CHAPTER―2
集落を足早に出発し半日がたち、日が落ちて暗闇の中を歩いていた。
一番前をオースティンが歩きその後ろをチェン、三番目にマイクがチェンに銃を向けながら歩き、ユルバン、ワルテ、クリスの順で歩いている。
今朝から歩きっぱなしで全員の言葉が少なくなり、クリス自身も体が重く感じられてきたので前を歩くチェンに聞いた。
「チェン、安全に休憩できそうな場所はないのか?」
チェンは足を止め後ろを振り返りながら言った。
「目的地まで森を突っ切るから安全な場所はどこにも無い、それよりもこれを解いてくれないか?手首に食い込んできて痛いし歩きづらいんだ」
チェンがヒモで結ばれている手首をクリスに見せ付けた。
「目的地までどれくらいだ?」
マイクが言う。
「明け方まで歩く必要はあるな」
チェンが言うと無線機で誰かわからないが溜息が聞えた。
「だれた!今溜息をついたのは!?」
マイクが気が緩んできているためワザと怒鳴っているが溜息をつく気持ちはクリスにもわかる。
「いいんだ、マイク、気を使わせてすまないな、これから休憩を取る、オースティン、ユルバンで周りを見張ってくれ」
「ここですか?」
「背を低くしていろ、二時間交代で次がマイクとワルテだ」
了解しましたと無線から聞えてきた。
クリスは背負っていたバックを下ろすと肩が一気に軽くなった。
ワルテはチェンを座らせ足を縛ろうとしたが、チェンがワルテの胸を蹴飛ばしワルテが仰向けに倒れた。
近くにいたマイクがすばやくチェンを殴り倒すと起き上がったワルテと協力をして足を縛った。
クリスはマスクもゴーグルも脱いで風に当たりたい衝動にかられるが放射能を含んだ砂埃が舞う中で取るわけにはいかない、腰のところにつけている水筒を取り出し左右に振って中の量を確かめたが半分以上なくなっていた。
三時間後クリスは水筒の水を無駄遣いしないように少しずつ飲んでいた。
「チェン、ここら辺に水はないのか?」
チェンは思い出すように言った。
「暗くてわからないが近くに川が流れていたような気がするが、ドロやゴミが浮いていて飲めるようなものじゃない」
「どっち側にあるんだ?」
「たぶんあっちだ」
進む方を先を顎で指した。
「偵察も兼ねて見て来る」
クリスが立ち上がるとワルテがAKを杖のようにして立ち上がった。
「自分も行きますよ、一人じゃ危険です」
「大丈夫だ、水を汲みに行くだけだ、何かあったら連絡する」
いうとワルテはマイクを見ると、マイクは頷いたので返事を待たずクリスは歩き始めた。
木の葉から漏れている星の明かりでかろうじて腰の高さまで草が伸びているのが見える、時々木の枝なのか、枝のように硬い茎が体に当たり書き分けるように進んだ、先に川は見えないためクリスは歩きながら考えていたことを言った。
「マイク、ワルテ返事をしなくていいから黙って聞いてくれ、オースティンとユルバンは聞えているな」
「はい」
「聞えています」
返事が返ってくるとクリスは歩きながら話した。
「今回の任務で予定外の事があるのでそのことを話したい」
「チェンですね?」
オースティンが言った。
「あぁ、そうだ、チェンのことだ」
クリスが答えると小さな蚊のような虫が目の前を行ったり来たり飛んでいるので手で払うと何処かに飛んでいった。
「チェンは目的地に到着し、用済みになれば殺す」
「殺さなくてもいいのではないですか?」
ユルバンが訴えてきたが、クリスは歩き続けながら答えた。
「あぁ、殺さないで置いていけばいいと思っているんだろうがそれはだめだ、盗賊でもないような男に捕まるチェンが我々のようなテクノロジーを集めている者が存在しているということを他の奴らに話されれば我々の仲間が危機にさらされる可能性がある、仲間のためなら現地人の一人くらい殺す、わかったか?」
「・・・わかりました、仕方ないですね・・」
ユルバンは納得したようだ、ほかの者も今の話を聞いていればクリスの考えを理解してくれただろう。
それ以上何も言わず黙って歩いているとかすかに水が流れるような音が聞こえクリスは音のする方に向かって歩みを進めた。
木が無くなり地面の土も砂利に変わっていくと10メートル先に水が流れている。
用心のために周りを見渡し人の痕跡がないことを確かめてから木の間を出て川に近づいた。
胸ポケットから直径が6センチ縦に30センチくらいの円柱状の物を取り出した、これは軍の技術部が開発したろ過器で、飲み水が必要になった時に現地の水をろ過器を通し砂や放射性物質や有毒物質を取り除いて安全な飲み水を得ることが出来、筒の上部に水を入れ下を水筒に装着する簡単なものだ。
アメリカ大陸などを調査した我々の先輩達はこのようなろ過器はなく現地で川の水を汲んで飲んだりして体調を崩すものが多数出た為に開発された。
クリスは水筒に少し水をためると水筒にためた水を一口飲んでみた、少しぬるく何かの薬品のような味がする気がしたがそのまま飲むよりもましだと我慢する。
水筒を一杯にして立ち上がるとクリスは言った。
「クリスだ、休憩地点から南に三分進んだ所に川がある、そこで水がないものは給水しておいてくれ」
仲間の返事より先に背後の草が揺れる音が聞こえ、素早く反応しAKを構え安全装置をはずしながら振り返った。
クリスはゆっくりとAKの引き金に指をかけ反対の手でゴーグルのナイトビジョンのスイッチを入れると、草を掻き分けながらうなり声を上げよだれをたらした汚い大型犬が目を光らせてこちらを見ていた。
音を立てず殺したいが仕方がないと思い大型犬の顔にAKで狙いを定め引き金を引いた。
が思い通りにはいかなかった。
大型犬の背後から別の犬が飛び出し、それにあわせるように大型犬も飛び掛ってきた。
クリスはすばやく反応し飛び出してきた犬をAKの銃床で強く殴ったが、もう一匹の大型犬には避けられた。
「くそっ」
思わず毒づくと避けられた大型犬にぶつかり仰向けに倒れ背中に砂利があたり痛みが走り一瞬目を閉じてしまった。
左手の鈍い痛みで目を開けると大型犬が噛み付き腕の肉を千切ろうと左右に振り回している。
