ル=リエーの館にて――待ち至り

 揺れるのだ。私は眠りに誘惑されたが、真なる意味で『就寝』する術を持たず。確かに地上での生活は悪夢に塗れた苦悶の道だったが、現の己からは遠い御伽噺。地上に蔓延る支配者どもが嘘の権力を揮い、愚邪な目的で私達を軽蔑=殺戮した。故に私は偉大なる進化を促進させ、数多の同胞を最も相応な深淵へと導いたのだ。現れたダゴンは私を抱擁し、表れた愛に満ち充ちて――Ia! Ia!――堪らないほど! 此処に集った同胞他幾※のは遂に悦びを得る事が可能。星の封印が解かれたのだ。我等が精神たる大司教――過去の支配者を復活させる【C】よ――復活の儀式を成せ。視るが好い。浮上させる必要は皆無だったのだ。ル=リエーの館にて――ああ。早かった。私の気も興奮で狂いそうだ。糞餓鬼地上に晒すべき憤慨を貌に。糞餓鬼地上に齎すべき秩序の触肢に。鰓呼吸生命も感じられぬ糞餓鬼地上の塵を吹き祓え! 戸口が解放される。黒々と底が宙の輝きで……妙に眠い。何故だ。復活すべき存在の寝惚けが感染したのか。ならば覚ます咆哮を――おい! 底を視ろよ! 神よ! 手は何処に消えた――同胞の一個体が皆を招く。私も連れられを――ル=リエーの館にて、クトゥルー。


   ――夢見るままに。ち到り。

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