ヘーゼン=ハイム(9)
*
魔戦士長オルリオは、激昂していた。この男は、これまで、真なる
そして……絶対君主たるランダル王の右腕たることを、最上の勲章として生きてきた。当然、それに見合った研鑽も怠ったことはない。
真なる
「
その禍々しき闇の腕は、溢れんばかりのエネルギーに満ち満ちていた。
「
ヘーゼンは、避ける隙間のないほどの広範囲の炎を魔戦士長オルリオに向けて放つ。
「グハハハハハハハッ! 取るに足らぬ威力だな」
灼熱の炎を浴びつつも、
「
魔戦士長オルリオが、自身の身体から無数の黒く尖った槍状の斬撃波を発生させる。
ヘーゼンは、縦横無尽に飛翔し、それらを躱すが、その動きの先に武聖クロードが飛び上がっていた。
「……っ」
「飛び上がればよい……羽などなくともな」
精悍な老人は、瞬時に数千発の拳を見舞う。
だが。
ヘーゼンの
「……なるほど。厄介な魔杖じゃの」
武聖クロードは落下しながらつぶやく。
「
へーゼン=ハイムは、すかさず、弓型の魔杖を構えていた。柄の部分以外は、光で型取られた大弓である。超長距離の光属性の矢を一撃を放つ。
「カッカッカッ! 甘いわ」
「……っ」
放たれた光の矢を。
武聖クロードは、こともなげに素手で掴む。それは、おおよそ肉眼で捉えられるものではない。
「策士らしい小癪な戦い方をしとるの。それに、
「……」
先ほどの戦いを、武聖クロードもまた観察していた。幻型の複雑な魔杖だが、当然一定の法則がある。
「1つ、
「……」
「カッカッカッ! ワシに演技は通じないぞ」
超視覚。武聖クロードは
人は取り繕う時に、必ず表情を変える。
それは、幾万もの人間を見てきた武聖クロードの膨大な経験則である。そして、ヘーゼンの微妙な色彩の揺らぎから、この仮説が当たっていると確信をした。
先ほど、6人の魔長を一瞬で消滅させた
だが、
「……」
地面に降り立ったヘーゼンは、
「ククク……飛翔することの有利を捨て、両手持ちの利を取ったか。無駄な足掻きだ」
間髪入れずに、魔戦士長オルレオは、ヘーゼンに向かって突進する。
「
黒のエネルギー体が瞬時に巨大な斧を形成し、ヘーゼンに向かって繰り出される。
「
ヘーゼンの右手に聖属性の光が放たれ、それを防ぐ。
「
「ちっ……
魔戦士長オルレオが唱え、数千匹の狼が一斉に襲いかかる。
「
ヘーゼンの魔杖は、瞬時に狼を氷漬けにする。
「カッカッカッ……氷上障壁の上位互換てところかの」
「……なぜ、それを?」
武聖クロードの分析に、ヘーゼンは思わず尋ねる。
「英聖アルフレッドは、マメな男じゃの。ヌシの情報など要らぬというのに、勝手によこしやがるのだから」
「……」
「魔杖の設計思想がヤツの
「……」
「だが、所詮は劣化版じゃの」
武聖クロードは、猛然とヘーゼンに向かって襲いかかる。
「ぐ……ぐぐぐぐ……おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「……っ」
突進。力任せの突進で、瞬時に発生する氷の壁をブチ破っていく。
そして。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラっ!」
至近距離まで到達したへーゼンに対して、瞬時に千発の拳を見舞う。
だが。
「ふん……やはり、それも
武聖クロードの視線とともに、姿を現したヘーゼンに魔戦士長オルリオの
「
瞬時に、発動し防いだヘーゼンだが、魔戦士長オルリオはなおも巨大な斧を押し込んでいく。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「くっ……」
その魔力に押されて、ヘーゼンは後方へと飛翔することで、衝撃を和らげる。
だが。
「ホイ、背後がお留守番じゃ」
「……っ」
武聖クロードが、異常な跳躍力で襲いかかる。
「くっ……」
踵落としを浴びせられかけた所で、なんとか
「なるほど……物理防御にも、ある程度対応できるわけか。便利な盾じゃの」
再び地へと落ちて、片膝をつくヘーゼンに。
武聖クロードは、ニヤリと笑う。
「はぁ……はぁ……」
「加勢が必要かの?」
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