第22話くまさんにお食事に誘われる
ホワイトドラゴンを転移させた後、私のお腹が盛大に鳴り響いた。
ぐりゅりゅぅ~~~! がわりゅりゅ~~~!
顔に血が登り、赤くなっていくのが分かるぐらいに恥ずかしい・・・・・・・・・。
「くまま くぅくぅ ままくま(くすくす。お腹が、すいているようですね) まぁう まぁ~くま くぅくぅくぅ (私、娘のことが心配で、朝御飯を食べてませんわ) くまま くまくまぁ~(そう言えば、私もお腹がすきました) まくまく くぅくぅくぅ くぅ~まぁ (よろしければ、私たちの村で、一緒にお食事をしませんか?)」
くまさんが、誘ってくれます。
もしかしたら、社交辞令かもしれません。でも、実際問題直ぐ食べれるものが1つもありません。
弱ってしまいます。どうしよう?
ちらちら ちらりん ちらちら ちらりん
カムイを見れば、前足で自分の頭をガシガシとかき、私をじとーーーーーと。
ごくん。何だか思わず唾を飲み込んでしまった。
「我は、ここにいるから、お主とさくらこさんで行くといい」
えっ? カムイは?
下から見上げれば、意外といえばそうかなっていう答えがかえってきた。
「我は、食事をしない」
「・・・。お腹すかないの?」
「すかない」
淡々としたものだった。
「えっ? これから一緒に暮らして、一緒にご飯食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝るんじゃなかったの? 私、カムイに騙されたの・・・?」
しくしく (T-T)
「いや、そんな訳ではない!! なんか、可笑しなものが含まれているような気がするが・・・。 その、食べ物は貴重だ。だからして・・・・・・・。」
しどろもどろになって、なぜか地面にのの字を書き始める。
「くくぅー まくぅ~まぁ くぅくぅくぅ (分かっております。カムイ様の優しさは)くうーま くくぅーまぁ~(ですが、今回はご一緒に食べとうございます)」
??? 私にも、なんとなく分かったような分からないような・・・。
カムイがちらっと私とさくらこさんを見る。
「ふぅ~~~。はぁーーーー。わかった、我もまいろう。」
渋々という風な態度を取っていたけど、カムイの顔はにやけていた。
結局、一緒に食べたかったんじゃないの・・・・・・。素直じゃない。
くまさんの村に行くことになって、今まで自己紹介をしていなかったことに気がついた。
つまり、お互い、名前を知らない状態で深刻な話をしていたってこと。
くまさんは、娘さんが心配で、思い付きもしなかったのかも。そして私は、異世界shockのせいで、スコーンって常識が飛んでいたんだね。
では、カムイは?
「悪かったな。お主に会って浮かれていたんだ」
成る程、なっとく。
あれ? 私、ホワイトドラゴンの時は、自己紹介じゃないけど、名前は名乗った気がする。
頭の中で、回想中。ういーーーん
うん、してるね。あの時は、ホワイトドラゴンさんを見つけられなくて、騙されて誰も居ない空間にしたと思ったんだよね。
何はともあれ、名前は基本です。
「今更ですけど、水上 小夜(みなかみ さや)です。そして、肩に居るのは、相棒のさくらこさんです。よろしくお願いします」
「くくぁ~ま くぅ~まぁ(まあ、ご丁寧に)くぅ~まま くくぅーま く~まくま くま くーまぁ(私の名前は、マリアといいます。この子は、息子のマァークです)」
マリアさん、なんて素敵な笑顔でしょう。もう、もふもふなでなでしたいです。
欲望に流されそうになって、慌てて振り払うように首を横に振ると、マリアさんが不思議そうに媚を傾げます。
ああ。ORZ むっ胸がときめき過ぎて苦しい・・・。
代わりに、さくらこさんを2倍もふって癒されよう・・・・・・・。
なでなで もふもふ なでなで もふもふ
「みゅっ!(気持ちが余所にいっているから、触っちゃ駄目!)」
ああ、怒ってさくらこさんが逃げてしまった。
癒しが~~~!!
そんな私を尻目に、さくらこさんはマリアさんの所にとてとて走って行って、肩の上に登り、腕の中の赤ちゃんを可愛いなって見ている。
マリアさんが、息子のマァークを抱いている手の反対左手で、さくらこさんの背中を撫でてにっこり。
いっ・いいなぁ~。指加えて見てる心境。
「くくぅーまぁ (私の村に案内します) くまぁま くまくま(私の後ろをついて来てください)」
「分かりました!」
思わず敬礼して、マリアさんに、きょとんとした顔で見られてしまいました。
はい! 忘れましょう。私は、なにもしていません。マリアさんはなにも見ていません。
マリアさんについて歩くこと数分、くまさんの村に到着。って! 幾らなんでも早すぎるでしょう!?
