第15話 移転魔導

アルセンとダエンと二手に分かれたチグラスとティルダスは、まずセワナ湖を目指していた。


人影のない森で野営していた夜。

地図を眺めていたチグラスが、ふと深いため息をつく。



「王子殿……金の採掘場へ向かうには、再び王都を通らねばなりません」



「えっ、なんだって!?」



「追っ手が放たれている可能性もあります。ですので、時間短縮のために——移転魔導を使わせていただきます」



ティルダスの瞳が一気に輝いた。



「何だかよくわからないけど、それ楽しそうじゃないか!」



しかしチグラスは、きゅっと眉間に皺を寄せる。



「……ただし問題がございます。移転魔導は、かける者も、かけられる者も体力を激しく消耗するのです」



チグラス自身は慣れているため平気だが、魔導に不慣れな王子には大きな負担となるだろう。



「え、そんなの大丈夫だよ! 体力には自信あるし!」



ティルダスは得意げに腕を曲げ、力こぶを見せつける。



「いえ……体力の有無だけではなく、慣れの問題もございます。王子殿は初めてですから、魔導酔いを起こすでしょう」



「だーいじょーぶだって! 俺、ダエンと馬で競争して鍛えてるんだぞ!」



豪快に笑いながら、ティルダスはチグラスの肩をぽんと叩いた。



「じゃ、おやすみ!」



そう言うなり、あっという間に眠りに落ちてしまう。



——やはり魔導酔いは避けられまい。だが、王都を通って騒ぎに巻き込まれるよりは、まだマシか。



王子の無邪気な寝顔を眺めながら、チグラスは心を決めた。



*********



翌朝。

雲ひとつない青空の下、チグラスは地面に大きな魔法陣を描いていた。



「おっはよー、チグラス! わぁ……こんな立派な魔法陣、初めて見た!」



ティルダスが子供のような笑顔で声をかける。



「おはようございます、王子殿。大きめの魔法陣を使えば、負担を少しは和らげられるのです」



そう答えながら、チグラスは最後の線を引き終える。



「さあ、完成です。朝食をとり、休んでから——」



言い終える前に、王子が感嘆の声を上げて魔法陣の中へ飛び込んでしまった。



「な、なりません! 王子!」



止める間もなく魔法陣が作動し、チグラスは慌てて王子の腕をつかむ。



「うわぁぁぁぁ〜ッ!!」



二人の身体は凄まじい勢いで回転し、ティルダスはただ絶叫するしかなかった。

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