エピローグ~一匹狼編~

エピローグ~一匹狼編~








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 港町アクティアから船で3日。アクアセルシス王国という一つの国がある。その国から抜けるには、森を通るか緑が一つもない谷を通らなくてはいけない。

 しかし、そこを抜けた先にあるのは一面同じもの。抜けると見えるのは一面砂だらけなのだ。そこは砂漠だった。砂漠を通ると、ある一つの国があるのだが、そこへ行く人はほとんどいない。行くのは郵便配達員くらいだ。

 多くの人は、そこではなく別の場所へと向かうのだ。別の場所へ向かうには、サボテンを辿っていかなくてはいけない。しかし、砂嵐にあうとサボテンを見つけるどころではなくなってしまうため、天気には気をつけなくてはいけない。サボテンを辿っている途中で砂嵐にあってしまった場合は、助かる可能性は低い。だから、天気には気をつけなくてはいけないのだ。

 晴れていても、サボテンが遠くにあるため見つけることは難しい。年に何百人という数が遭難し、半分程が生きて帰ることはないと言われているのだ。それでも、多くの観光客などが行きたがる場所。それは、オアシスだ。

 砂漠の一か所だけにあるオアシス。地下水によりできた大きな泉があり、多くの木々や緑に囲まれている。そこにはいくつかの建物があり、寝泊まりすることも可能となっている。日帰りする者が多いが、中には泊まる者もいる。元々泊まる気がなくとも砂嵐に遭遇してしまえば帰ることは不可能なため、泊まるしかない。

 そんなオアシスに、現在20人ほどがいた。景色の写真を撮る者や、スケッチをする者。夫婦やカップル、1人で来ている者や友人達と来ている者など様々だ。

 多くの人達は景色を記憶に焼きつけるように、黙って景色を見ている。そんな中にカメラを片手に歩く夫婦がいた。それは、アレースとエリスの両親、ゼウスとテミスだった。2人は新婚旅行でこのオアシスまで来ていたのだ。

 他の人達は自分達で写真を撮っているが、2人だけは違った。ゼウスが右手にカメラを持っているが、自分では撮ろうとはせずに辺りを見渡していた。自分達の周りにいる人達は、全員が楽しそうに話していたり、景色を黙って見ている。そのため、話しかけて邪魔をするのは躊躇われた。

 暫く歩いていると、小さな砂山の上から泉を見下ろす3人組の男性を見つけた。何かを話しているようには見えないが、少し変わった見た目をしている男性達を見て、ゼウスとテミスは足を止めた。

 2人は彼らのことを知っていたのだ。声をかけずに通りすぎようとも考えたのだが、他の人達には声をかけることができないような気がしたゼウスは、黙って泉を見つめている3人に近づきながら声をかけた。

「すみません。写真を撮ってもらってもよいでしょうか?」

「いいですよ」

 砂山の横の、緩やかな場所を登りながら声をかける。すると、ゼウスとテミスに一番近い左側に立っていた男性が笑顔で答えた。その男性は左腰に一本の刀を携えていた。しかもそれは、鞘には収まっていなかった。その刀は、角のように見えるが、たしかに刃はついていた。そのため、何かの動物の角を携えているのではなく刀だということがわかる。

 そんな人物に警戒心もなく近づく人はあまりいないだろう。角のように見えても、刃がついており刀として使えるのだ。鞘にも収まっていない刀に警戒するなと言う方がおかしいと言えるのだが、ゼウスとテミスは警戒をしていなかった。それは知っている人だからだ。しかし、2人は知らないふりをした。それを感じとったのだろう男性も知らないふりをしてカメラを受け取った。

「どこで撮りますか? この砂山の上でしたら、オアシスが広く見渡せますし、写真にもかなり綺麗に映ると思いますよ」

「あら、それならそこの上がいいかしら?」

 砂山へと登ると、3人で並んでいた時真ん中に立っていた男性とゼウスの目が合う。その男性の髪は胸ほどの長さで黒に近い紫色をしており、太陽の光りで反射するとその色がよくわかった。そして、その男性の右肩には1羽の白いカラスが止まっていた。この暑い中、白いカラスは大丈夫なのかとゼウスは思った。ゼウスと男性の目が合うと、何も言わずに男性は頭を下げた。それを見て、男性の右隣に立っていた白髪の男性も頭を下げる。

