第355話 ◆モモちゃんの結婚式  その2

◆モモちゃんの結婚式  その2


正直な話し、飛行船の旅は快適だった。 おまけにスピードも申し分ない。


フィアスが泳ぐ速度は、時速50km(瞬間最大速度は80km)だが、もにゅぱ~は時速300kmを超す。


普通の商船クラスが時速30kmなので、飛行船はその10倍のスピードである。



そして、あたしには心配事が二つあった。


一つはヴォルルさんの操縦経験が皆無であること。 もう一つは、モモちゃんの結婚式場である孤島までの間に中継基地が無い事だ。


あたしもアンディが作った事業実行計画書をチェックしたので分かっているが、中継基地は3000km毎に一つは必ず設けられている。


当初は船で6日はかかると計算したので目的地までは、6日×27時間×30km=4860kmとなる。


今あたしたちが乗っている飛行船を引っ張って飛んでいる もにゅぱ~は、今回が初フライトなので持久力がどの程度なのか分からない。


・・・


お城を出てから4時間が過ぎた。 距離は順調に伸びて1200kmを少し過ぎたところだ。


船の旅とは違い、眼下には果てしなく雲海が広がる。  ポンと飛び降りたら、綿菓子のようなその上をフワフワと歩けそうな気がする。


時折り雲の隙間から真っ青な海が垣間見える。


乗り心地もいいし景色も抜群なので、これならアンディの航空会社は大成功間違いなしだろう。


これが正式航路なら、おいしい機内食も出たはずなんだけど、今回は勝手に拝借して来たので食事はコリン君が作ってくれたサンドイッチだけだ。


もっともコリン君が作ったサンドイッチの方が機内食よりもずっと美味しいんだけどね。



そして、お昼のサンドイッチを食べ終わった時、ガクンと飛行船の速度が落ちてしまった。


みんな慌てて操縦席に向かう。



ヴォルルさん、いったいどうしたの?


それが、もにゅぱ~の様子が変なのよ。


そう言われて操縦席の窓から もにゅぱ~を見てみれば、羽ばたきをしていていない。


おまけに西風が強くなってきていて、飛行船が徐々に流され始めている。


これはまずいわね。



だ、だからあたし、叔母さまの操縦する飛行船なんて乗るの嫌だったのよ!


アリシアが早くも愚図り始める。


でもいったいどうして今まで順調に飛んで来たのに此処に来て もにゅぱ~がおかしくなったのだろう。



そうだヴォルルさん、操縦席にパイロットマニュアルがなかった?


ああ、あれのことかしら。


ヴォルルさんがゆびを指したデスクの上には、分厚い本が乗っている。


まさか・・・ あんなに厚いの?  これじゃ読んでたら日が暮れちゃうわ。


セレネったら、インデックスがあるの知らないの?


それくらい知ってるよ!


なにを調べたいのか言ってごらんなさい!  あたしが見つけてあげてよ!


聞かなくても分かるでしょ!  もにゅぱ~のトラブルに決まってるじゃない。



きぃーー  ほんとムカつくわ。 ←アリシア

あ゛ーー  もうムカつくわね。 ←セレネ


フンッ

ふんっ


あらあら、シンクロするなんて本当に仲がいいわね♪


セレネちゃん、ここに対処方法が載ってたけど・・ ちょっと困ったわね。


ほんとうですか?  あたしは、ヴォルルさんが開いたページを覗き込んだ。


なになに・・・  う~ん  アリシア、これは君に任せた!


へっ?



なんだかいや~な予感がするけど次回へ続いてしまう~。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る