花の効果

「これって…体力草に精神草、それにこれは…」


薄暗い森を進むと、少し開けた所に出た

木々は少ないが、周りの木が大きく伸びてきて光をさえぎっているので

薄暗い事に変わりはなかったが…

そこには加工に使える素材がいっぱい生えていた

ユウキは今まさに道草をしているのだ

頭の中では、完全にタンクよりも素材が優位に立っているであろう


「ココにあるやつ、全部採集したら、補充出来るし…

うん、さっさと採集しよ」


採集しない…という選択肢はユウキの中になく

早速ブチブチと採集していく

もちろん、周りにある物は、採集のスキルのお陰で

同時進行で、どんどん採集されていく

とりあえず、現段階で一つハッキリした事は

確実に脇道に逸れてしまった…という事だ

先程の狩りで、ユウキは30体程倒しているが

まだ依頼達成には足りていない

まぁ今日中に出来なくても、特に問題は無いし

きっとキョウヤは頑張っているので

依頼は問題なく達成する事が出来るだろう

むしろ、それよりも、ユウキをこの場所から連れ出す方が一番の問題である


「体力草と精神草は採集出来たっと…

ん?この花は…?」


スズランのような見た目の花

花の色も白く、とても綺麗である

ユウキはその花に近づき、よく見ようとしゃがみ込む


「スズラン…かな?

えー…っと…(ぁ…れ…?なんか…急に…眠く…)」


眠気に対していつも敗北しているユウキが

強烈な眠気に耐えられるわけもなく

呆気なく眠ってしまったのだった


~数十分後~


キョウヤside


「はぁっ…はぁっ…」


全速力走り抜け、ユウキが狩っていたであろう場所へと着く


(普通に狩りはしたんだな…この辺りにあったタンクの印は無くなってる…)


キョロキョロと辺りを見ても、タンクの姿は確認できない

おそらくユウキが狩った後だろう

という事は、ココにユウキは来たし、ココまでは正常だったのだ


(ココから後だよな…)


その後に、狩る予定になっていたタンクの場所は

まだ印が残っているので、タンクの群れがいる事に間違いはない

と、なってくると、ココから先で何かがあった…

そう考える方が自然だろう


(アイツが興味を持ちそうなもの…)


この場所には、特に争った跡はない

という事は、ユウキが問題なく銃でタンクを倒した…という事


(人に攫われる…わけねぇよな…)


攫った所で、何の得があるだろうか…

とりあえず、ユウキに反撃されて終わりだろう

となると、ユウキが興味を持って自発的に動いたのだろう


(しっかし…何処にアイツを動かす要素が……

ん?あの森…)


キョウヤの頭の中で草木を楽しそうに鑑定して回るユウキが出てくる

というか、今日の朝の話だ…


(…アイツが興味持つ確率、めちゃくちゃ高いな…)


むしろ、興味を持たなければその理由を聞きたいレベルである


(とりあえず、あそこを探してみて、いなかったら他探すか…)


キョウヤは森に向けて迷わず足を進める

森の中は薄暗く、木が生い茂っている


(特に、生産とかには使えない草みたいだな…

採集した痕跡がねぇ…)


ユウキがこの場所を通ったとして、この草が生産に使える物なら

ココには採集した痕跡…つまり、抜いた跡が残っているはずだ

ココをユウキが通っていない可能性もあるが

キョウヤの中で、ココに入っていった事は、ほぼ確定となっているのだろう


「あ…少し開けた場所が…」


目の前に少し開けた場所が現れた

そこには…


「よし、当たりだな!採集の痕跡がある」


その痕跡を追って視線を巡らせると…


「っ!!?おい、大丈夫か!!?」


草地に倒れているユウキを発見した

慌ててそばに駆け寄り、様子を見る

特にケガがあるわけでは無かった

が、意識が無い事に変わりはない


「おい!しっかりしろ!!」


大きな声で呼びかけるが反応がなく

揺さぶっても反応が無かった


「マジかよ…一体どうしたってんだ…」

「すー…すー…」

「……は?もしかして…寝る…だけ?」


寝息が聞こえ、至った答えは『寝ている』だった

しかし、キョウヤならともかく、ユウキがこんな所で寝るとは考えにくい


(となると…意図的に眠らされた…とか…?

でも、人のいる感じは無かったと思うし…何より人相手なら、コイツ気づくだろ…

……そうなってくると…こいつが無防備に近づく物は…)


ユウキのすぐ近くに生えている小さな花に目がとまった


(コレが原因か?

いや、コレが原因なら、俺だって眠ってるだろ…)


そう思ったが、今の所、それくらいしか手がかりが無いので…


(仕方ねぇ…鑑定してみるか…)


◇スーラン(白)◇


女性用の睡眠導入剤としてよく利用される花

この花の香を嗅ぐ事で睡眠に誘われる

黒いスーランは男性用の睡眠導入剤として利用されている

稀に体質的に反対の物が効く場合がある

一度眠れば10時間程目覚める事は無いが、キスをするとすぐ目覚める


◇ 終 ◇


「…………」


鑑定で見た内容を頭の中でゆっくり理解する

そして、間違いが無いか、何度も確認する

さらに、もう一度じっくり考える…


「…マジかよ!!!?

お前、稀な奴なわけ!!?」


キョウヤはユウキを男だと思っているので、稀な奴扱いだが

実際は、女性なので普通に効いただけである


「はぁ~…10時間も寝るのかよ…

仕方ない…背負って帰るか…」


そう思い、背負おうとして、ふと気が付いた

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