第49話 ◆1階層目(その1)

◆1階層目(その1)



大量の荷物対策として、シルフがナイスアイデアを出してくれた。  さすが、あたしの嫁だけのことはある。

まぁ、対策自体は単純かつ明快で、一番近くの村の宿屋を拠点にして、1階層ずつ攻略する方法だ。

1階層攻略する毎に宿屋との間を往復しなければならないが、これなら荷物の量は、ほぼ9分の1で済む。


ところが、あたし達の誰もが出発間際まで、ある問題に気付かなかった。


モッフルダフの体は、一本の糸がうねうねと動くことで保たれている。 そのため、荷物を背負うことができない。

仮に手で持ったとすると、こんどは肝心の武器(鞭)が使えなくなる。 つまり戦闘力が落ちるのと荷物も大した量を持てないということだ。


はて、どうしたものか悩んでいると。


あのさ、どうせ1階層目なんだから、荷物を減らして行こうよ。

エイミーがどや顔で提案してくる。


それじゃあ、ロケットランチャーとアサトライフルは置いていこうね。

え゛ーーーっ  それはちょっと困るわ。 エイミーは急に情けない顔になる。


だってそれ、一番の荷物だと思うけど。

う゛ーーーっ  両腕を真っ直ぐ真下に伸ばし拳を握りしめて、涙ぐんでいる。


エイミーをからかうのは面白いけど、あんまり意地悪しちゃ嫌われてしまうので、近くの農家で小ぶりの荷車なら貸してくれることを教えてあげた。


ほんとにっ! やったあーー! 


カイルとマーブルを叔母さんの家に預けてから、エイミーはなんだか子供っぽくなったような気がする。

きっと、幼い弟妹がいたので、お姉さん的に無理をして頑張っていたのだろう。


荷物の問題もクリアできたので、農家から借りた荷車に荷物を積み込んで、ダンジョンに向けて出発することにした。

今回は先頭にモッフルダフ、次にメイア、そしてあたしが荷車を引き、エイミーが荷車を後ろから押すことになった。

シルフは、あたしの頭の上に乗って、手薄になる後方を警戒する。


宿屋から、要塞廃墟ダンジョンまでは、5kmくらいだろうか。

1時間くらい歩き、ダンジョン突入前にいったん休憩をはさむ。


1階層に突入したら魔物を殲滅させるまでは休めないので、持参したお弁当を食べながら、疲れを残さないようにゆっくり休む。


お腹がいっぱいになるとやっぱり眠くなる。  シルフが案の定、ウトウトし始めた。

一方でエイミーは女の子なのに銃の点検に余念がない。 ピカピカの銃をさらに磨き上げている。

自分の命と仲間の命を守る大切な武器ということを考えると納得がいく。 それに引き換え、あたしはいつも他力本願だ。


今日はみんなに迷惑をかけないように頑張ろう。

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