右手でガバメント拳銃を抜こうとしたが体が揺さぶられているのでうまく掴むことができない、揺さぶられる体と地面の石に右手を何回かはさんだがうまくガバメント拳銃の銃把を掴み銃口を大型犬に向け引き金を引いた。
噛み付いている大型犬の腹部に弾が当たると腕から口を離し地面に倒れクリスを狙ってうなり声をあげるもう一匹の犬の頭を狙い引き金を引くと身体を一瞬硬直させて倒れた。
ガバメント拳銃の銃声が聞こえたマイクの慌てた声が聞こえた。
「どこから銃声がした、ユルバン、オースティン、クリス返事をしろ」
「ユルバン、わからない」
「オースティン、こちらではないみたいだ」
二人が瞬時に返事をした、クリスは大型犬に噛まれた左腕の服を見て言った。
「今撃ったのは私だ」
「クリスですか?いったい何があったんです?」
左腕にはめていたタッチパッドがうまく噛まれた所を保護してくれたため大型犬の歯が食い込むのをぎりぎり防いでくれた。
「野生の大型犬二匹に襲われたところだ、一匹はうまく避けたが二匹目に噛み付かれて仕方なく両方撃ち殺した」
クリスは左腕の上着が大型犬のよだれでべとべとになり異臭を放っているので背負っている荷物を下ろし上着を脱ぎ左腕ごと川に突っ込んで洗った。
「わかりました、噛まれたところは大丈夫ですか?」
「幸いタッチパッドがあるところでうまく歯がとどかなかった、血が出ている所はないが、犬のよだれのにおいがひどくてたまらん」
「そんなこと言っていないですぐにこちらに戻ってください、何者かに聞かれていたら危険ですからすぐに移動しましょう」
クリスは川で洗った上着を適当に左手で絞って着た。
「すぐに戻るから移動の準備をしてくれ」
「わかりました、聞いてただろ、すぐに準備しろ」
マイクが言うとオースティンたちの返事をする声が聞こえた。
クリスは立ち上がると上着の臭いだ、だいぶマシになっていたので下ろした荷物を持ち死んでいる犬をよけて森に入りマイクたちの所に戻ろうとすると目の前で草が揺れるのが見えAKを構えた。
今度は姿が見えた瞬間に引き金を引くよう自分に言い聞かせると男の叫び声が聞こえた。
「撃たないでくれ!、俺だ、ボーエンだ、撃たないでくれ」
ボーエンだと?どうしてここにいるんだ?。
「両手を挙げて出て来い、変なマネはするな」
クリスが言うと草の陰から両手が上がりゆっくりとボーエンが立ち上がり草むらから出てきた、ボーエンは集落で戦闘があったとき盗賊が持っていたサブマシンガンのよな銃を首からさげていた。
「どうしてここにいる?この犬はお前のか?」
クリスは顔で死んでいる犬を顎で示した。
「俺じゃない、話を聞いてくれ」
「クリスまた何かあったんですか?」
誰かと会話しているのに気が付いたマイクの声が聞こえ答えた。
「今度は集落でチェンといたボーエンが現れた」
「すぐに向かうのでできるだけ動かないでください、いくぞチェンついて来い!」
マイクの声が聞こえクリスは時間を無駄にしないためにボーエンに質問した。
「どうやって我々の後をついてきたんだ?」
「やっと話を聞いてくれるか、俺はお前の仲間に言われた通りに村からはなれるように歩いていったのさ、十分間くらい歩き肉眼ではわからない距離になったら振り返ってきた道を見つからないようにゆっくりと戻ったのさ」
「それで我々を追ってきたのか?」
クリスが尋ねるとボーエンは首を振った。
「違う、盗賊たちを殺すのに手伝ってくれといったが、断られて後を追うようなことはしない」
「じゃあどうしてここにいる?」
「村に戻ろうとした時に盗賊の別の奴らが現れていてそいつらが死体をあさっていたんだ、そいつらは犬を連れていてしばらく見ていると犬が歩き出してその後について動き出したんだ、すぐに俺はお前たちを追っているってわかったね、だから知らせに来たんだ」
「知らせに来ただと?」
思わず驚いた、今までの現地調査ではボーエンのように我々を助けようとしたものはおらず、それどころか我々を殺して装備を奪おうとするものばかりだった。
だからクリスは疑って聞いた。
「何が望みだ?」
ボーエンは不思議そうな顔をした。
「望みだって?俺は別にお前たちになにかしてほしいなんて思ってないよ、ただお前たちが危険だから知らせなきゃと思って走ってきたんだ、それよりも早く移動しないと盗賊に追いつかれ」
急にボーエンが前に倒れ体を地面に打ち付けた。
「大丈夫ですか?、クリス」
オースティンが拳銃を持ってボーエンのいたところに立っていた、その背後からマイクとチェンを見張っているユルバンとワルテが現れた。
オースティンは倒れたボーエンに拳銃を向け動かないように言った。
「オースティン、そいつはお前を殴ったボーエンだ」
「そうなんですか?、じゃあ殴られた仕返しができたんで俺はいいですけど、どうしてこいつはここにいるんです?」
「盗賊の残りが私たちを追って来ているみたいでそれを知らせるために追ってきたらしい」
マイクが犬の死体をしゃがみこみ調べながら言った。
「この犬が噛み付いてきたんですか?」
マイクが犬の首筋を調べると野犬だと思っていた犬に首輪があり引きちぎり投げて渡してきた。
「それを見てください、長方形の白地の中央に赤い丸があって外に光が伸びているようなマークがあります、これはチェンのヘルメットについているマークと同じです」
クリスは首輪を見てからチェンのヘルメットを見ると確かに側面に5センチくらいの大きさで書かれていた。
それを見たユルバンが言った。
「仲間の敵討ちですかね?」
「そうかもしれないな」
ワルテが言うと両腕を紐で縛られているチェンが笑った、それにむかついたのかユルバンがチェンの腹部を軽く殴りチェンは体を折って呻った。
オースティンはその顔をつかみ上げマスクがぶつかるような距離で言った。
「何がおかしいんだ、おい!」
怒っているようで声が低くなっているが、チェンはそんなことを気にすることなく言った。
「お前たちが仲間の敵討ちなんていうからな、やっぱりお前たちはルーカスが言ってた通りここの人ではないんだな、おかしくて仕方がないんだよ、そこに倒れている男だって同じことを思っているだろう?いってやれよ」
