第27話 新人アルバイト
「それじゃ、この契約書に問題がなければサインしてもらえるかな」
商業ギルドにアルバイト募集を掛けて一週間が経ちました。
この一週間で十数名の面接をし、最終的に印象の良かった二人の女の子を採用することに決めた。
「契約書ですか?」
「ごめんなさいね、普通のアルバイトでは契約書なんて書かないんだけれど、うちが扱っている商品がまだ一般に出回っていない品ばかりだし、貴族様との取引もしているから情報漏洩が問題になるのよ」
ホールスタッフとはいえ、何かの事情でお店を離れた場合ケーキや新商品のパフェのレシピが流出するのは正直痛い。でもだからと言ってアルバイトを雇わない訳にもいかないので、法的効果はないけれど雇用契約書を用意したと言うわけ。
「書いている内容は面接の時に説明した情報漏洩の禁止と正式な雇用条件よ、一通り目を通して分からないところがあれば質問して」
契約書に書いている内容は下記の通り。
・当店が扱う全ての商品、製造に関わるレシピの漏洩禁止
・当店が扱う全ての個人情報の漏洩禁止
・研修期間一ヶ月(雇用条件同じ)
・休みは月6回のシフト制
※希望日がある場合は事前に申請
・労働時間 朝9時から夜6時まで
※季節により早朝及び終業時間の延長あり(別途手当)
・制服支給 季節、記念日により
・休憩時間 午前15分 午後15分 昼食1時間(
・日給制25日払い 時間外手当あり 能力昇級あり
・社員割引50%OFF
「あのー質問いいですか?」
「何かしら?」
質問してきたのは少し大人し感じの女の子で名前がリリアナ、私やエレンと同じ年でお店で働くのは初めてだという。
「お休みが月6回となっているのはどういうことなのでしょう?」
「あまり聞き
まぁ、忙しい時期は出てもらう時もあるかもしれないけれど、その時はちゃんと日当を準備するから」
本当は導入してるというか導入予定と言った方がいいのだけれど、うちの店は1日の忙しさが結構厳しいし、前世の記憶がある私には過酷労働がどうしても気が引けたのだ。
また、アルバイトとはいえ理不尽な雇用条件では雇いたくない。信頼関係は私自身痛いほど身にしみているから、この二人にも信頼してもらえる関係を築きたいと思っている。
「私も一つお伺いしていいでしょうか?」
訪ねてきたのはもう一人の女の子で名前をエスタ……エスニアと言う。こちらは以前は商会で働いていた経験があるらしい。
正確な年齢は女の子なんで控えさせてもうけれど、20代前半でしっかりしたお姉さんって感じかな。
二人とも中々の美人さんで私としてはコスプレ魂が
「この『季節、記念日により
ギクッ!!
「え、えっとね……例えばフリルの付いたお洋服(ゴスロリ衣装)や東の島の伝統衣装(ミニスカ浴衣)なんかを特別な日に着てもらったりする事があるのよ。おほほほ」
さりげなく目立たないように書いていたのにこの子なかなか鋭いわね。流石にミニスカサンタのことは知らないでしょうけど。
「それはもしかして、昨年の末に着られていた赤い服の事でしょうか?」
バ、バレてたぁーーっ!
「え、ええそうね。結構人気なのよ、うちの制服」
落ち着け、落ち着け私!
仕方がないじゃん可愛い子には
うぅ、エスニアの視線が痛よ。
「し、心配しなくても無理は言わないわよ。制服は全て特注(私の手作り)だから嫌な要望があればできるだけ聞くわよ」
「わかりました、それではスカートは丈は長めでお願いします」
「ひ、膝上は?」
「……膝下でお願いします」
「わかりました……」しゅん
いいもん、その分エレンのスカートを短くするからいいんだもん。しくしく。
「それじゃカフェのオープンは三日後だから今日と明日は準備と研修をしてもらうわ、問題ないかしら?」
「「わかりました」」
スカートの件は完敗したけれど私は店長、気持ちを切り替えてカフェのオープン準備を進める。
二人にエレンたちの紹介を終え、早速テーブル周りの清掃や食器類の準備に取り掛かる。
研修の方もパフェや飲み物のいれ方も特に問題はないし、お持ち帰りの方は通常営業をしているのでそちらの研修もスムーズに対応してくれた。
うん、二人ともいい感じだね。後は私が夜なべして制服を作れば完璧ね。
エスニアは以前の仕事で販売経験もあるそうなので、要望以上のことをこなしてくれるしグレイからの評判いいようだ。
リリアナの方は初めての仕事とはいえ中々に要領がよく、お店の仕事もすぐに慣れてくれて、同い年の事もあるのかエレンとも上手くやれている感じなので一安心。
そして二日間の準備を終えカフェのオープンを迎えた。
「いらっしゃいませ、ローズマリーへようこそ」
「フルーツパフェを一つにチョコレートパフェが二つですね」
「プリンアラモードとローズヒップティーお待たせしました」
「注文が入りました、トロピカルパンケーキを一つお願いします」
事前にカフェスペースのオープンと、パフェの絵を載せた張り紙を出していたからオープンと同時に中々の客入り。アイスやプリントといった初めてのスイーツに所々から女の子のかわいい声が聞こえて来る。
そして本日最大の切り札がこれ!
「きゃー何この子! かわいい!」
「食器持って行ってくれるの?ありがとう」
「もふもふー」
「この子ケーキ食べるよ」
「店長、あれいいんですか?」
「うふふふ、当店最大の切り札にて最終兵器! 衛生的に問題ある? 答えはいいえ、なぜならあの子達は精霊!(の仲間)そして我がローズマリーの正式なスタッフよ! 一人ペット化してる子がいるけど」
ビシッっと椅子の上に立ちポーズをとる。よし決まった!
「お嬢様、高い所に登らないでください」
エレンのケチ……。しゅん。
現在カフェスペースにはリリーたち精霊ズと、シロがお店のお手伝い(もどき)をしているのです。
今までもリリー達がお店の手伝として店頭に出ると女の子からの評判が大変よかったので、一日限定で前世の記憶を元に猫喫茶もとい、精霊喫茶を試してみたのだ。
人手も助かるし人気もでる。まさに一石二鳥! いやシロの食事代も浮くから一石三鳥! 今日だけだよ?
中でも一番人気はシロ!
建前上はお店のお手伝だいなのでリリーやスイ、エンは食器を片付けたりしているから無理やり触ったり捕まえたりはされないが、シロはただ店の中を歩きまわっているだけ。
そのため通りがかりに近くのお客さんが触ったり抱いたりしているのだ。まぁ、あのモフモフと肉球を一度味わえば誰でも虜になるというもの。
卑怯と言うなかれ、これが商売というものなのだ!
ふふふ、私の商人魂が唸るぜ!
「お嬢様は商人じゃないでしょ」
「うわぁ! 勝手に人の心読まないでよ」
エレンあなた一体何者なの!?
日に日に人間離れのスキルを習得していく友達に少々恐怖を感じるのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます