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「…頼みがある」
昼前。
彼女が昼ご飯の準備をしようとすると急に男が床に両膝を着いて話しかける。
「…また…?」
彼女は鬱陶しそうな感じで嫌そうにため息を吐きながら聞く。
「MPを上げるような効果のある料理を作ってもらいたいのだが…」
「…良くもまあ勝手に住み着いたくせにそんな図々しい事が言えるね?」
男の要望に彼女はイラつきを隠しもせずに嫌みで聞き返す。
「…っ…!…ず、図々しい事も、君に負担をかけているという事も重々承知して申し訳ないと思っている…が!君にしか頼めないのだ!」
彼女の言葉、表情、声に男は心が折れそうになりながらもなんとか持ち直して頭を下げた。
「…分かってる?…あんたの分かってる、ってのは理解してるって意味の『承知』なの?」
「…理解、している…その上で…」
静かに聞いてくる彼女の得体のしれないプレッシャーに男の心が折れそうになったのか、声が徐々に小さくなっていく。
「せ、先行投資だと思って…俺に、料理を作ってくれ!」
男は折れそうな心を立て直すとプレッシャーを跳ね除けるように叫ぶ。
「…先行投資ねぇ…」
「!あ、ああ!将来必ず恩に報いる!」
彼女が考えるように呟くと青年はチャンスと言わんばかりに押す。
「でも私は投資とか難しいのはやらない主義だし」
が、彼女はバッサリと切り捨てるかのような言葉を告げる。
「…はぁ…しょうがない、今日だけだからな」
予期せぬ返答に口をポカーンと開けて呆然と放心状態のようになっている男に、彼女は背を向けながらため息混じりに言った。
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