チェンはボーエンに向かって言うと、ワルテが立ち上がらせて理由をしゃべらせようとした。
「そんなことよりもさっさと逃げなければ盗賊がやってくるぞ」
「盗賊?」
オースティンは聞いていなかったのかクリスを見た。
「あぁ、盗賊が我々の後を追ってきているらしい、そこのボーエンはそれを知らせるために盗賊の先回りをして知らせに来たらしい」
マイクが犬の死体の血をズボンで拭いながらいう。
「そいつらの犬が来ているってことはだいぶ近くまで来ていますね、人数はどれくらいなんだ?」
ボーエンはしばらく黙って考えてから言った。
「俺が見たのは多くても二十人くらいだと思う」
マイクが腕を組んでため息をつく声が聞こえた。
「相手が大勢いる上にこちには荷物が二つですか・・、厄介ですね」
「待ち伏せしたらいけるんじゃないですか?先に攻撃仕掛ければ勝てるかもしれませんよ?、現地のやつらなんてたいした武器もっていないでしょうし」
ワルテが言うこともわかる、クリスはチェンに尋ねた。
「チェン、目的地はここからどのくらいなんだ?」
「えっと・・・、大体四時間くらいかかるな」
するとマイクがチェンに掴み掛かった。
「お前休憩前は明け方までかかるといっていただろ、それが4時間で着くなんておかしいだろ、おい」
マイクがナイフを取り出しチェンのマスクの間に食い込ませマスクに穴を開けようとする。
「待ってくれ、夜でどのくらい歩いたかわからなかったんだが、休憩していたらだんだん周りの状況がわかってきて正確な時間がわかったんだよ」
チェンが怯えた様に言う。
「本当のこと言っているのか?」
「本当だ、暗くてわからなかったんだ、騙すつもりなんてないんだ、信じてくれ」
懇願するようにチェンが言いマイクがクリスを見た。
「どうします、こいつ?」
「そうだな、今度嘘をついたら、我々の目的のモノが見つかってもその場に残ってもらう、それでいいだろう」
チェンがクリスを見ながら言う。
「それでいい、次はミスしない、約束する」
「盗賊が追いつかないうちにさっさと移動しよう、それとマイクは犬の死体にトラップを仕掛けてくれ、それで盗賊が引っかかればどれくらいの距離が離れているかわかるよに遠くからでもわかるような派手なやつを頼む」
「了解しました、三分ください」
マイクは言い腰のポーチを開け中に入っていた手榴弾を取り出して準備を始めた。
「こいつはどうします?」
オースティンを見るとボーエンがいることを忘れていた。
「どうします?こいつ、ここに捨てていきます?戦闘になったらこいつは邪魔になりますよ」
クリスはボーエンを見た。
「ここまで来たってことは、ここら辺の地理に詳しいってことになるからチェンが死んだときの予備のために連れて行く、ボーエンの持っている武器を回収しておけ、それと手を縛るんだ」
クリスが言うとユルバンがボーエンの武器を取り上げポケットを調べ何も入っていないことを確認した、ワルテがこちらを見た。
「チェンは信用できませんからね」
マイクを見ると手榴弾の罠を仕掛け終わったらしく立ち上がった。
「セット完了です、行きましょう、銃声で歩く速度を速めているかもしれません」
「あぁ、これからは休憩なしで歩き続ける、襲撃されるかもしれないから周りに注意して異常があったらすぐに知らせろ、いくぞ」
先ほどより速いペースで森の中を歩き始めた、ボーエンはユルバンが監視することにした。
一時間くらい歩いていると後方から爆発音が聞こえそれに続き発砲音が聞こえた、後ろを振り返ったが暗闇で何も見えない。
するとユルバンが言った。
「どうやら罠に引っかかったみたいですね、死傷者が出たでしょうから手当てで少し時間を稼げるでしょう」
歩きをとめずにワルテが続けた。
「どうするんです?このまま逃げても目的地まで追って来たら戦うことになるんですから今逃げても仕方がないんじゃないですか?」
するとユルバンが「確かにな」とつぶやくのが聞こえるとマイクが言った。
「何か考えがあるんですか?クリス?」
クリスはチェンから貰ったカードを胸ポケットから取り出して犬に噛まれて傷ついた左腕のタッチパッドに装着し操作してマイクたちのゴーグルにカード内の映像を送信した。
「足を止めて、この動画を見てくれ」
全員が足を止めた、ボーエンとチェンはクリスがAKを向けて見張った。
動画を見ている間に遠くで発砲音が数発聞こえてきた。
「こいつはすごい!」
「うわぁ、ひでぇ」
「何なんだこれ?」
誰かわからない感想が聞こえてきた。
動画を見終わるとマイクがクリスを見た。
「すごいですね、これを回収できたらここ数年で一番の成果になるかも知れませんよ」
マイクの言葉にオースティンが続けた。
「でも、こいつ銃弾が何発も当たっているみたいですが全然効いていませんよ、どうやって回収するんです?クリス」
「確かに今の我々ではそいつらと同じように殺される可能性が高いが我々には援軍がいるからそいつらに戦ってもらう」
ワルテが周りを見渡してから言った。
「援軍?これから呼ぶんですか?」
「違う、我々の後を追ってきているのがいるじゃないか、そいつ等に動画の奴と戦ってもらうのさ」
答えると援軍に気がついたオースティンが感心した様に続けた。
「盗賊とこいつを戦わせるんですね、盗賊が全滅しても困らないし、どんな武器を持っているか確認できますし、盗賊が生き残るようなことになっても我々が奇襲すれば今待ち伏せして攻撃するよりも効果的ですね」
「そういうことか・・・、それならチームの危険が一番低いですね」
マイクは納得したみたいだ。
「解ってくれたのなら先を急ぐぞ」
チェンとボーエンの監視をマイクとユルバンに任せ先に進んだ。
しかし、今の提案には問題がある、動画の奴がどうやったら出てくるとか、うまく盗賊と戦闘になるようにこちらでお膳立てをしなければならない、歩きながらチェンに聞く必要がある。
歩きながら聞きだした動画の状況は目的地の場所に近づくと崖の石壁に偽装された扉が開きアーマーが現れるらしく一度扉が開くとアーマーの射程から逃げるのが困難らしい、盗賊をそこに連れて行くには何か囮か罠が必要になるかもしれない。
動画のアーマー以外に崖の扉から外に出て戦う者は確認されていないらしいが、あのアーマー以外にもテクノロジーが扉の中にあるようであればあれは門番に過ぎないとチェンは言った。
話を聞いたクリスはどうしてお前はそんなことを知っているんだと聞くとルーカスが調べていたのを見たと答えた、ルーカスは一度我々に連絡をせずにどこかから人を連れて来てアーマーを自分のものにし、それを使い自分の国を作ろうとしたらしい、だが予想よりアーマーが強く反撃に合いほぼ全滅状態になりうまくいかなかった。
その時の様子が我々に渡されたカードの中の映像らしい。
歩いている内に空が明るくなり遠くからでも後方から追って来る盗賊に見つかる可能性が高まってきた。
目的地に着いたらすぐに対処しなければならない、作戦をどうするか必死に考えながら歩き続けた。
日が昇り森が太陽に照らされて遠くまで見えるようになった頃に目的地が見えた、チェンの言うと通り崖の岩肌が見えた。
「あれが目的地か?」
クリスが崖を見ながら先を進むチェンに尋ねたが、聞こえているはずだが反応がない。
「おい、チェン聴いているのか?」
ユルバンがチェンの肩を叩いた。
「あぁ、あの崖のふもとが目的地だ」
崖までは3~5キロといった所だ、仲間の顔を見るとユルバンとワルテの実戦がはじめての者は顔に疲れが出ていた。
マイクとオースティンは顔には出ていないが疲れているだろう、クリスも疲れていた。
「疲れているだろうが、気を引き締めてくれ」
クリスは活を入れた。
「みんな伏せろ!!」
いきなりマイクが叫びクリスは近くにいたボーエンの頭を抑えて草むらに伏せた。
「痛いな、何するんだ」
下にいるボーエンが文句を言いながら立ち上がろうとするのを抑えた。
「動くんじゃない、大人しくしていろ、マイクどうしたんだ!?」
「何か見たんですか!?」
オースティンの緊張した声が聞こえマイクが答えた。
「今歩いてきた道で草が不自然に揺れるのが見えたんです、ちょっと待ってください・・・」
クリスは地面に伏せながら周りを見ると草むらの中からマイクのゴーグルの一部が見えた。
「どうだ?、盗賊が追いついてきたか?」
「わかりません」
マイクがゴーグルの倍率を調節して確認していてクリスは耳を澄ませ何か音がしないか探ろうとしたがボーエンが無理やり立ち上がろうとするのを抑える音で何も聞こえなかった。
「何かが近づいてくるのはわかるんですが、草に隠れていてなにかわかりません」
「マイク、チェンのゴーグルには赤外線機能があったはずです、それでわかるんじゃないですか?」
ユルバンが言うと返事を待たずにワルテがチェンのゴーグルを奪い取ろうとし、チェンはいきなりなので避けることができずに簡単にゴーグルを奪った。
ワルテからゴーグルを受け取ったマイクは自分のゴーグルと交換して顔を上げ赤外線機能のスイッチを押した。
「くそっ、犬がこっちに走ってくる!」
マイクは毒づきながらゴーグルをはずしチェンに投げつけ立ち上がりAKアサルトライフルを構えた。
「近づかれる前に撃ちますよ」
「あぁ、仕方ない」
クリスの返事を聞いたマイクが引き金を引き発砲音が続いた。
草むらで犬の悲鳴のような鳴き声が聞こえた、銃弾が当たったらしい。
マイクがAKをおろしてこちらを見た。
「先を急いだ方が」
言いおえる前に乾いた音とともに空気を切り裂く音が聞こえクリスは思わずボーエンを押さえつけるのをやめて地面に張り付いた。
「銃撃だ!」
「見つかったか?」
ワルテが叫ぶとオースティンが叫んだ、こうなったらしかたがないクリスは叫んだ。
「目的地まで走るぞ!、わかったか!?」
返事が聞こえてきた。
「3・2・1・今だ」
クリスは立ち上がり崖の方に向けて走り出した。
立ち上がった時、遠くにアサルトライフルを構えた人影が二人見えた、マイクたちも立ち上がり走った。
銃撃してくる相手とは距離が離れているために銃弾の飛んでくる音は聞こえるが近くに着弾はしていない。
荷物が重く全力を出してもあまり早くはない、振り返り敵の様子を見ると二人だったのが四人に増えてこちらに走ってくるものもいた、走るのを止めて振り返りAKアサルトライフルを構え先頭の男に狙いを定め引き金を引いた。
走っている男は足を止め地面に伏せた、様子からして当たりはしなかったようだ。
「はずれか」
毒づいてから崖に向けて走り出した、仲間達も時々振り返り敵に銃撃を加えていく。
オースティンは一人撃ち殺したらしく「やっやぜ」と言って喜ぶ声が聞こえた。
後ろでなにか発砲音以外の音が聞こえ振り返るとまた犬が飛び掛ってきた。
「くそっ」
気ずいた時にはAKアサルトライフルを構えるには近すぎた、犬の口が開かれよだれが糸を引いているのが見えた、最悪だ。
飛び掛ってきた犬をよけるため仰向けに倒れ犬をよけたが犬は着地するとクリスに向かってきた。
犬が飛び掛ってくる瞬間に犬は腹を蹴られ三メートル飛んだ。
クリスは寝転んだ状態ですばやくガバメント拳銃を抜いて犬を狙い五回引き金を引いた。
犬を蹴っ飛ばした人を見るとボーエンだった。
「今度は間に合ったな」
ボーエンは言いながら手を差し出してきた、クリスはその手を握り立ち上がり言った。
「助かった」
言うとマイクの声が聞こえた。
「早くこっちへ!」
マイクとユルバンとオースティンが立ち止まり盗賊たちに向けて銃撃をしていた、ワルテが近くに来た。
「あまり勝手なことをするな」
ワルテがボーエンを注意した。
「ワルテ、ボーエンの手を自由にしてやれ」
ワルテはクリスを見て大丈夫か?というような視線を向けてきたが、すぐに言われた通りにボーエンの手を縛っていたロープを解いた。
「チェンはどこにいった?」
ワルテが言い周りを見たがチェンの姿はない。
「立ち止まるな!、走れ!」
マイクが怒鳴なり、ワルテとユルバンがすいませんと謝った。
「そんなことは後でいいからさっさと移動しろ!」
クリスが怒鳴りながら移動を開始した。