「ああ、今の道に魔法が掛けてある。『隠匿』『空間結界』『精神魔法』『マリオネット』『迷宮』の五つだ。だから、我の住みかとここの距離は、実際はかなりある」
成る程、でもそれらの魔法は、『隠匿』で隠されていると・・・・・・・・・。
カムイから説明を聞いていると、又してもお腹が怪獣の鳴き声のような音を響かせる。
ぎゃおおお! ぎゅるる~!!
「くまぁ くっく くまま(まあまあ、急いでお食事を用意しますね)」
私は、両手でお腹を擦り、泣きわめくお腹を一生懸命慰める。
マリアさんたちは小さいから、私やカムイが入れるような大きさの家なのか心配したけれど、それは杞憂だった。
くまさんたちの家は、どれも大きかった。
以前の体の大きさのままの家で、作り変えていないそうだ。だから、逆に大きすぎて大変らしい。
そんなこともあって、今回の小さくなる魔法を覚えての引っ越しが計画されたようだ。
それも、もう大詰め。
引っ越し先の環境が整ったら、開始されて、この地は捨てられる。
しかし、それは勿体ないぐらい素敵な場所だ。私がここに住みたいぐらいだ。
くまさんたちの家は、大きな茸を魔法で加工してある、実にファンタジーなものだった。
つまり、村に入ってまず目につくのは、数十個のでっかい茸。
異世界らしく、茸の笠は、赤や緑、黄色に青、オレンジにピンクといった七色十色。
笠の色で誰の家か分かるぐらい、この村にある、家の全てが違う色なんだ。
これ完全に毒茸じゃないの、という様な色のものもあるけど、色はまったく関係なく同じ種類の物で、逆に殺菌効果とか、害虫駆除の効果があるそうだ。
因みに、マリアさんの家の笠の色は、サーモンピンクで、村の入り口に一番近い。それで、娘さんは誰にも会わずに、知られずに村から出られ環境だった。それが今回禍したそうだ。
ホワイトドラゴンさんが、早く娘さんを見つけてくれることを期待しつつ、取り敢えず私たちはお食事タイムです。
『不思議○国○○リス』に出てくるぐらい大きい茸だけど、それでも、本来のカムイのサイズでは家の中に入れません。
そこで、カムイは又大型犬ぐらいの大きさになりました。
あれ? これって、小さくなる魔法じゃないの?
カムイと茸の家をきょろきょろ視線を巡らせていると、家に入っていったマリアさんが戻って来た。
「なにをしてる。早く中に入らないか」
カムイが私の背中を前足でぐいぐい押してくる。
「ねえ。カムイのその魔法でこの家やみんなを小さく出来ないの?」
カムイはふうぅ~とため息をついて、背中を押していた足を下ろしてちょこんとお座りすると、気まずそうに目をそらす。
「我は、自分しか小さくできない。他の物や者を小さくすることはできん」
成る程、意外と使えないんですね。
「がうぅ! 今失礼なことを考えただろう」
「いいえ。マリアさんが待っていますから、早く中に入りましょう。お腹も物凄く空いてます。そろそろ我慢の限界です!」
「そんなの、お主の自業自得だろ!!」
そうだけど、知~~らない!
カムイを置いて中に入っていく。
家の中は普通だった。メルヘンな物はなく、台所には、4人が食べれる大きさの机と、4人分の椅子があって、机には、家の笠の色と同じ布がかかっていた。
そして台所の隅では、水がこんこんと湧いていた。その隣に台があって、そこで物を切ったりとかするようだ。少し大きめの鍋も置いてある。
マリアさんは、その鍋から、クルミを5倍にした様な物を、お玉で掬ってお皿に載せていた。
「くくく まくまく くぅ~まま(そこの椅子に座って待っていてください)」
そう言われたので、私は大人しく椅子に座って待った。マリアさんと先に行ったさくらこさんは、すでに机の上に用意してもらったクッションの上で寝そべっていた。
カムイは、器用に足で椅子を引き、椅子の上でお座りしてまっている。
どうやって、食べるのだろう?
疑問だ。
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