 その男性は3人の中で一番変わった髪をしていた。髪だけではなく、見た目も変わっていると言えた。腰までの長さがある白髪をしており、髪の先が所々がメッシュをしたように赤くなっているのだ。

 それだけではない。彼の耳は、人間と同じ場所にあるのだが、それは白い鳥の翼のようだった。髪と同じく、羽一枚一枚の先が赤くなっている。そして、彼の左手だけが獣人のような手をしていたのだ。

 白い獣人のような左手は僅かに見える手首も、獣人のように毛で覆われていた。右手は人間のような手だが、左手だけが獣人のようになっており、どこまでが毛で覆われているのかはわからなかった。

 2人は、ゼウスとテミスの写真に映らないように砂山を下りる。映らないだろう場所で立ち止まると、黙って泉を見る。何をするわけでもない。

「あら、本当にオアシスがよく見渡せるわね」

「では、ここでお願いしてもいいでしょうか?」

「わかりました。砂に足を取られるので、気をつけてください」

 先ほどまで2人が立っていたところに、ゼウスとテミスが立った。砂に足を取られて、転ばないようにと男性は声をかけた。気をつけて立つと、2人は男性を見た。肩より少し上までの長さの金髪に近い彼の茶髪が、太陽に反射して少し眩しく見えた。

 彼は2人に声をかけると、カメラのシャッターを切った。すると、すぐに印画紙が出てくる。そこにはゼウスとテミスの姿が綺麗に映っており、オアシスもしっかりと映っていた。しかし、砂山の少し下に胸から上が映ってしまっている後ろ姿の2人がいた。印画紙を手にとり、男性が目を見開く。彼は、写真を、撮るときに2人に気がついていなかったのだ。

「あららら、映っちゃった」

「気にしないで大丈夫です」

「いいんですか?」

「構いませんわ。貴方はあの2人と一緒にいるんですもの。枠内に入ってしまっていたら、映すなというのも難しいですもの」

 そう言ってゼウスがカメラを受け取り、テミスが印画紙を受け取った。それを見て、2人は綺麗に映っていたそれに満足した。たしかに2人の後ろ姿が映っているが、気にするほどではない。

 この世界のカメラは、シャッターを切った人によって映り込むものが変化する。その人の魔力が高ければ高いほど、人や景色が綺麗に映るのだ。そして、自分の意思で知らない者を写真に映り込ませないようにすることもできる。

 3人のことを知っているゼウスとテミスは、人を映り込まないようにすることができるほど魔力が高いことを知っているのだ。しかし、長く一緒にいる人物が映り込むと、無意識に映してしまうのだ。だから2人は、彼らが映っていても気にすることはなかった。

 カメラから出てきた印画紙は、次の街でアレースの元に手紙と共に送る予定のものだ。今自分達がどこにいるのかがわ分かればいいのだ。だから、他の人が映っていても構わなかった。

「ありがとうございました。……気をつけてくださいね」

「夜は冷えるし、砂嵐がよく起こるからね」

「そうですね、教えてくださりありがとうございます」

「いいえ。それでは、失礼します」

 そう言って、ゼウスとテミスの2人は頭を下げて立ち去って行った。向かう方向を見るとサボテンが見える。どうやら2人は、街へと戻るようだ。2人は前日にオアシスで宿泊していたのかもしれない。

 そのため、街へと戻る今日に写真を撮ろうと考えたのだろう。2人が立ち去る姿を見届けて、男性は黙って泉を見つめている2人の男性へと近づいて行った。

「ほら、そろそろローウェンはフードを被って。これ以上炎天下で目を日に当てているのも危ないから。ハクも右肩に乗ってないで、ローウェンの頭にでも乗って一緒にフードを被って」

「それじゃあ、景色が見えない……」

「ん。……ラン、あの2人は何か言ってたか?」

「ん? 夜は冷えるし、砂嵐もよく起こるから気をつけてってさ。ほら、シシも上着を着てフードを被って。貴方はは目立つんですよ」

 2人の後ろから近づいたランと呼ばれた写真を撮った人物が、右側に立っている男性の右肩に乗っているハクと呼んだ白いカラスを、ローウェンと呼ばれた男性の頭に乗せるとフードを右手で掴み、無理矢理被せた。抵抗することもなく、ローウェンは左手でしっかりとフードを被った。フードで目元を隠し、なるべく肌に強い太陽の光りを当たらないように調整する。

 そして白髪のシシと呼ばれた男性の背負っているリュックを、ランは左手で軽く二度叩いた。ローウェン以外は誰も暑さから上着を着ていないのだ。しかし、シシはリュックの中に上着を仕舞っている。

 白髪というだけでも目立つのだが、彼の左手や耳を見た者は必ずと言ってよいほどシシを見るのだ。オアシスは広く暑いため、街のように多くの人はいないが、近づくと見られることは間違いないだろう。

「それで、他には何か言ってたのか?」

 リュックから上着を出しながら、シシはランに尋ねた。特に何かを言われたということは他にはなかった。しかし、ゼウスが横目で何度も見ているものがあった。それを思い出して、ランは口を開いた。

「そう言えば、ローウェンが右腕に抱えているそれを気にしているようでしたね」

 右腕を指差して言うランが言う通り、ローウェンは何かを抱えていた。それは茶色で、形からすると何かの卵のようだった。しかし、普通の卵よりも大きい。それだけではなく、それは少しだけ岩のようにゴツゴツしているようだった。

「昔、これを探してるって話は少しだけしたからな。覚えていたんだろう」

「目星をつけて見つけるのに3年かかったけどな」

 上着を着てフードを被りながら言ったシシに、ローウェンとランは同時に頷いた。見つけるまでに3年かかってしまったのは、仕方のないことだった。それがあったのは、砂の中だったのだから。

 オアシスから離れた、研究所。砂漠の中に立つそれは、とある国が所有している。そのそばに、それは埋まっていたのだ。研究所にいる者に気づかれないように、見られないように注意していたため、何度も掘ることを止めていた。そのために時間がかかったのだ。

 砂漠で風が吹くと、砂が大きく移動をする。そのため、数時間前までなかった砂山ができていることがよくある。研究所内にいる者の気配を読み、出てくる前に離れたり、人が近づいてくる気配がすると離れていた。場合によっては、近くにあった建物の残骸であろうものの影に隠れたりしていた。

 だから、どんなに掘っても先へはなかなか進まなかったのだ。誰かに見つかれば、何をしているのか説明をしなくてはいけないし、手伝われても困るため、多くは離れたのだ。研究所の者に見つかればせっかく見つけたのに、自分達の土地にあったのだからと取られる可能性もあった。それだけは絶対に避けなくてはいけなかった。

「これは……この卵は、元々俺達のだ。あいつらに取られるわけにはいかなかった。漸くこの腕で抱きしめることができるんだ」

「そうですね。ローウェン達が代々受け継ぐもの。僕達はそれを手にするために、危ない国に入っていたんです」

 両手で卵を持つローウェンの左に並んだランが頷いて答えた。ローウェンがずっと探していたことを知っているため、嬉しそうに僅かに微笑む口元を見てランも微笑んだ。

「それじゃあ、そろそろ行くか?」

「そうですね。あの2人が気をつけてと言ったのは、冷えるとか砂嵐以外も含まれているでしょうし。……それに」

「彼が近づいてる?」

「ああ。あいつには、まだ会うべきじゃない」

「今から行けば、あいつがここについたときには泊まらないといけないだろうし、距離は広がるな」

 シシが行くかと言うとローウェンは頷いた。ローウェンには会うべきではないと思う人物がいるのだ。その人物は、諦めることなくローウェンを追いかけ続けていた。大体の場所がわかっているようで、どんなに離れても追いかけてくるのだ。