いなくなったチェンだが武器もなく手を縛ったままなのですぐには襲ってこないだろうしここまで来れば必要ない。
崖に近づくと広がって我々を追ってきた盗賊達が集まってきたらしく二十人前後に増えていたが、崖も500メートルくらいに近づいた。
ユルバンが息を切らせながら言う。
「近くなってきましたけど、どうするんです?」
クリスは走りながら振り返り、盗賊たちとの距離を確かめた。
「崖の上にワイヤーを設置して一気に崖の上に移動して高みの見物をさせてもらうとしよう、ワイヤー射出装置はちゃんと持ってきているだろうな?常備品だぞ」
ワイヤー射出装置は倒壊したビルなどの建物の高層部に上るために作られたもので、灰色の円柱状の筒でAKアサルトライフルの銃身の下にセットして射出し目標に打ち付けた後、射出後にワイヤーをベルトのバックルに装着することにより自動で巻き上げ目標地点まで移動することができる。
「ちゃんと用意してありますが、ボーエンは置いていくんですか?」
ユルバンが言うまでボーエンのことを忘れていた。
「置いて行ってもいいんじゃないですか?現地の人ですから我々には関係ないですよ」
言われてボーエンを見るとボーエンは顔を伏せていた。
「いや、ボーエンは私が連れて行く、危ないところを助けられたからな」
クリスが言うとボーエンは顔を上げた。
「私から離れるなよ、離れても探したりしないからな」
「あぁ、わかった」
ボーエンは手でオッケーのサインをした。
「クリス!急ぎましょう!、だんだん近づいてきます」
「すまない、急ぐぞ」
クリスが走り出すとその後をボーエンがついてきた。
何度も振り返り仲間の援護をしながら進み崖のふもとに来たマイクは近くでアーマーが出てくるまで盗賊の足止めをしている、崖の高さは50メートルくらいの高さで崖の上には遠くで見た通り木が生えていた。
「ボーエン、これを使え」
クリスはガバメント拳銃とマガジンを取り出してボーエンに差し出した。
「いいのか?」
「ここで私を殺しても私の仲間がお前を殺す、それにここから我々の協力なしで無事に逃げられる可能性は低いからな、私は崖の中からアーマーを出てくるようにするからお前はここでじっとしていろ」
ボーエンはマガジンをポケットに入れ、ガバメント拳銃のセーフティを解除した。
「わかった」
返事が聞こえた瞬間に近くの木の皮がたて続けにはじけた、盗賊の銃の狙いがだんだんと正確になってきた。
クリスは背を低くして崖に向けて走った、映像では崖の近くでアーマーに攻撃されていたが崖に近づけばアーマーが出てくるのだろうか?わからないがとりあえず崖に近づくき何かないか調べるしかない。
後ろを振り返るとマイクたちとボーエンが合流して物陰に隠れながら反撃をしている。
「マイク、聞こえるか」
「聞こえてます!」
クリスが尋ねるとマイクが叫ぶように返事をした、銃弾が激しいのかあせっているようだ。
「こっちはだんだん追い詰められてヤバイ状況になってきた、アーマーの方はどうです?」
「だめだ、どうやら出てこないみたいだ、作戦変更して崖の上に逃げるぞ」
「わかりました!、すぐに行きます、オースティン、ワルテ聞いていただろ!」
「「了解」」
クリスは崖のふもとを見てからAKアサルトライフルを構えマイクたちの方に振り返ったが、視界の端で何かが動くのが見えた。
クリスは慌ててそちらを見ると銃を持っていない盗賊が一人いた。
「動くな!!」
声を張り上げて怒鳴ると盗賊は両腕を上げた。
「撃つな!、俺だ!、チェンだ!」
「ここで何をしている!?お前は逃げたんだろう!?」
クリスは武器を持っていないチェンに銃口を向けずマイクたちの後ろから追ってくる盗賊たちに向け発砲した。
発砲音に驚いたチェンは体を硬直させて目を閉じたが自分が撃たれたのではないといとわかると目を開けてクリスを見た。
「チェン、その様子だとアーマーの奴の出し方はわからなかったようだな?」
「お前だってわかっていないだろう?」
チェンが先に来ていたとするとクリスたちがアーマーと盗賊の挟み撃ちにあっていたかも知れない。
こいつはやはり危険だ。
「お前はこれからどうするんだ?」
チェンが尋ねてきた。
「お前に言う必要はないだろ、逃げたんだから」
「違う!、映像の奴を出だすために先回りしたんだ!、だめだったけど、だから裏切ってない!」
これ以上チェンと言い合うのは無駄だ、マイクたちの援護に集中したがマイクたちが近づいて来るとボーエンがワルテに肩を貸して走ってくるのが見えた。
「ワルテはどうした?」
「大丈夫です、足にかすっただけです」
ワルテが自分で返事をした、どうやら大丈夫そうだ。
すると突然崖の一部が爆発し思わず屈むと空から崖の破片の石が降り注ぎ埃でゴーグルが曇り、急いでゴーグルのレンズを手で拭い盗賊を見た。
盗賊の一人がグレネードランチャーの様なものでこちらを狙っていた。
「撃たせるな!、次はやばいぞ!、グレネードを持っている奴を狙え!!」
マイクが叫んだ。
一発目で近くに当てているので狙いの修正をされればさらに近くに当たり次はヤバイ。
ユルバンが素早く狙い撃ったがグレネードランチャーを持った盗賊は狙われているのを感じ取りすばやく身を隠した。
「くそっ!!」
誰かが毒づく声が聞こえた。
我々を崖に追い詰めた盗賊たちは戦い方を変えて木や草むらに身を隠しながらゆっくりと距離をつめくる、グレネードランチャーで殲滅するつもりか捕まえるつもりらしい。
「近づかれる前に上に逃げるぞ!」
クリスはワイヤー射出装置を取り出した。
「クリス!、あれ!」
ユルバンが驚きの声を上げながら指をさした方を見るとグレネードが爆発した所の崖の表面の石が崩れ金属の壁のようなものがむき出しになっている。
「場所はここでい」
クリスの言葉は発砲音ではない金属が擦れ合う轟音でさえぎられた、盗賊を近づけないようにするために牽制射撃をしていたオースティンとワルテとマイクが振り返って音のする方を見た。
クリス達から40~60メートル離れたところの崖の壁が沈み込むのが見える。
(アーマーが出てくる!)
