珍しい反応といつもの反応

「で…お前…何処に向かってんだ?」

「ん?勿論森の奥だけど?」


スタスタとキョウヤの前を歩くユウキ

しかし、その方向はどうやら出口には向かっていないようだ


「何で奥に向かうんだよ…」

「いやね…こういう森って、何かありそうじゃね!?」

「いや…森だから、植物とか、普通にあるだろうけど…」

「そう!それが大事なんだよ!」

(ハハハ…こうなったコイツは絶対、この森調べ尽すな…)


キラキラと目を輝かせているユウキとは反対に

死んだような目になるキョウヤ

キョウヤとしては、早く帰りたいのだが

この状態のユウキを説得出来る気がしない

少ない経験しかないが、コレに関しては確信しかない


「つーか、さっきの植物は群生地探して採集しなくて良かったのか?」


さっきの植物とはスーランの事だ

今までのユウキなら、大量採集をし始めるだろう

しかし、先程キョウヤからもらった一つをインベントリにしまって

特にそれ以上を探そうとはしていない

それが、今までの行動から考えると不思議でならなかった


「ん?だってさ…あれ、どうやって加工するよ?」

「え…いや、いつもみたいに薬にすりゃ良いだろ」

「いや、加工しても良いけどさ

加工しても、しなくても効果一緒だよ?」


スーランは香で睡眠を誘う

入眠導入剤的な物である

確かに手間をかけても、効果はそこまで変わらないだろう


「確かに…睡眠導入の効果から、いきなり違う効果にはならねぇか…」

「そ、しかも、あれは香が効果を持ってるでしょ?

香水とか、僕基本使わなかったから、どうやって香集めるとか分からねぇし

香水みたいに纏っちゃ危ない香だしな」

「…なぁ、それって持ち運べたら便利じゃねぇか?」

「ん~…どうだろう…

何時間も寝る道具を、そんなあっちこっちに運ぶかな?」

「…ほら、冒険者とか…」

「いや、普通に野営とかしてる時に8時間グッスリとか困るでしょ」

「…宿屋に泊まった時とかに!!」

「いや、普段野営してる冒険者が、宿屋で不眠になるかな?」

「…」


何とか自分の案を出してみるが

どれも、反論の余地も無く返される

結局、これ以上言える事もなく

キョウヤは先へ進むユウキの後をついて行くしかなかった

森は、相変わらず薄暗いし、木々と雑草が生い茂っている

あまり人が寄り付かないのか、道らしき道は無い


「ん~…雑草と木が多い森だなぁ…

体力草と精神草…んで、スーラン以外使えそうな物が見当たらない…」

「はぁ…歩き疲れた…」


30分程かけて、森を北へ東へ南へとあちこち歩き回ったが

特に目ぼしい植物に出会えなかった

残す所は森の西側…


「ったく…早く済ませて帰ろうぜ…」


昼が近くなり、キョウヤの眠気が少しずつ増えていく

まぁ、まだ我慢出来ないほどではないので、寝転びさえしなければ

帰りまで持ちこたえられるだろう

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