているが、一歩道を外れると崩れかけた廃墟が目立つ。

擦り切れた服を着て、力なく道端に座り込んでいる人を見かける。

元気に走り回っている子供もいるが、気を付けないとぶつかってきた拍子に懐の物をすられてしまう。実際に3回ほど狙われた。

ここの実態も殿下に報告しておこう。

一通り見て回り、必要な物も手に入れたので昼には町を出発する。

正直、町から離れてほっとした。

今夜は野宿。不寝番は交代でした。

あー……早く帰ってオリガの顔を見たいよ。




9日目


穀倉地帯に帰って来た。

一面に広がる畑に気分も良くなるが、きちんと実態も見て回らないといけない。

灌漑かんがい用の用水路の整備など、去年見て気になったところの半数は改善されている。

まだまだだけれど、良くなっている実例を見ると役に立った実感がする。

ティムも同意見の様だ。

今夜も野宿。夕食は2人で魚を獲った。

ティムに自分が食べる分は自分で獲る様に言ったところ、どうにか確保できたみたいだ。

随分疲れていたみたいなので、今夜の不寝番は引き受ける。

星がきれいだ。こんな夜にエアリアルと飛ぶのも楽しい。いつかオリガも誘って飛びたいな。




10日目


今日も早朝に出立する。

朝の内にフォルビア正神殿に到着する。

なんだか警備が物々しい。

小耳にはさんだ情報では礎の里から高位の神官が来ているらしい。

グロリア様の霊廟に向かうと、こちらは通常の範囲内だった。

今でも多くの花が供えられていて、あの方の偉大さを改めて感じた。

俺達も受付で買った香と道中で摘んできた野の花を供える。

あれから2ヶ月経ったけど、まだ信じられない。

お館のあの居間に行けば今でも会えるんじゃないかと思う。

正直、ここは顔見知りが多いので、変装をしているのがばれると後が面倒だ。

長居はせずに出立する。

今から出れば昼過ぎにはお館に着くだろう。

オリガに会えると思うと、自然と足取りも軽くなる。(馬に乗っているけどね!)

さあ、帰ろう!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る