第4話 七夕への願い
再就職から4か月。
厨房は暇。
しかし、利用者は6人に増えた。
4ヶ月で6人か・・・
高級老人ホームと言うことで、見学者は多いが
値段を聞いて引く。
4ヶ月厨房で一人だと。
息が詰まる。
施設を探検することにした。
大きな施設だが、誰も居ない。
静まりかえった廊下。
誰も居ない病院の様な感じ。
4ヶ月間厨房とレストラン(食堂)から外には出たことが無い。
スポーツジムやジャグジー風呂が見たくて
施設内を散策する。
電気がほとんどついていない廊下を歩いていると
利用者の老人が、廊下に座っている。
怖いわ!
恐怖映像のTV番組でよく見る光景がそこに・・・
挨拶をして、通り過ぎると話しかけられた。
『集会場はどこだった?』
え?
そんな部屋もあるの?と聞き返したくなる。
どこだろう・・・
知らないとも言えないし。
探し回り見つけた部屋。
他の利用者も集まってる。
無事に老人をエスコートして、
僕も、部屋の中に入ると、施設の職員から声がかかった。
『厨房さん!良かったら書いてください!』
何を?
よく見ると、笹の葉に短冊を作っている。
七夕の願い事か。
色とりどりの折り紙を短冊にして
利用者さんたちが願い事を書いている。
どんな願い事を書いているのか覗いてみる。
99歳まで生きられますように。
ボケませんように。
主人が100歳まで元気でありますように。
全く、笑えない・・・
切実な願いを、老人は笑顔で書いている。
僕にも短冊を渡してくる職員。
『厨房さんも書いてね^^』
何を書くのか?
子供会の短冊なら気にせず合わすが・・・
生き死にの願い事しか無い笹。
こんな笹に、ふざけたことは書けない。
一番叶えたい事って何だろう。
考えた結果。
『子供が欲しい』
素直に書いてみた。
守る物が欲しいとは書けない自分がもどかしい。
老人達から、叶いますようにと手を合わされた。
合掌・・・
怖いわ!
七夕の短冊に、願い事を書いたのは、
何十年ぶりだろう。
幼稚園の時に書いた記憶が最後だ。
迷信とか、奇跡とか
全く信じない性格。
子供が欲しいって、相手もいないのに。
叶うはずもない。
それよりも子供が出来ない身体。
無理な願いをあえて書いてみた。
2017年7月7日
第5話へ
■ 作者より
第4話ご覧頂き有難うございます。
七夕の奇跡って信じ無いけど。
今振り返ると、少し信じてもいいかなって気持ちです。
もし、奇跡があるなら
もう少し具体的に書いた方が良かったかも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます