鮭さんのエッセイ

鮭さん

iPhoneを茹でた話

 私はiPhoneを熱湯で茹でたことがある。まず、経緯について述べさせて頂く。


 イヤホンジャックにごみが詰まっていた。これが始まり。

 どうやってゴミを取ろうか考えた結果、接着剤をつけたイヤホンをイヤホンジャックに入れ、イヤホンにゴミをくっつけた後、イヤホンを抜くことでゴミも取ろうと考えた。

 早速実行、すると、イヤホンとイヤホンジャックが完全にくっついてしまった。抜くしかないと強く引っ張ったら、コードがきれ、イヤホンの先端がイヤホンジャックに詰まるという結末を迎えた。ただ、少しだけコードもくっついていた。接着剤をとかし、このコードを引っ張ればいける。そう思った。


 私は接着剤を溶かす方法を検索。まず最初に出てきたのが、除光液で溶かすという方法。私は除光液を薬局で買い、イヤホンの詰まったイヤホンジャックに垂らした。無駄であった。


 次に出てきたのが、熱で溶かすという方法。しかし、接着剤を溶かすには相当の温度が必要そうだ。ならば茹でよう。このようにして私はiPhoneを茹でるという発想に至ったのである。私はiPhoneを茹でることについて、インターネットで検索した。その結果、iPhoneを茹で、その後うまく起動した、という動画を発見。いけるではないか、もし私の思惑どうりに接着剤が溶け、イヤホンジャックからイヤホンを取ることができたらどれ程気持ちが良いだろう、この好奇心を、私は止めることができなかった。


 その動画では直接iPhoneを湯につけていたが、直接つける必要はない。私はiPhoneをビニール袋に入れ、熱湯にiPhone入りビニール袋をつけた。すると、iPhoneの画面が暗くなり、機体の温度が高い、というような表示が現れた。私は焦り、冷蔵庫にiPhoneを入れ冷ました。するとiPhoneは元通りになった。今思い返すと、この辺りでやめておくべきだったのだ。しかし、やめられなかった。なぜか、それは、好奇心のせいである。熱で接着剤を溶かし、イヤホンジャックからイヤホンの先端を取ることに対する好奇心が止めることを許さなかった。つまり私は、好奇心に負けてしまったのである。(実際はiPhoneを茹でて壊したことに対する後悔はほとんどないので負けたという表現は変かもね。)


 そのようなことを繰り返した結果、真っ黒な画面に赤い線が入った状態でiPhoneはフリーズ。私はやばいと思い、iPhoneを茹でるのをやめた。どうしようもなくなり一日放置すると、ほとんど元どおりになった、が、電話の音声読み取りが不可能になっていた(ここで興味深いのは、動画撮影に伴う音声読み取りは可能であった、という点である)。そのため、結局アップルストアでiphoneを交換することにはなったのだが(保証に入っていたため大した金額ではなかった。ちなみに、水没と説明した。)。


 この世のあらゆる発明の原動力は好奇心である。好奇心は人類を発展させてきたと同時に、破壊してきた。エジソンが「なぜものが燃えるのか。」という好奇心から納屋を全焼させた話は有名であるが(wikipedia調べ)、「なぜものが燃えるのか。」という好奇心から焼け死んだ人々もこの世には数多く存在するだろう。爆弾も原子力も好奇心から生まれ、たくさんの命を奪ってきた(勿論利益も大きい)。あらゆるものは正負の側面を持っており、大概の場合正が大きいほど負の面も大きい(あらゆるものを人類にとって有効にのみ使うことができるようになったらそれこそ真の人間的発展と言えるのであろう。)。これからの時代、好奇心は人類を滅ぼす原動力にもなり得るのである。


 好奇心を暴走させるのは危険である。常に注意しながら用いなければいけない。

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