 ローウェンも近づかれていることがわかっているため、同じ場所に何日もいることはないのだ。会ってしまうと何が起こるかは、ランとシシにはわからなかったが、ローウェンはなんとなくわかっていた。だから会いたくないのだ。2人にも言うことはない。

「渓谷を通って戻るか?」

「嫌だ。あいつ、俺を忘れてるから……今は会いたくない」

「それじゃあ、エルフの森を通って戻らないと」

「そうだな。ついでにエルフの村に暫く泊めてもらおう」

 ローウェン達は渓谷を通ってオアシスへ来た。しかし、そこに住むシシの友人が何故か彼のことを忘れていたのだ。だから会いたくないと言うシシの言葉を聞いて、ランがエルフの森と言った。

 砂漠へ行くには、渓谷かエルフの森のどちらかを通らなくてはいけないのだ。渓谷は岩山が多くあるため、様々な魔物が住んでいる。しかし、襲う魔物はいないため安全である。

 エルフの森は名前の泊まる、エルフが住んでいる村がある森だ。しかし、村には結界が張られているため気がつかないうちに結界の端へとワープしてしまうのだ。そのため、多くの人が何処どこにエルフの村があるのかは知らない。

 中から村へ迎え入れてもらわなくてはいけないのだ。外からも入ることはできるが、エルフ以外が勝手に入ってしまうと警戒心を抱かれてしまう。

「渓谷より少し遠いが、エルフの村にいる間にあいつもどこかへ行くだろう」

「彼はエルフの村がある場所を知らないですからね」

「暫くは落ちついて寝れるな」

 歩き出した3人が向かう場所にサボテンはない。彼らは、サボテンを追わずとも目的の場所へ向かうことができるのだ。それに、もしもサボテンを追えば、会いたくない者に会ってしまう可能性が高い。それを避けるためでもある。

 ローウェンは時々、卵を持っていない左手でフードをおさえる。ローウェンの頭の上にいるハクは大人しく頭の上に座っており、フードが捲れないようにとくわているが、強風が吹くたびに離してしまうのだ。風が吹くと、砂が巻き上がる。目を細め、砂が入らないように気をつけながら全員ついて来ているのかをそれぞれが確認しながら、3人はオアシスから離れて行った。

「エルフの村に行ったあとはどこに行く予定?」

 シシができるだけ大きな声を出して前を歩くローウェンに尋ねた。大声を出さなくては声が聞こえないのだ。

「ウェスイフール王国に行こうと思う」

「……大丈夫なんですか?」

 ランが眉間に皺を寄せて尋ねた。それもそうだろう。ウェスイフール王国は奴隷がいるだけではなく、他国から来た者は誘拐される可能性が高いのだから。

「大丈夫だ。今は他国の自警団たちが協力して、奴隷を解放しているらしい。そう聞いた」

「誰に?」

「さあね」

 エリスたちがヴェルリオ王国へ戻ったあと、周囲の国が協力して自警団を送り込んだのだ。そのお陰もあってか、多くの奴隷が解放され、自宅へ戻ることができたのだ。国へ入るにも自警団が門番として立っているという。

「卵のことを聞かれたら、何て言うんだ?」

「妻の忘れ形見とでも言うさ」

 半笑いで言うローウェンの背中をランは黙って見つめた。聞こえることはないだろうと考え、ランは小さく呟いた。

「結婚する気もないのに、忘れ形見……」

「俺が好きなのはあいつだけだ。忘れ形見もないけれど、こいつを守れるなら嘘だってつく」

 はっきりとそう言ったローウェンに、ランは苦笑した。風が吹いているため、聞こえないと思っていのだ。

それからは特に何も話すことなく、エルフの森があるであろう方向へと歩き続けた。

 それから3時間後。桃色の髪をした、1人の男性がオアシスにやって来た。腰まである長さの髪を三つの三つ編みで結わえていた。風でフードが外れたのか、フードを被ってはいない。風により、三つの三つ編みが揺れる。

