第41話 ◆密林の罠

◆密林の罠


翌朝、エイミーとモッフルダフが狩に出かけて、あっと言う間にダチョウに似た大きな鳥を仕留めて戻ってきた。


この世界の生き物はみんな大きい。

さっそく、羽をむしって丸焼きにする。  メイアは直ぐに反応し、涎を垂らし始めた。


きっと幼女の姿でなければ自分で獲物を仕留めて、お腹いっぱい食べるんだろうと思い、メイアの耳元でそう言ったら焼いた肉が美味しいらしい。


それじゃあ、自分の口から吐く炎で焼けばいいんじゃないかなと言ったら、スパイスや岩塩が気に入ったので生肉では物足りないのだそうだ。


それに、長い間炎を吐き続けるのはシンドイし、強火とか弱火など火加減はできないと言う。  なるほど、その通りだ。


メイアとの会話は、まだ難しいところがあって、片言の言葉と身振り手振りで行っている。

これは人間の幼児も同じだが、早く会話がスムーズにできるようになればいいなと思う。


さて、モッフルダフもパーティーに加わり、この世界に詳しい仲間が増えて心強い。

なにしろ今日は、魔物との闘いは絶対に避けては通れないだろうから。 


やはり歩き始めて直ぐに、周囲を魔物に囲まれる。  あたし達を襲ってくるのは、もはや時間の問題だ。

まさしく喰うか食われるかの世界だ。 緊張で掌に汗が滲んでくる。 



グワォーー


右前方から大きな唸り声があがったのをきっかけに、四方から魔物が飛び出して来る。


ダーン ダーン

真っ先にエイミーのショットガンが火を噴いた。 

エイミーのショットガンの性能は、おそらく10GAゲージ程度で、50m以内なら最大の威力を発揮する武器だ。

案の定、勢いよく飛び出して来た、ファイヤーウルフ2頭が吹っ飛ぶ。 


モッフルダフも、ヒュンヒュンと鞭を振り回し、凄いスピードで魔物を倒して行く。

鞭が当たった瞬間に魔物の体が真っ二つになる。 どんな構造なのか分からないが、恐ろしい武器だ。


あたしは、シルフと組んで右前方から襲って来たゴブリンと対峙する。 少しは知恵があるのか、こちらの出方を見ている。

迂闊に手を出してこないのは、妖精の怖さを知っているからかも知れない。


ザザッ

右のゴブリンに気を取られていた隙に、左サイドからファイヤ-ウルフが飛び出して来た。


しまった! 慌てて身構えるが、今度はゴブリンが突進してくる。


シルフがゴブリンに炎を噴いて応戦するが、左から来るファイヤーウルフは、あたしでは対応できない。


ギャオン

逃げるか! そう思った次の瞬間ファイヤーウルフは断末魔をあげ、ドォッと音を立てて転がり落ちた。


よく見れば、カイルが投げた小型の斧が首に刺さっているではないか。 みんな凄い戦闘能力だ!


そうだメイアは?

後方を振り返れば、マーブルを守りながら、口から超音波のようなものを出して魔物を次々に倒している。


戦闘は、あたしにはすごく長く感じたが、実際には10分もしないうちに魔物たちは全滅していた。


全員の無事を確認し安堵すると同時に、この密林を抜けるためには、ある程度の人数がいないと無理なことが改めて分かった。

また、短い戦闘ではあったが意外に体力と精神力を消耗することも認識した。


辺りに注意しながら先を急ぐ。 すると足元の地面が突然崩れ、ぽっかりと大きな穴が開いた。

もうちょっとのところで、穴の中に落ちるところだった。 深さも相当あり、落ちたら確実に命を失っている。


この密林地帯には魔物以外にも気を付けないといけない罠が多くあるに違いない。

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