クリスは直感で思った。
「すぐに崖の上に登るんだ!早くしろ!」
盗賊たちの銃撃もなにが起こったのか把握するためにやんでいる。
次々にワイヤーが打ち出される音がしクリスもAKにワイヤー射出装置を取りて崖の上を狙い打ち出した。
崖の上にワイヤーが跳んでいったことを確認してからワイヤーを引っ張り固定されて上がれるか確かめた。
「ワルテはボーエンを連れて最初に上がれ、次にマイク、ユルバン、オースティン、私の順で上に登れ、見つからないように煙幕をなげろ!」
「わかりました!!」
クリスも持っている発煙手榴弾を投げると十秒もしないうちに辺りは煙で包まれた、盗賊に牽制射撃をしたいが何も見えないので発砲をせず周りを警戒した。
「上につきました」
ワルテの声が聞こえた。
「上に登ったのに気付かれてないな、時間が無い三人同時に行け」
「わかりました」
マイクが答え、クリスは煙の奥で動く影が見え見つからないように身をかがめた。
すると今までにない頭が震えるような発砲音が聞えるのと同時に叫び声が聞こえた、アーマーが壁から出てきて盗賊と戦っているに違いない、クリスも早く上に上ろうと思いワイヤーをバックルに装着した。
すると何かがこちらに歩いてくる異様な気配を感じクリスはAKアサルトライフルを構え引き金に指を置きすばやく発砲できるようにした。
足音とは違うモーターのような音が聞こえクリスは自分の心臓の鼓動が緊張のためか体中に響いてるように聞こえた。
煙幕の中に段々と黒いシルエットが現れその大きさは二メートル以上ある。
(これは危険だ)
素早くバックルのボタンを押して崖の上に移動しようとし、足が地面から浮いた瞬間に何かが背後から飛びついてきた。
飛びつかれた勢いでワイヤーがブランコのようになりアーマーの方に近づいていく。
飛び掛ってきたのを落とそうと肘で殴ると呻き声が聞こえるが落とすことができない。
アーマーに近づくとクリスが近づくのに気がついたのかアーマーがクリスのほうを見みた、アーマーと目が合い中になにかレンズのようなものが見え逃げ出したいが意思とは反対に近づいていく。
ワイヤーで巻き上げられているためぶつかることは無かったが足がアーマーの頭にかすった。
下を見てアーマーの様子を見たがアーマーはクリスを追わずに盗賊が発砲してくる方に歩き出し煙の中に消えた。
背後から掴んでいる者の体重で巻き上げられる速度が遅い、飛びついてきた者は暴れない所を見るとこのままついてくる気かもしれない、クリスはナイフを取り出し男のクリスを掴んでいる腕を刺した。
「待ってくれ!、刺さないでくれ!、チェンだ!」
直前でナイフを止めた、振り返って姿を確認できないが声は聞いたことがある。
「お願いだ、落とさないでくれ、あんなところにいたら殺される」
足元では絶え間ない発砲音とグレネードの爆発音が聞こえ、ナイフを刺してチェンを落としてもいいのだが抵抗されると厄介だ。
「大人しくしていろ」
速度は遅いがワイヤーは巻き取られ崖の上に近づいている。
銃弾が風を切る音が聞こえるのと同時に近くの壁がはじけた。
煙が風で流され始め崖の上に逃げたのが地上から見えたようだ、クリスはAKアサルトライフルを掴んで下のアーマーと盗賊に向けて引き金を引くが揺れるため狙いが定まらずただ弾をばら撒いているだけだ。
マガジンが空になるのとほぼ同時に衝撃を感じワイヤーが巻かれるのが止まった、何かに引っかかったようだ。
「クソッ」
クリスは呟き上を見ると崖の上まで1メートルくらいだ。
「チェン、お前崖をよじ登れ」
「わかった、動くなよ」
チェンが動きワイヤーが大きく揺れる、マガジンを換えるために空のマガジンをAKアサルトライフルから取り出したが手が滑り下に落とし崖に当たって地面に落ちた。
気にせず新しいマガジンを取り出してAKアサルトライフルに装着し下を見た。
いつの間にか煙はなくなり下の様子が丸見えになっていたがそこはひどい有様だ。
見える範囲の盗賊は体の一部が吹き飛び大量の血を流し、緑の草むらを血に染めて倒れ呻き声を上げる中を獲物を探すアーマーがさまよっていた。
アーマーに銃弾が当たり表面で火花が散るのが見えたが気にする様子もなく足元でグレネードらしき爆発で土ぼこりが上がったがアーマーは無傷で関係なく銃撃があった方向を向いた。
アーマーから連続した発砲音のような音が聞こえるのだが銃は見えない。
アーマーに気が付かれれば終わりだ、マガジンは変えたが引き金から指をはずしワイヤーをつかみ崖に両足を掛け登り始める。
崖の上に上がろうとするとオースティンが手を差し出した。
「掴まって」
クリスが掴むと引っ張りあげる。
「すまないな」
言ってからオースティンの背後で待機していたマイクたちを見るとチェンが地面に倒されて動けないようにマイクが押さえその背後でユルバンがワルテの傷に包帯を巻いている。
「ワルテ、大丈夫か?」
「大丈夫です」
「他のものは大丈夫か?」
マイクがこちらを見た。
「大丈夫ですよ、それにしても何とかうまくいきましたね、どうしてアーマーが出てきてんですかね?」
クリスは首を振って答えるとマイクは黙って下を見た。
「うまく逃げれたのはよかったですが、盗賊はほぼ壊滅状態でアーマーはピンピンしていますよ」
アーマーは獲物を探しさまよっていてときどき発砲音が聞こえ思わず言った。
「あいつを捕まえるのは難しそうだな、先ほど登ってくる時にチェンのせいでアーマーにぶつかりそうになったのだが」
クリスはチェンを見て続けた。
「あいつはアーマーを着た人間じゃなくて多分ロボットだな、顔の部分で保護されたヘルメットのアイガードの中にカメラのレンズのようなものが見えた」
「それが本当なら大発見ですよ、完全に稼動しているロストテクノロジーを発見したのは我々が初めてじゃないですか!?」
オースティンが興奮して言う。
「ロボットなら遠隔操作されている可能性があります、ジャマーを使ってみますか?」
冷静にマイクが背中の背嚢降ろし中から箱を取り出しアンテナ伸ばした、昔の無線機のような大きさと形をしているが折りたたまれたアンテナを伸ばしスイッチを押すことにより半径5キロの周囲の通信を混乱させることができる、本来は市街地などで戦う時に敵の通信を不能にし連携を取れないようにするために使用する。
「やってみてくれ」
クリスが言うとマイクはジャマーのスイッチを入れた。ユルバンが崖から顔を出して下を見た。
「どうだ?」
ワルテが気になって聞くとユルバンがワルテの方を向いた。
「だめみ」
すさまじい音で耳が聞えなくなるのと同時に何かが吹っ飛びクリスは仰向けに倒れゴーグルのレンズ部分に何かが当たった。
ゴーグルを拭うとグローブが血に染まっている、慌てて上半身を起こしワルテを見るとワルテの上半身が崖ごと無くなっており残っている下半身から血が流れ出していた。
オースティンがユルバンの下半身を引っ張った。
「効いていないぞ!、どうする!?」
