プラネットガール

九里方 兼人

第一話 となりの宇宙(そら)子

プロローグ

 それは異様な光景だった。

 油が染み込んで黒ずみ、所々腐って穴の空いた木造の床の上に『それ』はあった。

 三人仲良く三角形を描くように倒れている『死体』は僕のクラスメート。

 さっきまで教室で騒いでいたクラスのイジメっ子、悪戯小僧、ガキ大将とその子分。

 それがものも言わず、息もしない、蝋人形のように固まって転がっている。

 またこいつらの悪ふざけではないのか?

 そうであってほしい。騙されたと、笑われていい。

 中学に上がるまでの一年間、ずっとこのネタでいじられてもいい。

 だから起き上がってネタバラシして、恐怖で引き攣った僕の顔を笑ってくれ。


 だけど僕を騙すために死体の転がった部屋を作ったにしては、それはあまりに異様だった。滑稽だった。冗談が過ぎた。

 倒れた三人は皆一様に背筋をピンと伸ばし、両の腕を真っ直ぐに、斜め下四十五度に、体全体で矢印の形を作っている。

 その頭の上にもう一人の子の足が、その子の頭にはまた別の子の足が、その子の頭には最初の子の足が、……三人で一つの正三角形を描くように配置されている。

 矢印の姿勢で組んだ三角図は、まるでリサイクルのマークを組体操で表現したかのようだ。

 そして三角形の中心には木箱の上にロウソクが立ててあり、小さな火が揺れている。


 率直な感想を言うのなら、何かを呼び出す儀式を執り行って魂を持っていかれたのか、宇宙人との交信に成功して何かの実験台にされたのかという所だろう。

 口を開け完全に白目になった顔は、一体どんな恐ろしい目に合ったのだろうと思わせる。


 僕はぎこちない動きで、隣に立つ宇宙人と呼ばれる少女を見た。


 これが、僕がこの加々美原かがみはら小学校に転校してきた翌日の放課後に目にした光景だった。

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