第55話 ◆地下1階層目(その1)

◆地下1階層目(その1)


うっ 痛たた・・


辺りは崩落のため、砂ぼこりで視界が悪く、自分がどんな格好でどこにいるのかさえ分からない。

でも、ふと気が付けば背中とお尻がなんだか温かい。

こ、これは、もしかしたら・・・


そう、実はあたしが落下したときメイアが飛び込んで来て、あたしはメイアの背中の上に落ちたのだ。

もしメイアの背中に落ちなかったら、大けがを負っていたことだろう。


いつも助けてくれてありがとう、メイア。

メイアの首に手を回して撫でてあげたら嬉しそうに頬ずりして来たけど、ドラゴンの姿だとちょっと痛いよ。


セレネ! そんなことしてる場合じゃない!

シルフが炎を噴きながら勢いよく飛んできた。

よくよく辺りを見回すと、初めて見る大きな魔物達に取り囲まれているではないか。

完全に油断していた。 ここはダンジョンの地下1階層だった。


3つの頭を持つ巨人カークスが、棘の付いた巨大なこん棒を振りかざして向かって来る。

頭が3つあるので、それぞれが何かを言い合いながら、突進してくる様に恐怖する。


シルフとメイアがあたしを真ん中に挟んで、それぞれ相対する巨人に向かって火炎を浴びせ続ける。

これには、さすがの巨人たちも火達磨となって、悲鳴をあげ転げまわる。

壮絶な戦いによって、辺りに肉の焦げる臭いが充満して、吐きそうになる。

ダンジョンの奥へと逃げていったカークスが数体いたが、当面は襲って来ないだろう。


だが、安心したのも束の間、直ぐに別の魔物達の鋭い眼光が暗闇の中に浮かび上がる。

あたしは落としたマシンガンを拾い、暗闇に光る魔物の目に向かって引き金を引いた。


タタタタッ  タタタタッ


グワーッ


何匹かの魔物に命中し、魔物達の悲鳴がダンジョンの壁に響き渡る。

その恐ろしい声に総毛立つが、攻撃をやめれば即自分の死につながるのだ。

あたしは、マガジンを交換しながら、前方の敵に向かって打ち続けた。


メイアも、あたしとは反対方向に進みながら、魔物達を次々に撃退していった。


地下1階層の魔物は、これでほぼ殲滅できたかと思ったが、地響きを立てて巨大化したドワーフ(スプリガン)が暗闇から突然現れる。


こいつには、きっとマシンガンは通用しない。 いままでの浅い戦闘経験でも、一瞬で半端ないその強さが伝わってくる。

肩に乗っているシルフが、珍しく怯えているのが伝わってくる。

これはマジでヤバイ!

敵の目を見ながら、少しずつ後退する。


ズゥン ズゥン


ドワーフが、こっちに向かって来る。


マシンガンのマガジンも最後の一つだ。 例え全弾命中したとしても、怪我すら負わせないかも知れない。


ジャリッ


あっ・・

後ろ向きに後退していたため瓦礫に足を取られたあたしは、思いっきり尻もちをついてしまった。 

早く立ち上がらないと・・・

見ればドワーフは、背中に手を回すと巨大な剣を抜き、目を赤く光らせて向かって来る。


ひゃぁーー


腰が抜けて、尻もちをついたまま後ずさるが、いくらも進めない。

このままでは確実に殺られる。  もうダメか・・ そう思った時、エミリーが腰に付けてくれた手榴弾に手が触れた。


これって、どう使うんだっけ。  目の前に迫るドワーフの恐怖で頭が回らない。

セレネ。 それ、棒を抜いて投げるだけ!  シルフが耳元で怒鳴る。

ああ、そうか。 あたしはピンを抜いて、ドワーフ目掛けて手榴弾を投げつけた。


一瞬の間を置いて、手榴弾が爆発する。


バアーーン


距離が近かったため、自分も強烈な爆風を浴びる。

すぐさま両腕で頭を隠し、地面に伏せる。 


恐る恐る顔をあげて見れば、ドワーフの片足が吹き飛んでいた。

ドワーフはもう歩けないが、腕を使って這いながら、こっちに進んで来る。


嫌ーーっ


タタタタッ  タタタタッ


あたしはパニックになり、ドワーフの頭目掛けてマシンガンを打ち続けた。


カチッ カチッ


とうとう最後のマガジンが空になってしまった。


セレネ凄い、ドワーフ倒した。

シルフの声で我に返と、ドワーフが頭から大量の血を流し息絶えていた。

ガタガタと体が震え止まらない。  歯もガチガチしている。  こんなのは初めてだ。


ズゥン ズゥン


またしても、廊下の奥から大きな魔物が向かって来る音が聞こえて来る。


もう弾は無い。 もし別のドワーフだったら、早く逃げなければあたしは確実に殺される!

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