オースティンが手をユルバンの血で真っ赤に染めながらクリスを見るとマイクが叫んだ。
「クリス、あれの捕獲は危険すぎます!、破壊するしかありませんよ!」
「あぁ、対戦車用グレネードを使うぞ、いくら奴が丈夫でもこれは三十ミリの装甲も穴が開けられるからアーマーでも耐えられないだろ!」
クリスが叫ぶとオースティンが背嚢から対戦車用グレネードを取り出した、グレネードとは言っているが弾頭をグレネードで飛ばすのではなくグレネードで撃ち出した弾が空中でもう一度ロケットのように加速し目標に飛んで行きレーザーで着弾点を指定することができ、上空に撃ち上げる者とレーザーで目的まで誘導する者の二人が必要になる。
だが一人でも発射することは可能で戦車などには一人でもアサルトライフルについている照準で当てることもできるが、アーマーにはレーザーで着弾点を指定しなければ当てるのは難しいだろう。
「狙いをつけるのは私がやるからマイクが発射しろ、オースティンとワルテは援護だ」
「こいつらはどうします?」
ワルテがチェンとボーエンにガバメント拳銃を向けながら言う。
「チェンは縛って動けないようにしておけ、オースティンはマイク、ワルテは私を援護しろ、いいな?」
「「了解」」
クリスはAKアサルトライフルの横についているレーザー照準器の電源を入れようとしたが銃にもユルバンの血がかかっていてすべりうまく電源を入れることができない。
上着にレーザー照準器と手をこすりつけ血をぬぐい電源を入れた。
クリスは場所を移動し崖からゆっくりと顔を出し下の様子を伺った、するとアーマーの腕がこちらに向くのが見えすぐに頭を引っ込めて逃げるとすぐに発砲音とともに頭があった所の崖が吹き飛んだ。
「くそ!、完全に気付かれている、不用意に頭を出すな!」
発砲音とともにワルテのいるところの崖が吹き飛んだ。
「ワルテ!」
誰かが叫ぶ声が聞こえ、それが自分だと気つくのに数秒かかった。
「大丈夫です!」
ワルテの声が聞こえ、粉塵の中で頭を抱えているのが見えた。
「手榴弾を投げろ、その隙に撃つ」
クリスが叫ぶと「「了解」」と返事が返ってきた。
腰のバックから手榴弾を取り出してピンを抜いた。
「3・2・1・今だ!投げろ!」
クリスが叫び崖の下に向かって投げると安全レバーが外れるのが見えた、すぐにAKアサルトライフルを持ち崖の下を覗いた。
アーマーの足元で手榴弾が爆発し砂埃が上がり、クリスはアーマーにレーザー照準を合わせて叫んだ。
「撃て!!」
発射の爆発音が聞こえた後、ロケットが飛んでいくロケットエンジンの耳をつんざくような音が聞こえるのと同時にオースティンとワルテの発砲音が聞こえる。
レーザーで照準を合わせているとロケットが飛ん行きアーマーが爆発し、轟音が鳴り振動で落ちそうになりクリスは崖から身を隠した。
「やったか!?」
誰かが叫ぶのが聞こえた。
「何が起こるかわからないから気を付けろ!」
クリスはゆっくりと崖の下を覗いた。
アーマーがいた場所は一メートル程地面がへこんでいて周りの木も着弾点を中心に爆風で倒れたり斜めになっている。
アーマーの残骸を探して周りを見渡したがそれらしいものはない。
「なにか見つけたか?」
「何も見えない」
「こちらもない」
返事がきたが何も見つからない。
発砲音と共にクリスの下の崖が連続して爆発して崩れ落ち、クリスも地面ごと崖下に落下した。
だが、後ろ足を掴まれ落下を避けたが顔面を岩にぶつけ意識が飛びそうになる。
「援護しろ!!」
マイクの怒鳴り声と連続した発砲音が聞こえ意識がはっきりしてくると足首を掴み引っ張りあげているボーエンのマスクが見えた。
崖の上に引っ張りあげられながら崖下を見ると森の木の間からアーマーが現れた、どうやら爆発の衝撃で吹き飛んでいたようだ、だが無傷ではなくアーマーは胸部と頭部が大きく凹んで穴が開き中にコードの束のようなものが見え、歩き方も衝撃で部品がゆがんだのか左足がうまく上がらないようでぎこちない歩き方をしている。
「もう一発だ!、マイク!」
「わかった、すぐ撃つ」
「ボーエン引っ張るのをやめろ!」
クリスは返事を待たずに宙吊り状態でAKアサルトライフルを構えレーザー照準をもう一度アーマーに合わせる、頭に血が上り腕が震えてくる。
対戦車用グレネードの発射音が聞こえたがアーマーがクリスを向き死の恐怖が体を走り背中が冷たくなるのを感じた、だが発砲音と共にアーマーの凹みの部分に火花が上がりアーマーはすぐに反応し発砲された方を向いて発砲した。
すぐに対戦車用グレネードが飛ぶロケットエンジンの音が聞えた瞬間にレーザー照準器で合わせた場所で爆発が起き先ほどと同じように轟音と砂埃が舞い上がりクリスは崖の上に引っ張り上げられた。
誰もしゃべらずに粉塵がおさまるのを待った、崖の上ではチェンがユルバンの近くで頭を抱えて伏せていた。
粉塵が収まってくるとマイクが地を這い匍匐前進をして崖まで進んでいく。
「気をつけろ!」
「わかりました」
クリスが呼びかけると返事をしてから恐る恐る下を覗きクリスを見て叫んだ。
「アーマーの一部らしきものが落ちています」
クリスも匍匐前進して恐る恐る崖から顔を出して下を見た。
爆発地点の草むらにアーマーの部品らしきものが散らばっているのが見え、黒い外装の一部が落ちている。
「私とオースティンで下に降りて確認する、いくぞ、オースティン」
「了解」
警戒しながら立ち上がり服についた砂埃を払うと背後にクリスを引っ張り上げて疲れたのか横になっているボーエンがいた、ボーエンは荒くなった息を整えようとしている。
「すまないな、たすかった」
お礼を言うとボーエンは顔を上げてクリスを見た。
「気にしないでくれ、それよりも盗賊たちはどうなった?」
クリスはもう一度下の様子を見た、盗賊たちは上半身や下半身が無いものが大勢で腕や足を失ったがまだ息があるものが数人いるがあと数分の命だろう。
「全滅だな、あとは出血多量で死ぬのを待っているやつらだけだ」
言ってからベルトにつけているガバメント拳銃の残りのマガジンをボーエンに差し出した。
「復讐するならそれをやる、今なら簡単に殺せるぞ」
ボーエンはマガジンを受け取ろうとせず顔を振って言った。
「あいつらはもうじき死ぬ、それでいいんだ、受け取った銃も返すよ」
ボーエンは拳銃を返そう拳銃を差し出した。
「そうか・・・、ならいい」
クリスが近くに行き受け取ろうと手を伸ばした。
「死んだ奴らはそれで満足すると思っているのか?」
いきなり男の声が聞こえ声のする方を向くとそこにはチェンが立っていて手に何も持っていないことをすばやく確認した。
チェンは続けた。
「死んだ奴らは盗賊たちを殺しても殺したり無いくらい恨んでいると思うがな、俺なら奴らに死ぬ時まで恐怖を与えてやりたいとおもうがな」
しゃべりながら近づいて来ようとするのでクリスはAKアサルトライフルをチェンに向けた。
「止まれ、それ以上近づくな」
「何だ?俺は武器を何も持ってないぞ?」
