線香花火

@kakeru-kaeru

第1話 花火が咲くまで 1

着いたぞ

そう響いたのは疲れた声。草花の咲くキャンプ場。密かな恋を明かすことはできない幼なじみの家族と、だ。少し前まで考えてどきどきすることは無かった。でも……。


もうちょっとで着くよ 

そうは言うがあと10分程度掛かるのがいつものことだ。それとも10分程度はちょっとなのだろうか?


妹は「ねえ、まだ~」

なんてことを聞く。分かっているはず、まだまだ着かないってことを。


キャンプ場で何かする訳でもなく。

ただバーベキューをして花火を少しするだけだ。


ようやく着いた。

「おっ、ようやく来た」

幼なじみはそう言うとき、くしゃっ、て笑う。その顔にキュンとする。でも…、言えない。何でも言える男友達が居なくなるかもしれないから。

男子と女子の関係なんて一瞬で変わる。

少なくとも一般的な場合だが。

幼なじみは親密だから自分の気持ちを伝えるなんてできない。私は好きでもあいつは……水樹が私をどう思ってるかなんて分からないから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る