 右頬と右手の甲に三本の傷がある彼は、左腕を左腰に差している刀に置いて小さく息を吐いた。オアシスを見渡し、首から下げているネックレスを右手に取る。

 それは、紫の玉を持つドラゴンの姿をしたシルバーのネックレスだった。右手に取ったそれを見て、男性は小さく呟いた。

「また、逃げられたか……」

 シルバーのネックレスから手を離し、男性は一番近くの建物へと向かって行く。そこで宿泊することができることを男性は知っているのだ。

 日が傾き始めているので、これから街へ戻ろうとすると途中で日が落ちてしまうとわかっていた。だから、今日は泊まることにしたのだ。

 もしも満室であっても、他にも宿泊施設はある。男性が扉を開くと、中から男性の声が聞こえた。それは、受付にいる男性の声だ。客は数人見えるが、満室なのかわからない。

「宿泊ですか?」

「ええ。空いてますか?」

「はい。希望はありますか?」

「砂がついているから、お風呂とベッドがついていればどこの部屋でも構いません」

 その言葉に男性は、壁にかけられている部屋の鍵を確認した。大浴場があるため、個室にお風呂がない部屋があるのだ。しかし、どうやら空いている部屋があったようで、その鍵を手に取った。

「右手の通路の突き当たり部屋となりますが、よろしいでしょうか?」

「ええ、構いません」

「それでは、こちらに名前の記入をお願いします」

 そう言って差し出された紙には、多くの人の名前が書かれていた。宿泊者名簿のようで、男性はペンを手にとると名前を記入した。ラルドと書くとペンを置いた。

 受付の男性がペンを手にとり、名前の横に鍵に書かれている部屋番号を記入した。ペンを置いて、鍵をとると男性――ラルドに手渡した。

「ごゆっくり、どうぞ」

「ありがとう。あ、そうだ」

「何かありましか?」

「ええ。アロエとかって足りてますか?」

「実は……最近砂嵐が多い所為か、届けてもらえず……」

 そう聞いたラルドは背負っていたリュックを下ろして、受付カウンターの上に乗せた。

 リュックを開くと、中から一つの袋を取り出した。そこには、黄緑色のものが入っていた。それとは別に、袋に入っている小さな鉢植えも取り出した。

「おお。大きいアロエと、小さいアロエだな」

「ええ。こっちの植木のアロエは育てれば自分で採取できますよ。それと、こちらの大きいアロエの葉は全部で5個あります。いかがなさいますか?」

「そうだな……。あって困るものではないし。いくらだい?」

「アロエの葉は一つ1000スピルトで、植木のは2000スピルトとなります」

 アロエの葉よりも、植木鉢の方が高いことに男性は何も言わなかった。何故なら、高い理由を知っていたからだ。アロエは自然に自生している多肉植物だ。暖かい地方や砂漠に自生しており、以前はこのオアシスの周りにも多く自生していた。

 しかし、観光客が持って行ってしまうのだ。そのため、今ではアロエは自生していない。植えて育てようという話は出たのだが、また持って行かれるのではないのかということから未だにアロエはこのオアシスには生えていない。

 今ではアロエも改良され、植木鉢で育てることができるようになった。それを成長するごとに大きい植木鉢に変えれば、アロエも大きくなっていく。そして、それを外に植えることも可能となる。

 それだけではなく、茎がついた葉を植えることによって増やすことも可能なのだ。改良されて植木鉢で育てられるようになったと言っても、アロエは植木鉢で育てられているものが少ないのだ。しかも、片手に乗ってしまうほど小さいものは特に。枯れてしまうことが多いからだ。そのため、少しでも成長したものは葉より高い。

