第9話衝撃の事実も数聞くと驚きが薄れるのに驚けとか強いてくる奴はまずは人の気持ちを考えろ
眼が覚めると見知らぬ天井が視界一杯に映った。かなりのデジャヴ感を感じさせる。確か、この世界に来たばっかの頃だったか…思いながら室内を見回していく。
見た感じだとここは木造の建物だと言う事位しかわからなかった。強いて言うなら、人の頭くらいの丸太で組み立てられた別荘などのログハウスみたいな所だという事だけだった。
「どこだ、ここは…」
ベットから身体を起こそうとするが、ギシギシとでも音を立てるかのように痛みが走る。
身体がまだ起き上がるなと拒否しているかの様だった。仕方がないのでそのまま体勢でいることにし、周囲を観察し直す。といっても特に何もないのだか…
一頻り観察するも何も得られず、違うことを考える。何故自分がここにいるのか、そもそもここはどこなのかを探るべく前後の記憶思い返してみる。
「俺は確か…ホブゴブリンを狩っていて…」
そこまで思いだした所でドアがノックされた。警戒の体勢を取ろうとするが、身体が言うことを聞いてくれない。そうこうしている内に人が入ってきてしまった。
「起きてたのね」
そう言いながら入ってきたのは先程の、森で意識が闇に沈む直前に目撃した女性だった。
黒い服を着ていているせいで怪しい雰囲気のある女性。その女性を見た瞬間全て思い出され、女性が入ってくるなりセリムは戦闘態勢をとろうとするのだがまたしても身体が痛み、変な体勢でベッドに転がる。
フフッと面白いものでも見たかのように笑い出す女性。
「そう構えないでもらいたいのだけど…それに君程度じゃ私に傷を負わせる所か、攻撃を当てる事すら出来ないわよ。もちろん全快時でもね」
だから無駄なことはよせと忠告をしてくる。
「それよりも君にはいくつか聞きたいことがあるの。立ち話もなんだから付いてきてくれる」
そう言うと出ていってしまった。階段を下りる音を聞き付いていくかどうか迷うが、セリムにしても聞きたいことがあったので少し遅れて階段を降りて下の階に向かった。
降りて行った先では、木製のテーブルにお茶と思わしき飲み物を置いている女性の姿があった。
椅子を引き女性が椅子に座る。いつまで立ってるのと言われ女性の向かいの席にのそのそ身体を気遣いながら腰を下ろす。
「さて、何から聞こうかしら…っと、その前に自己紹介を先に済ませましょうか」
一人漫才でもしてるのかと思ったが、ここは情報収集が優先だと気持ちを引き締める。
「私はカルラ・バーミリス。よろしくってことでいいのかしらね」
「セリム・ヴェルグです」
名前を名乗るが、それはあくまでも相手が名乗ったからであり、セリムとしてはよろしくするつもりは無い。寧ろよろしくするなら夜の相手によろしくしてもらいたい等とまったく関係ないことを考えしまっていた。
無論そんないきなり会った女性とそんなことする気はない。本当だからなっ!出来ないんじゃなくてする気がないんだからな! ここを忘れないように。授業に出るから。
と、そんなどうしようもない事を考えながら、目の前の女性、カルラと名乗った女性を視界から外さず警戒する。
「そんなに睨まれても困るのだけど…まぁそれも無理のないことね。目が覚めたら知らない場所に私みたいな美人と二人っきりじゃね…それとそんな眼で見られるとつい虐めたくなってしまうから見ないで」
いきなり己の性癖を暴露し出すカルラ。何言ってんだコイツ、変態か?などと思いつつセリムも実は満更でもなかったりするので心の中では是非、お願いしますと平伏してお願いしている気持ちであったりした。
だって男だし仕方ないじゃん。年上の女の人に虐めてもらえる機会なんてそうそうないんだからねっ!ルナも一応年上だが胸が残念だし…それに比べカルラはデカくて雰囲気がとてつもなくエロくていい。だが、そんなことはおくびにも出さず、現状について聞きたかったことを聞く事にする。
「セリム、と言ったかしら…君は中々面白いスキルを持ってるのね」
質問しようとした矢先、カルラからのいきなりの先制パンチ。しかもスキルが見えていると言うのを暗に示す内容のものだ。
だが、前に一度ローからもいきなり先制パンチをくらったことがあるので慣れたという訳ではないが、然程動揺するようなことは無かった。
「どうゆう意味ですか?」
「あくまで隠すつもりなのね…それも仕方ないかわことね、神敵スキルなんて持っていれば面倒事に巻き込まれるだけだからね。それにしても神喰(ゴッドイーター)とは大層な名前だこと」
どうやらスキルに関しては本当に視えていたらしく名前まで言われてしまう。さすがにここまでピンポイントで当てられると噓ではないことが分かる。
しかし、今重要なのは当たったかどうかではなく神敵スキル保持者の情報を得たカルラの今後の行動と何故、当てることが出来かである。
「何故分かったんですか?」
そんな問いをした所で何もならないし、持っていると認めるようなものだが、今更か…と思いつつ時間を稼ぎをして、これからどうするかを考える。
