武具と鍛冶
「ふん、ダリルの友達か。はよ、それを言え」
リュシアン達は、ここに至ってようやく鍛冶職人との対面を果たした。
ダリルを含む、エドガー、ニーナなど背丈のある者は、この工房の中ではいささか身体を縮める必要がある。何しろ天井が低い上に、軽めの道具類などがぶら下がっていたりもするのだ。
工房はボロい上に、ドワーフ仕様なのだ。もっとも若干二名は、頭を気にする必要は全くなかった。言うまでもなく、リュシアンとアリスである。
「そういえばパトリックの若造が、大事な客がくるとかなんとか言っておったな。儂は、客は自分で選ぶとあれほど言っておるに、勝手なことをしくさって」
「そんなこと言ってるから閑古鳥なん…、ッだ、痛ぇっ!」
間髪入れずドワーフのでかい拳骨が、ダリルの頭に炸裂した。咄嗟に文句を言いかけて立ち上がったダリルは、さらに天井にぶら下がったランプの魔道具に頭をぶつける羽目になる。
「あだっ!ったく、あちこち天井が低いんだよっ」
作業場がすぐ見える場所にテーブルが一つだけ置いてあり、リュシアン達はそこにぎゅうぎゅう詰めに座っていた。むろん人数分の椅子などないので、その辺にあった木箱や、道具箱などを代用している。
とにかく狭い。
「だが…、まあ息子のよしみだ、話は聞こうか」
彼の名はブロイ、種族は見てのとおりドワーフである。
元はドリスタンの城下町で鍛冶屋をやっていたが、ドワーフであることと、この性格が災いして街にいられなくなったらしい。追い出される際、その腕を惜しいと思ったパトリックにより、この地に呼ばれたということだ。
この地でも度々問題を起こしてはいるが、何しろその腕の良さは折り紙付きなので、上位の冒険者がいくらでも金を積んで依頼にくるという。
リュシアンは、さっそく依頼品の数々をブロイに相談することにした。
この工房では、それほど大量の受注は出来ないかもしれないので、厳選していくつかをやってもらおうと思ったのだ。
まさか一人きりでやってる工房だとは思わなかったので仕方がない。
必要な物を、とりあえず適当に書き並べてみた。
ニーナの靴とアリスの大剣、彼女たちの胸当て、籠手などの防具。エドガーの剣とバックラー、加えてダリルの武器、鎧など。リュシアンは重い装備は向いていないので、布と革で防具を作るつもりだった。
「あ、そうだ。ダリル、杖見せて」
いきなりのリュシアンの要求に、ダリルは胡乱気な顔をしたものの、床に置いた例のパンパンに膨らんだカバンから長物を引き抜いた。
「う…ん、やっぱり鉄か。しかも曲がってるね、なに叩いたの?」
限界まで使い込んである鉄のロッド。
手入れはしているようだが、先の方がべこべこになっている。しかも何の付加能力もついてなかった。これでよく魔法科上位についていけるものだと、逆に感心するのだった。
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