 それでも男性はアロエが欲しいと思った。それを外に植えるのではなく、室内で育てれば観光客も持って行かないだろうと思ったからだ。

「植木鉢のアロエはいくつありますか?」

「これを合わせて三つですね」

「では、植木鉢のアロエ三つとアロエの葉を五ついただけますか」

 その言葉にラルドは頷いて、残りの植木鉢もリュックから出した。何も言わなかったが、男性は正直値段が安いと思っていた。アロエの葉だけでも2000スピルトするのに、半額だ。もしかすると偽物かもしれないと思い、見ていたが本物だということがわかり購入したのだ。

 ラルドは別にアロエを売って生計を立てているわけではない。自分で購入したときは高くとも、なるべく安く売る。それを必要としている者がいるのなら、自分が損をしようと構わなかったのだ。

 アロエは、ただここへ来る前にアクアセルシス王国で目についたから購入しただけだった。そうだったとしても、この男性はアロエが欲しかったようで嬉しそうに微笑んでいる姿を見てラルドも微笑んだ。

 代金を受け取り、財布に仕舞うとラルドはリュックを背負った。そして、お互いに軽く頭を下げるとラルドは部屋へと向かった。荷物は背負っているリュックのみ。手に持っているものは鍵以外にはない。通路の突き当たりにある部屋の前へ来ると、鍵を差し込んで右に回した。カチャリと音がして、鍵を抜いてドアノブを回して部屋へと入る。

 右側にトイレとお風呂があることを確認し、鍵を閉めて狭い部屋の中へと足を踏み入れた。シングルベッドしか置かれていないため、そこに座ろうとしたが砂だらけのため、先にお風呂に入ろうと考えてリュックをベッドの横に置いた。

「今度こそは、絶対見つけてやる」

 そう言って、リュックから着替えとタオルを取り出すと、ラルドはお風呂場へと向かって行った。部屋にはラルド以外誰もいないため、今の呟きを聞いていた者は誰もいない。

 追う者と追われる者。彼らがいつ出会うことができるのかを知る者は誰もいない。近いうち会えるのか、この先ずっと会えないのかすらわからないのだ。








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アロエの話しは、ファンタジー要素を多く含んでいるので、鵜呑みにしないでください。


以下、ラルド、ローウェン、ラン、シシの軽い説明。

彼らは元々オリキャラとしてこの作品を書くずっと前から存在しております。ラルドなんか下手したら小学生……。私の中では、彼らは平行世界の別人としてこの話に出しております。そのため、元々の設定から変更している部分も多いです。


ラルド

33歳 173cm 50kg

オリキャラとしては一番古い。元々はバカキャラですが、この話ではバカではない。性格や、設定は元々のラルドとは違う。フルネームも少し付け足されているが、今現在は発表しません。

瞳は桃色。

桃色の髪をしており、腰までの長さがあるため三つに束ねている。それは全て三つ編みである。

右頬と右手の甲に三本の傷があるが、あまり目立ちはしない。

ある理由からローウェンを追いかけている。


ローウェン

26歳 180cm 68kg

4人の中では二番目に古いキャラだが、オリキャラとしては10年くらい。

ラルドと同じくフルネームは少し付け足されているが、今現在は発表しません。

瞳は赤。

胸程までの長さの黒っぽい紫の髪。光りが反射すると、紫に光る。

変化が得意でもある。よく白いカラスのハクが右肩にとまっている。

ラルドに追いかけ荒れているが、まだ会うべきではないという理由から逃げている。


ラン

26歳 172cm 63kg

瞳は茶色。

金髪よりの茶髪をしている。髪の長さは肩より少し上。


シシ

23歳 170cm 60kg

フルネームは少し付け足されているが、今現在は発表しません。

瞳は水色に近い青。

腰までの長さがある白髪。しかし、髪の先やところどころがメッシュをしているように赤くなっている。

耳は人間と同じ場所にあり、鳥の翼ような形をしている。それらも、髪と同じように先端が赤くなっている。

左手だけが、肩まで獣人の腕のよう白い毛で覆われている。



今後、彼らが龍達に関わってくることもあるでしょう。

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