第431話 ◆アリシアの憂鬱

◆アリシアの憂鬱


最悪だ。 お城を壊したうえ、今度はサリエルさんの家を吹き飛ばしてしまった。


みんなはあたしは悪くない、悪いのはヴァンパイアのチェイスだと言ってくれるけど、サリエルさんに合わす顔がない。


それに、もう壊した家を弁償するお金だって持っていない。


いったいどうすればいいんだろう。 こんなあたしは、もうエルフの里に帰った方がいいのかもしれない。


・・・



あ、いた、いた。  アリシアにお礼を言おうとお城の中を探していたベルちゃんが駆け寄ってきた。


アリシアさん、あたしを助け出してくれて、ありがとうございました。  ぺこっとお辞儀をしたベルの耳がフルフルッと動く。



ベルさん・・・  あたしはベルさんを助けてなんかいないわ。 


いいえ。 アリシアさんが、あの天井裏を探してくれなかったら、あたしはどうなっていたか分かりませんでした。


でも、結局チェイスに吸血されて、サリエルさんの家を・・・


ああ、それは気にされなくてもいいみたいです。 サリエルさんの家は、ママ・・セレネさんが弁償するって言ってましたよ。


えっ、セレネが?  それはおかしいわ。  セレネって超貧乏なのよ!  家を一軒弁償するなんて・・・


でも、セレネさんがあたしを見つけるためだったら、家を壊しても構わないって言ったから弁償するって。


だから、セレネはお金なんか持ってるはずがないのよ。


ハッ  もしかして・・・  ごめん、ベルちゃん。  アリシアはセレネを探しに駆けだした。


・・・


一方、こちらはテラスで午後の紅茶を楽しんでいるセレネ。


ズズズッ


アリシアのことだから、そろそろここに来るわね。



ダダダッ バァーン


ちょっとセレネ、聞きたいことがあるんだけど!


オッホーー  ドンピシャだぁ・・・  今日は感が冴えてるわー



なにをごちゃごちゃ言ってるのよ!  あたしの質問に答えなさい!


へいへい なんでございましょうか?


サリエルさんの家をセレネが弁償するって本当なの?


だって、仕方がないじゃない。 アリシアが跡形も無く吹き飛ばしちゃったんだから。


捜索部隊長としては部下の失敗の責任を取るのは当然のことよ。


ぐっ  で、でもセレネは超貧乏じゃないの!


貧乏で悪かったわね。  その貧乏なあたしに弁償させたのは、どこのどなたなんですかねぇ・・・


わ、悪かったわよ。  あたし、これ以上みんなに迷惑をかけるのが嫌になったの。  だから、明日エルフの里に帰ることにした。


なんですと?  なにも、そこまでしなくたっていいじゃない。   セレネはこいつマジかと焦り始める。


いや、セレネにも家の弁償で、多額のお金を使わせちゃったみたいだし。 もう、あたしここには居られないわ。


あーー 本当のことをいうね。 サリエルの家の弁償って、この間のアリシアの貯金から出したんだよ。



キラッ   アリシアの目が一瞬光輝く。


ふふ~ん とうとう吐いたわね。  そうだと思ってたのよね!


しまっ・・ あわわ  な、なんで分かったの?


前にお城を壊しちゃった時、モッフルダフがドロマイトを何回も運んでたでしょ。


あの時にモッフルダフが、あたしに気にしなくても大丈夫だからって言ってたのよ。  後でよく考えたら、あれは只だったんじゃないかって。


ちっ  勘のいいヤツめ!



はいっ  アリシアが両掌を揃えてセレネの前にだす。


その手は何?


残りのお金返して! 


あーーー 残りのねーー  そんなに残ってたかなー?


家一軒買ったって、相当残ってるはずよ!


いやーーー  もう少し黙ってようと思ってたんだけどなーー  ほらっ、仕方がない通帳返すわよ。


なんで?  ほとんど減ってない!   アリシアは受け取った通帳を確認して驚く。



ほんとうはね、サリエルの家の弁償は、あたしのヘソクリから出したんだよ。


ベルちゃんを一人で帰したのはあたしの不注意だし、サリエルの家を壊してでも探させたのはあたしだしね。


セレネ・・・


でも、もう昔ダンジョンとかで稼いだお宝も残ってないし、これで本当にすっからかんよ。


だからまた、冒険の旅にでも出ようかしら?


セレネ、だったらあたしも一緒に行くー!


お・こ・と・わ・り。  おことわり!


きぃーー  なによ なによ!


アハハ 冗談よ。 冗談!  アリシアもちゃんと連れてってあげるよ。


セレネ・・・  セレネ、だーーいすきー♪



***


ねぇ、なんか最終回ぽいニオイがするんだけど・・・


まさか、ほんとうにネタ切れなの?


・・・


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