第407話 ◆打倒インキュバス

◆打倒インキュバス


お昼少し前、ダイニングに集まったメンバーを前に、サリエルがインキュバス対策を説明し始めた。



いいですか今日の夜、みなさんは決してわたしより先に寝てはいけませんよ。


わたしの夢の中にインキュバスをおびき寄せて封印します。  それまでは、ベッドの中で寝付けない振りをしていてください。


そうすればインキュバスが、最初に眠ているわたしの夢の中に現れる可能性が非情に高くなります。



あとですね、封印するまで何日かかるか分かりませんから、一応眠気対策グッズを幾つか用意しました。


え~ あたしもう眠いんだけど。  手っ取り早くとっ捕まえてよ!   セレネはサリエルを恨めし気に見て文句を言う。


はーい、セレネさま。 悪魔に犯されたいのならさっさと眠って頂いて結構ですよー。



えっと、眠気対策グッズはテーブルの上に置いておきますので、みなさん忘れずに持って行ってください。


ふ~ん  どれどれ?  みんながグッズを見にテーブルの周りに集まり始める。



濃縮ミント液:目の下に塗るとスースーする


洗濯バサミ:挟んで一番痛いと感じるところ3箇所につける


尖った鉛筆:眠くなったら血が出るくらいぶっ刺す


接着剤:上瞼を閉じれないように接着する


氷袋:お腹か股の間にくっ付ける


鼻こより:クシャミを出して眠気を飛ばす



なんだよ、これって拷問道具の間違いじゃないの!   セレネがプンスカ怒り始める。



いいですか、ヴォルルさん。 お酒とか飲んだら絶対にダメですからね!


ホホホッ お酒なんて水みたいなものよ~。



あと、今回は絶対におふざけとか無しですよ。  分かってますねセレネさま!


は~い。  (鼻ほじ、白目)



あとは自己責任です。  もし、わたしより先に眠ってしまって、インキュバスに襲われても助けることは出来ませんから!


それでは、みなさん部屋に戻って、10時になったらベッドに入ってください。


・・・



今は夜の10時過ぎ。  ここはセレネの部屋である。


ふぁ~  あーー 眠いよーー  もう寝てまうよーー



セレネは、他の仲間と違い1日多く寝ていない。 つまり圧倒的に不利な状況なのだ。


ガクッ  ベッドの上に女の子座りをして、雑誌を読んでいるが時々意識が飛ぶ。


クソッ  今にも眠ってしまいそうだ。  このままではヤバイ!   仕方がないからあのグッズを使うか。



グサッ グサッ  最初に、学校の授業で散々使った鉛筆ぶっ刺し攻撃を試みる。


たちまち、手の甲は血だらけになる。 が、この程度の痛みでは眠気に勝てない。  (授業でも効果が無かった)



ダメだ!  次は洗濯バサミ10個。 もう、なりふり構ってられない。  乳首も挟むわ!



スゥー  ああ、あっぶねー 洗濯バサミの痛みじゃ睡魔に勝てん!


こうなったら、瞼を接着するしかないぞ!  



グゥー


だあーー  白目剥いて寝てしまうーー!



そして健闘虚しく、あたしが誰よりも早く寝落ちした。


すると、さっそくインキュバスがあたしの夢の中に現れる。



フフフ 今日の犠牲者はお前か!


夢の中であたしは、早くも全裸でベッドに縛り付けられていた。


はぅ・・・  やめっ・・・  ああっ  ・・・  ビク ビクッ


お前には、これから俺様の子どもを産んでもらうぞ!


ああっ  やめろっ!  イヤーーーッ!  



ピーーーッ  自主規制のため行為は削除されました(見せられないよーー状態)。



でも、セレネは妊娠しなかった。  なぜなら、セレネはサリエルと交わったことがあるため、サリエル(天使)の体液をセレネの体が吸収していたからだ。


その効果で、インキュバスの精液が浄化されたのだ。


セレネの体に触れたインキュバスもまた、その効果で浄化されて行った。



な、なんだこれは?  お前まさか・・  天使なのか?


・・・



チュン チュン


今日も爽やかな朝がやって来た。


セレネとサリエル以外は、頑張って明け方まで起きていたので、みんなはまだぐっすり眠っている。



昨日の夜はインキュバスは現れなかったですねー。  みなさんも無事のようでしたし・・・


サリエルは朝食の用意をしながら、ブツブツ独り言を言っている。



ふぁ~~ サリエル、おはよう。


あっ、セレネさま、おはようござい・・ま・・す。


やだ、セレネさま。 それって・・・  



うん?  おわっ!  なんだこれ?



見ればセレネのネグリジェの股間の前に、小さくなったインキュバが張り付いている。


どうやら、体が小さくなったところを寝相が悪いセレネに潰されたようだ。



なんだ、これ。 気持ち悪り~な。  セレネは親指と人差し指でインキュバスを摘まんでヒラヒラさせる。



セレネさま、インキュバスをこの中に入れてください。


サリエルが、蓋つきの広口瓶を持って来たので、インキュバスをその中に入れた。


はい、これで封印完了です。  蓋を閉めながらサリエルがニコッと笑った。



でも、どうしてセレネさまが、インキュバスを退治できたのでしょうか?


まあ、そんなことはどうでもいいじゃない!  結果オーライでしょ。


そうですね。



あっ、今日はスクランブルエッグと厚切りベーコンだぁ。  やったーーー!


ウフフ  クロワッサンも焼きましたよー。


でかしたぞ、サリエル!


お褒めいただいて、うれしいです。


うむ。



さてさて、なんとか一件落着のようですが、まだあの一件が残されていたのであった。

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