裏側

 何が魔王だ、このような戦略で勝てるわけが無い。西部方面の担当を命じられた将軍、アンドレ・ハイドランジアは頭にきていた。


 こちらは国民全兵士の思想のもと、国民誰もが勇者の排除のために戦っていた。

 一方敵方は、勇者一行の一点突破である。

 その結果、こちらからすれば勇者一行を除けば雑魚ばかり、いくら戦闘をしても経験値の種にはならない。

 一方敵は、当方の訓練された兵士と戦い、経験値を得、着実に力をつけている。

 数で押せば押すほど、相手に力をつけてやる事になっている。


 これ以上力をつけさせてなるものかと挑んだ三度目の大規模な攻防戦でも、辛くも負けてしまい、撤退を余儀なくされた。

 このような方法ではダメだと分かっているのに、どうしようもない。

 それよりも、早く撤退に関する始末書を仕上げねばならいのだった。



 いいことを思いついた。敵の雑魚で経験値にならないのであれば、自軍でどうにかすれば良いのだ。

 各部隊に武闘大会の開催を命じた。死ぬ気で戦闘をさせ、経験値を積ませる。

 そして、各大会の優勝者を褒美と賞して私との戦闘をさせる。もちろん、優勝者を始末して、私が経験値をがっつりといただく。


 こうすれば、勇者一行の経験値の種を摘み取りつつ、私が力をつけることができる。あとは、私が勇者一行を退治して、終了だ。


 武闘大会に関しては始末書を書くことになるだろうが、それで済むのなら安いものだ。



 ついに、勇者一行と対峙する日が来た。

 魔王の指示に従っていれば、この時点の私の強さはこれほど上がってはおらず、勇者一行はもっと強くなっていただろう。

 けれども、武闘大会のおかげで、私は強くなり、勇者一行は第三次攻防戦とほぼ同じ強さだ。

 これならば、勝てる。


 魔王様、ようやくあなたに勝利の報告をできます。

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