秋桜の蕾

 留学先に父の訃報が届き、僕は慌てて帰国した。

 父の葬儀に間に合わないことは分かっていたが、帰ってみれば恐ろしいことになっていた。


 叔父が王冠を戴き、母がその隣に皇后として控えていた。

 王位は王太子である僕が継ぐもののはずであったし、母は半年は喪に服するべき人なのだ。

 なのに、一月も経たぬうちに、喪服を脱ぎ捨て、花嫁衣装に着替えるなどあってはならない。


 夕食の後、僕は母を問い詰めた。

 僕がまだ子供だから、今は叔父が王となっても、その次の王は僕だからと諭された。

 早々にも服を脱ぎ捨てたことに関しては、女には寄る辺が必要なのだと。


 聞けば、父が倒れた時、側にいたのは母だという。しかも、祖父の葬儀とそれに続く父の戴冠式の時しか帰ってこなかった叔父が帰っていた時だという。

 僕がまだ子供なのは仕方が無いとしても、叔父と結婚せずとも、先王の妻をないがしろにできるわけなど無いのだ。


 僕が留学して、国を離れている間に何があった?

 絶対に暴いてやる、覚悟してろ。

 もともと、王として国を導かねばと、留学を切り上げるつもりでいたのだから。

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