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「…一応俺の分も用意されているし…これからまた存在感を示せるようにすればいい」


「……そうですね」



さあ食べよう、と青年が話を打ち切ると女の人は何か言いたそうな顔をしたが素直に従う。



「…それにしても美味い」


「本当ですね」



土瓶蒸しを一口食べて青年が唸るように言うと女の人も笑いかけながら同意した。



「…こんな料理が毎日三食、しかも無料で食べられる所なんて世界中探しても見つからんぞ」



彼女が魔物に料理を与えに行ってるからか青年は普段から思ってる事を口にする。



「…このキノコ…なんかいつもと違った感じがします」


「…おそらく朝採って来た物だ、彼女も珍しいと言ってたからそれなりに上質なのかもしれないな」



不思議そうに呟いた女の人の疑問を晴らすように青年が話す。



「…上質な物を使うとココまで美味しくなるんですね!」



いつもこういうのを使えば良いのに…と女の人が首を傾げながら呟く。



「…俺もこの前同じ事を思った」


「ですよね!…コレだけの腕があるのに…勿体無い…」



青年が苦笑しながら言うと女の人は聞きように彼女をバカにしてるかのような事を零した。



「…ソレを聞いたら彼女に鼻で笑われたが」


「…なんでですか?」


「…上質な食材を使って上等な料理を作るのは二流のやる事だからだよ」



青年の言葉を聞いた女の人の問いに、いつから聞いていたのか…



家の中に戻っていた彼女がドアを閉めながらそう告げる。



「「…い、いつのまに…」」



いきなりの彼女の返答に女の人と青年の気まずそうな呟きが重なった。

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