八小節

早瀬翠風

 艶やかな表面をそっと撫で、細長い蓋を開く。整然と並ぶ鍵盤が葬式の幕と重なって吐き気を覚えたのはもう随分前の話だ。あの頃、込み上げてくるものと戦いながらひたすらに弾いた。わたしに出来ることはそれしかなかったから。それだけが、あなたと繋がる術だったから。

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