プロローグA
「あの国は、もう駄目だったんだ......」
未だになってあの過去を__俺があの国の首相だった頃の、苦笑いも出来ぬ思い出を、俺は荒廃したアーケード街で口づさむ。
俺は、首相選挙で支持率84%を得る、空前絶後とも言える快挙を遂げ、消費税、保証金の策を立ち上げて、そのうち二代目トランプ、ジャッカーと並ぶ、世界三大支配者と言われた。
そう言われ続けた時期は、嬉しかった。
その、俺史上最高の黄金期の終わりまでは......
XX29年、8.9.
「CODE-8を起こした、イスラム国に加担した日本人め!」
「二度と来るな!」
「何が、黄金期だ!何が一億人に一人の奇才だ!蓋を開ければ、根から罪人じゃねぇか!」
などと、喧騒に俺は襲われた。
CODE-8と呼ばれる、北アメリカからアジアまでのクーデターを起こした、シフテルらに加担した裏切りものとして、俺は扱われた。
俺はただ、俺はただ............
イスラム国本拠地で、真の愛という演説をしただけなのに............
「こんな俺に、何の道があるのかなぁ......道さえないのかなぁ」
と、その時。
ドキュガアアアアアンッ!!!
空中を喰らうような破裂音が咲く。
俺の付近で、ファミリーマートと呼ばれた温かい名前のコンビニの跡の付近で。
同時に、なにか熱いものが肩に染み付いていた。
ぼろぼろの、かつての制服に紅いものが付いていた。
「あ............」
情けなく、囁く。
「大丈夫、貴方には道がある」
その時。
謎の音から数秒後、トーンがやや低めの女の声がした。
声に反応して、女の姿を見た。そして俺は女が何者かを問うまでもなく、絶句する。
左の袖に穴が沢山がある、黒いタキシードシャツに、紫のリボン。黒いスカート。
すっぴんだが美しい顔立ち、細身で背の高い美しい体の裏に、少年をも怖がらせるかのような妖艶な瞳。
「地獄という名の......道が、ね」
嘲笑うような口調の割に、もう結果が分かっているかのように、睨みつけて。
左手に握ったトリガーを引く。
「待て、待ってくれ、俺は............」
俺は、どうしてかもがく。
俺はまだ、道があるのだともがく。
が。
心臓を突き抜けたモノが、俺に熱苦しい感覚をもたらした。
「俺の......目的は......ま、だ..............................」
言葉は、届かなかった。
そのまま、意識が本当に朦朧とし、視界がぼやけてくる。
だが、最後に絶望の毒を食らった。
「いえ、もうチェックメイトよ。元日本国内閣総理大臣............いえ、出来そこないの悪魔、田中角生」
目的がない犬を殺した少女は、ただの死体の耳にこう囁いた。
「私の名前は、
そして、少女は歩き出した。
かつてのアーケード街の先へ。
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