第39話王国首都での出来事
ダンジョンを単独パーティーで攻略に成功した晃達は王国の首都の近くまでワープを行い帰着したのでありました。
夕闇が終わり、ほぼ夜に突入しようとする頃合いであった。
王国の周りはモンスターや敵国から守るため高さ3メートルはあろう岩を積み重ねた塀で囲まれており、中に入るには門番の兵士が守る門を通らなくてはいけない。
アース大陸の冒険者は国王の定めにより、フリーパスとなっている。晃達が通過しようとすると、門番の一人が飛び出して来て、
「待ちなさい! アース大陸の君達は構わないが、エルフとその動物には審査がある」
とルーク、アリシアとコタローを指差しながら近づいて来た。
葵さんが兵士に「エルフとも正式な国交が結ばれたとお聞きしましてよ?」
「ああ、もちろんわかっておる、ただ名前を登録して身分証を発行するだけだ、もちろんその子犬もな、詰所に入ってくれ!」
晃達が待ってると、5分くらいでルーク、アリシア、コタローが出て来た、誇らし気にカード型の身分証を見せてくれた。
コタローの首輪にも立ち入り許可証が付けられている。
10人くらい居る兵士の中でもベテランの一人が「ひょっとしてお前達、疾風の晃率いる風のドラプリの一行なのか?」
「そうですが……」晃が答えると。
「奴隷密売組織クランノストラ黒のシェパードの逮捕に尽力してくれたらしいな、しかも単独パーティーでダンジョンを突破したとか……」
「それは凄いな!」他の兵士達も集まって来た。
すっかりダンジョン突破の噂が出回っているようであった。
ひとしきり兵士達の賞賛を浴びた後、夜の灯火に照らされた、王国首都に降り立つ。
街の入り口には石畳みの大きな広場がありその後方には店などの商店街、さらにその後方に丘陵を利用した煉瓦造の家並がぎっしりと並んでいて、灯りがともり始めると幻想的な夜景になる
街の真ん中ににはさらに高台があり頂上に真っ白な王城があり、その手前にも尖った屋根を持つ大聖堂が建っており、荘厳な風景である。
沙羅が「何度見てもここの夜景は素敵だわ!」
「葵姉、ここの夜景って、小学校の時にヨーロッパ旅行した時に見た、スペインの古都トレドに似てるでござるよ」
「そうですわね、街並みはトレドで、広場はイタリア、ヴェネツィアのサンマルコ広場に似ているかしら」
さすがお金持ちお嬢様達だ……小学校の頃からヨーロッパ巡りとは恐るべし!
「夜も更けて来たし、散策は明日にして宿探ししますか!」
ルークが「初めての高級宿屋楽しみだな!」
「楽しみじゃ!」アリシアも同意している。
ここまで期待している以上はいつもの常宿では期待はずれになってしまう。
王国の宿屋街にはランクの低い宿屋は、一泊銀貨1枚と銅貨5枚から泊まれるが、当然相部屋で衛生も良くない。
銀貨3枚からそれなりの宿屋になる、晃はその中間クラスである銀貨5枚の宿を常宿としていたが、ルーク、アリシアが楽しみにしてることもあり、一泊金貨1枚はする王国では上位ランクの高級宿屋に連れてきた。
さすがに立派な門構えの宿の手前には貴族や商人などの客の馬が多数繋がれている……。
意気揚々と門をくぐると、大きなロビーが広がり、立派なドレスを着た太り気味の女将が笑顔で迎えてくれる、
「いらっしゃいませ!」
そして、目がコタローに注がれ、
「申し訳ないけど、家畜は外の馬と一緒に繋いでおくれ」
晃達の顔が曇る……葵が「コタローも家族ですのに……」
晃が「仕方ないよ、日本でもペットOKホテルなんてほんの一部しかないもの」
だがしかし、次に女将の発した言葉が葵を始めとした晃達の心に火を着けた、
「あなた達若いのに従者まで引き連れているのね、従者のお二人には従者専用の大相部屋用意しますわ!」
とルークとアリシアを見ながら言い放った。
すかさず晃が「彼らエルフ達も従者じゃなくて、ちゃんと料金を払う客だよ!」
「それは困りましたわね、いくら料金を頂いても、亜人を正部屋に泊めたと噂が広がると、この宿の評判が下がってしまいますわ!」
明らかに怒りの表情に変わった葵が、
「他探しましょう、時間の無駄ですわ、こんな差別的な考え方する宿には泊まりたくありませんわ!」
踵を返して、入り口から出て行く。
女将も負けじと後方から、「あらあら、どこ当たっても同じですわよ、ほほほ!」
その後、晃達一行は他の高級宿屋を2件当たるも同じような対応をされてしまう。
晃が「ルーク、アリシアすまない! 不快な思いをさせてしまって……」
アリシアが笑顔で「晃が謝ることない、ヒューマンが作った街だ、彼らなりのルールがあるのは当然だ!」
ルークも「そうだな!」と同意してくれた。
「じゃあ、僕らが常宿にしている宿屋に行きましょう、あそこなら大丈夫さ!」
晃達が常宿にしている中級の宿屋に赴きフロントにいた女主人に経緯を説明した。
「あらあらあなた達、それは災難だったわね、もちろんこの宿屋はお代さえ頂ければ、差別はしませんわ、但し犬は裏口から入った台所につなぐのなら……それなら他の客の目に入らないし……」
ルークが「かたじけない、室内に入れてもらえるだけでも感謝だ!」
かくしてみんなで台所の隅に繋がれたコタローの足元に毛布を敷いてやりながら、
「コタローまた明日!」
と挨拶をすると、
「クゥーン、クゥーン!」と悲しそうだ、それはそうである、いつも母親と一緒で、母親が亡くなってからは、ルーク達新しい家族と一緒に寝てたもんね。
沙羅が「なに甘えてるのよ、決して一人じゃないじゃない! ネッキー達虫さんも一緒じゃないの! あんた達もコタローに何かあったら私に知らせるのよ!」
コタローの首輪に変身している金属甲虫達が、プルルンと震えた!
「ワン!」コタローも一人じゃないと元気になったようだ!
「はははは!」笑いに包まれた。
そして葵が「おほほほ! 皆さんワタクシ決心しましてよ! この王国の土地でコタローやエルフのルーク、アリシアさんと楽しく暮らせる家を買いますわ! 明日は不動産屋回りますわよ!」
どうやら一連の出来事がお嬢様を本気にさせた様でありました。
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