第70話 ◆2階層目(その6)

◆2階層目(その6)


ダンジョン1層目は、グリフォン(ワシの上半身とライオンの下半身)一体と遭遇しただけだった。

こいつは、タケトが一撃で仕留めた。


あたし達は、前回ケルベロスがいた2階へ上がる階段前で、どう攻め込むかを相談した。

エイミーは前回の失態がトラウマで一番隅で小さくなっていたので、結論としてはリアム(攻撃)とタケト(守備)のマッチョ二人組が先陣を務めた。


果たして、2階の踊り場には、おそらくそこが縄張りなのであろう、ケルベロスが牙を剥いて待ち構えていた。

が、今回はケルベロスが3つの頭を使って、もの凄い速さで攻撃してくるのをタケトが防御魔法で防ぎ、間髪入れずにリアムがクラウ・ソラスで切り付ければ、剣から放たれるまばゆい光とともに、あっという間に2つの首が胴から離れて床に転がる。


しかし、なんとケルベロスは大量の血を吹き出しながらも残る1つの頭で、リアムに襲いかかって来た。

その時、リアムとタケトの間には5mくらいの距離が開いていて、タケトはリアムとケルベロスの間に入り込めず、うまく防御魔法の展開ができない。


ガキンッ

リアムの剣とケルベロスの牙が音を立てて激しくぶつかる。 ケルベロスはクラウ・ソラスに喰いついたまま離そうとしない。

ケルベロスは圧倒的な力で、リアムをグイグイ壁際まで押し込んで行く。


なんとかしないと、これはまずい!  メンバーの誰もがそう思ったとき、青い閃光がケルベロス目掛けて突き進んでいった。

その光がケルベロスの頭に当たると、ビシビシという音を立てながらケルベロスの体が凍り付いていく。


それはララノアが放った氷系魔法だった。 その攻撃魔法を見るのは、みんな初めてだったが、その威力に声もでない。

ケルベロスの全身が氷に覆われたと思ったら、今度はガラガラと音を立ててあっという間に崩れ去った。


前回は、一方的で勝負にならなかったのに・・・  あたしとエイミーは、タケトの防御魔法とララノアの攻撃魔法の威力にただ唖然とするしかなかった。

これで勢いづいた、あたし達は左右に分かれ、2層を突き進んだ。


やはり、防御系魔法の使い手が一人いるだけで戦闘上、圧倒的に優位になる。 攻撃系の者は敵の攻撃を読んで、それをかわすことなく攻撃に専念できるのだ。

2層の制圧には相当の時間を要すると思っていたが、強敵が多く出現したにもかかわらず、昼を少し過ぎたところですべて片が付いた。


2層には1層ほどの宝物は無かったが、それでも各部屋には値打ちのある品が一つ以上見つかった。

それらの管理はすべてモッフルダフが行い、今日の働きに応じて後日分配された。


1層の攻略から20日ほどが経っていたが、各層の魔物にはそれぞれの縄張りがあるようで、攻略済の階層に新たに魔物が出現する可能性が低いのも分かった。

そのため、2層の制圧という今日の目的を達成した、あたし達は早々に宿屋へ引き返すことにした。


帰り道、エイミーが元気がないのが気になり声をかけるとララノアが、ケルベロスをいとも簡単に倒したことにショックを受けたという。

あたしには、それが痛いほど分かった。

何しろララノアと同じくらいの敵を倒すとしたら、持参する銃器類はもの凄い量が必要となって、それはとても現実的ではないからだ。


あたしもエイミーも2層の戦闘途中で弾薬切れを起こし、エイミーはリアムとタケトに、あたしはモッフルダフとララノアの後に、ただついて行くだけだった。


エイミーから話を聞いたあたしも元気がなくなり、大勝利を収めたにもかかわらず、結局二人してドヨドヨと暗い顔をして無言で宿まで歩いて帰ったのだった。

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