「お前にそんなことを言う権利はない、ルーカスが盗賊に殺されたのにお前は奴らに復讐するどころか自分だけ助かろうとしていたじゃないか、それを何が死んだ奴らはそれで満足するかと言ってるんだ?」
怒鳴るようにクリスが言うとチェンは歩くのを止めたので続ける。
「それに奴らはとどめをささなくても死ぬんだ、ここでボーエンが手を汚して殺すことを殺された人たちは望んではいないはずだ、ここで殺したら盗賊と同じだ」
クリスはボーエンを見た、クリスの命を助けてくれたボーエンにチェンのような屑野郎になってもらいたくない。
反論をしてくるかと思ったが、チェンはあっさり言った。
「確かにな、お前の言う通り俺が言えることではないな・・・」
そういうとチェンはその場に座り込んでしまった。
「さっさとお前らの仲間を呼んで俺をここから安全な場所に連れて行ってくれ、俺はもうこんな場所にいたくない」
するとボーエンはチェンを見た。
「お前の言う通りかも知れないな、俺の結論はただの自己満足かもしれない、だが俺はそれでいいと思っている」
ボーエンがクリスを見た。
「返すよ」
クリスは首を振った。
「お前が持っていろ、ここで生きていくためには必要なものだろ、私にはこれがある」
言ってAKアサルトライフルを胸の前に持った。
すると無線を通してマイクの声が聞こえた。
「おい、どうして誰も降下しないんだ?」
「すまない、ちょっと別のことをしていた、今から降下する、行くぞ、オースティン」
言ったが無線機から返事がない、周りを見渡した。
「オースティン返事をしろ、どこにいるんだ?マイク、オースティンはどこにいる?」
「オースティン!」
ワルテの叫び声が聞こえた。
「どうした?」
「オースティンが倒れてる!、そこだ!」
ワルテがマイクを挟んだ反対側に向け走っている、クリスも急いでそちらに向け走り出すとマイクも走り出した。
「オースティン!、しっかりしろ!、オースティン!」
ワルテがオースティンを抱えて揺さぶっていた。
「怪我をしているかもしれない、そんなに動かすな」
クリスが言いオースティンの体に怪我が無いか確かめた、見たところ出血をしているような所は無い。
マイクがオースティンの顔を呼びかけながらマスクの上から叩いた。
「おい、聞こえるか、おい」
何回か叩きながら呼びかけるとオースティンは目をゆっくりと開けたが目の焦点が合っていないと思うと口を開いて変な声を出し始めた。
「あー、あー」
「どうした?、大丈夫か?」
ワルテが心配そうに尋ねた。
「頭がガンガンする」
オースティンは言いながら右手で頭を押さえその様子を見たマイクが言った。
「頭に何か当たったのか?」
クリスはオースティンの頭を押さえた所を見たが傷も無く血も出ていない、オースティンは思い出すように答えた。
「それがアーマーに発砲すると、こちらを向いたので隠れようとしたんですがその瞬間に地面が爆発して・・・・、目覚めたらこの状態です」
そういい立ち上がろうとするのをクリスは止めた。
「少し横になって休んでいろ、お前の変わりにワルテを連れて行く」
それを言葉を聞いたワルテは立ち上がった。
「先に行くぞ」
クリスは近くにある崖に上がる時に使用したロープを使い崖の下に慎重に降りた、崖を降りるとまだ小さな埃が舞っていてゴーグルが曇るので手で拭いた。
すぐ近くの木の後ろに身を隠すと、すぐに後から来たワルテも近くの木に身を隠した。
爆発の煙のにおいがマスクを通して鼻に入ってきて痒くなる、盗賊の連中も木や草の陰に隠れてアーマーに近づこうとしたのか幹が大きく削れていたり血に染まっている草が見える。
アーマーの残骸をすばやく探すと、アーマーの装甲の一部が落ちているのは確認できたが大部分が見つからない。
「あそこ」
声がしてワルテを見て指差す方を見るとそこにはアーマーの左腕らしきものが落ちている、周りに気をつけながら近くまで移動すると腕のちぎれた部分から煙が上がっている。
「こっちには足があります」
後ろにいると思ったワルテは少し離れた木の近くでアーマーの千切れた足を持ち上げて振っている。
「どうやら破壊できたようだな」
クリスも落ちている腕を持ち上げた、破壊してしまったが大事な資料だ、回収しておかなければならない、腕は重く軽く表面を叩くと金属のようだ、銃弾を何発受けても大丈夫な物でこれが我々で生産できるようになれば我々の装備の安全性が一気に高まる、ユルバンの死を無駄にしないためにも持って帰らなければ・・・・。
振り返り崖を見るとアーマーが出てきた扉のようなものが開いた状態のままで、中を覗くと奥に扉が見えた。
「クリス、アーマーの残骸があったみたいですね、こちらからも見えますよ」
マイクの声が聞こえ崖の上を見るとマイクが手を振っている。
「これで任務完了と言ったところでしょうかね?」
「そうだな、報告のために連絡しなければいけないな」
我々の任務は現地の調査員に会いテクノロジーを発見し回収することだが、崖の扉の中を調べるのはリスクが高すぎる。
クリスは潜水艦を出るときに渡された長距離通信機を取り出して通話ボタンを押した。
「こちらスターナイトスリー、応答せよ、こちらスターナイトスリー応答せよ」
スターナイトスリーは我々の部隊の部隊名であり、船外で活動している部隊のリストが潜水艦にありそれと照らし合わせて応答してくる、リストに無い者が通信を行うと急襲部隊を派遣して通信人物を確かめるか連絡地点にミサイルを撃ち込むかになるが後者の対応が多い。
十秒後に返答か来た。
「スターナイトスリー、こちらスターライト応答せよ、こちらスターライト」
「こちらスターナイトスリー、目的の人物は原住民に殺されたらしく、知り合いという人物に案内させテクノロジーを発見した、テクノロジーは稼動した状態で発見した」
すると通信機から驚きの声が聞こえた。
「おい、それは本当か?答えろ、スターナイトスリー!」
最初に通信を受けた時と声が変わっていた、上の人物が出てきたようだ。
「本当だ、自立型の攻撃型二足歩行ロボットに攻撃され、仕方なく破壊した、だがそのロボットの一部は回収してある、それとそのロボットが出てきた場所の扉が開いた状態で中に扉があるのが見える」
「本当か?なら他のテクノロジーが手に入る可能性があるのか?」
興奮しているのが通信機越しでもわかる勢いで言う。
「あぁ、だがこちらも死者1名と負傷している者がいる至急回収を頼む」
「心配するなすぐに応援部隊と医療チームを向かわせる、死亡したのは誰だ?」
「ユルバンです」
今回の任務でしかクリスはユルバンに会ったことは無かったがワルテはユルバンと親しかったのだろうか?。
「わかった、こちらも早急に対応する、四時間もあれば今通信している場所にいけるだろう、安全なところで待機していつでも連絡を受けれるようにしていてくれ、以上だ」
「了解した、通信終わり」
クリスは通信を切った。
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