第73話 ◆ラスボス戦(その3)
◆ラスボス戦(その3)
リアムがエイミーの手を取った、まさにその時、ヒドラの二つの口から同時に巨大な炎の塊が吐き出された。
ゴォオーーーーーー
巨大な炎は、二人を飲み込もうと凄まじい勢いで突き進んで来る。
その時、シルフがヒドラ目掛けて大量の水を吹き掛け始めた。
しかし、いかに水の量が多くても、ヒドラの火炎の前では、まさに焼け石に水だ。
だがシルフの狙いは、あたしが思っていたものとは違っていた。
ヒドラの全身が水でびしょ濡れになったのを見計らって、ララノアが氷系魔法を放ったのだ。
ヒドラの体は、シルフが浴びせた水が凍ることで、ララノアの氷系魔法の威力が何倍にも増幅され、みるみる凍り付いた。
さあ、みんないったん撤退するぞ! リアムが全員の無事を確認しながら、撤収宣言をする。
だが、モッフルダフひとりが、みんなと反対にヒドラの方に駆けて行く。
モッフルダフ! 何してるの、早く撤退するわよ!! あたしはモッフルダフに向かって叫んだ。
でも、モッフルダフは、戻ってこようとはしなかった。
まさか・・・
凍り付いたはずのヒドラの体が微かに動き、周りに着いた氷がガラガラと崩れ落ち始める。
みんな、もっと早く遠くに逃げてーーー!! あたしは必死に逃げながら叫んだ!
カッ
ゴォーーーン
とてつもない閃光とともに、もの凄い爆発が起き、すぐさま爆裂に伴う爆風が凄まじいスピードで背後から迫って来た。
ああっ。 もうダメ、間に合わない。 もし、爆風に巻き込まれたら無論その威力と高熱で、ただでは済まない。
みんな、俺の周りに早く集まれ! タケトが大声で手を振って呼んでいる。
なんとか、みんながタケトの近くまで集まって来たところで、タケトが全方位防壁バリアを展開した。
ゴォオーーー
間一髪で、爆風が通り過ぎて行く。
サァーーー
パラ パラ パラッ
舞い上がった砂塵が引いた後に、ヒドラがいた方を見ると、そこには何一つなかった。
モッフルダフ・・・ モッフルダフが死んじゃった・・・
あたしはガックリと膝をつき、ただ呆然としていた。 なぜか、涙はでなかった。
エイミーとリアムがモッフルダフを探しに行ったが、爆発した付近は5階の天井まで、ぽっかりと穴が開いているだけで、跡形もなかった。
ただ、あの猛烈な爆発にも関わらず、2階奥の扉には傷一つ付いていなかったそうだ。
こうして、ダンジョンの攻略は終えたが、モッフルダフを失ったあたし達は意気消沈したまま、宿まで引き返すことになったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます