閑話 ジーンとリーガス愛の劇場4

今宵は舞踏会である。

この地方で最も格式が高いとされている夜会の1つだ。

隊長を勤めているために毎年招待されてるが、自分には正直、苦痛な時間でもある。

だが、今年は楽しみが一つだけあった。

新妻のジーンがどんな装いをするか当日まで内緒だと言って教えてくれなかったのだ。

これから迎えに行くのが実に楽しみである。


「少しお待ちくださいませ」

マリーリア卿を迎えにきたルークと共に支度をしている部屋に行くと、応対に出た顔見知りの侍女が2人を呼びに奥へ戻っていく。

そして衣擦きぬずれの音と共に2人が姿を現した。


最初に目に入ったのは真紅のドレスをまとったマリーリア卿。普段と異なるドレスアップした姿に私もルークも言葉を失くす。

そして最初の驚愕きょうがくから覚めて隣に立つ妻の姿を見て私は再び絶句する。

「な……」

何で、いつもと同じ竜騎士礼装なんだ?

「ふふっ、驚いた?」

悪戯っぽい目で彼女は私を見上げる。

「これで出席できるのも最後だからね。見納めよ」

「……」

確かにそうかもしれないが……。

「それに……こっちの方が楽なんだもん」

それが本音か……。

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