カルラが顎に人差し指を当て考えるような仕草をとる。普通の人がやるとぶりっ子に見えるが、カルラがやると、妖艶な雰囲気も相まって誘っているかのように感じられる。
「私には視えるの。と言っても別にそこまで特別な力って訳でもないんだけど」
そう言うとフフッと何が可笑しいのか笑う。
「それと、もしスキルの事をバラされるのを心配しているならそれは不要よ。私もね、国に追われている身でね、森の中でひっそりと暮らしているの。ちなみに森っていうのはセリム、君がゴーレムと戦っていた森の事ね」
とりあえずはその言葉を信じることにする。と言うか信じるしかないだろう。
「にしても、不思議よね~。結界を張って人間だけが入れないようにしていたのにセリム、君はいとも容易く侵入してきて、しかもこんな子供がゴーレムを倒してるんだもの…数年かけて作った結界を簡単に通り抜けるなんて少し自信を失うわ」
瞼を伏せ、落ち込んでいる感じを出しているが、先程の声音がそれとは反対に少し喜悦混じりだったこともあり、本気で落ち込んではいないのがわかる。
「どういう意味だ? 人間だけがって…」
カルラの発言に戸惑いが隠せない。それは自身が人間じゃ無いからこそ通れたみたいな言い方に聞こえたのだ。
「そのまんまの意味よ。私が作り出した結界は余程の力がなければ人間では通ることは出来ないの。それも結界を破壊して通るのがもっとも考えられるやり方だけど、貴方は壊すでもなく、ただ普通に通り抜けゴーレムと戦っていた。つまりセリム、君は人間じゃないんでしょう」
「は?」
衝撃の真実が明かされ、変な声を上げ、呆然としてしまう。だがそんな中でもやはり衝撃が大きかった為か呆然とした頭で質問をする事が出来た。
「カルラ…さん、何を言ってるんだ意味が分からない」
「そんなこと言われてもねぇ。さっきも言ったけど私は視えるのよ。セリム、君には色々なものが混ざっているわ。全てそれが原因でしょうね。神喰とか言うので魂を喰らい、吸収したことで魂が変質したのかもしれないわね」
そこまで言い興味深そうにこちらを見つめるカルラ。やめてほしい。照れる。そんな場合ではないと思いつつも、つい考えてしまう。
そんな余計なことに思考が行く余裕が出来た所為だろうか、自身の変化に気付く。目の端に映る髪の色が変わっていた。
「髪の色が…薄くなってる?」
元々はシトリアに似た黒に近い髪色だった筈だが、今はそれが、眼で見てわかるほどに色素が抜けて茶色になってしまっている。
「今頃気づいたの?セリム、君は案外おっちょこちょいなのかしら。それより変化が髪だけで良かったね」
「?」
意味深なセリフに首を傾げる。
「セリム、君が戦ったゴーレムは魔石と私自身の魂の欠片を元に私が作ったモンスターなの。神喰のスキルで魂を喰らったとき大きすぎる力を喰らった所為で貴方は意識を失い、激痛によるストレスで髪の色が薄れたんじゃないかしら」
カルラの話を信じるなら大きすぎる魂を喰らったことによりキャパオーバーで失神したと言う事になる。それに魂の欠片云々は正直意味が分からなかったのでカルラについての謎が深まった。
「カルラさんは何者なんですか?」
「そう言えば言ってなかったわね。私は複数の悪魔と契約する事により、悪魔の力を手に入れた者。複数と契約したおかげで肉体と魂に影響が出たんでしょうね。不死では無いけど不老不死に近しい存在になったわ。それと視えると言ったのも悪魔の力、魔眼と呼ばれる特別な眼持っているからよ。"
その後、大層な名前だけど視えないものも多いのよと苦笑気味に言っていた。
「さっき特別な力じゃないって言ったの覚えてる? この魔眼はね、魔眼の中じゃ、そこまで強いとか、そういった部類じゃないの。だから、魔眼としてはそこまで特別な力ではないの」
なるほど、と頷いていると「何か聞きたいことはあるかしら」と聞かれる。不老不死ということで年齢を聞いてみたかったがそれを聞く前に聞いてくれるな的なオーラを出され、断念せざるえなかった。
帰り際、カルラにここの事を誰にも話さないように口止めされ取り敢えず頷いておく。そうでもしなければ帰してもらえないだろうから。
そうして帰ろうとすると、カルラがステータス確認しといたほうがいいと言うので頭のなかで念じ、ステータスを表示する。
名前 セリム・ヴェルグ
種族 :人族
年齢 :7歳
レベル :26→30
体力 :470→1200
魔力 :310→1100
筋力 :520→1600
敏捷 :280→890
耐性 :230→1200
スキル
剣技 LV6
筋力強化 LV6→7 up
拳技 LV5
命中率上昇 Lv5
体力強化 Lv2→3 up
敏捷強化 Lv2
耐性強化 Lv1
火魔法 Lv2
魔力強化 Lv1
硬化 Lv3 new
気配遮断 Lv3 new
気配感知 Lv1 new
いきなりステータスが急上昇していた。カルラに聞くと悪魔と契約した私の魂の喰べた影響なんじゃないかしら、と言われた。
最後に強くなれて良かったわねと言われ、そこは素直に頷きかえした。ちょー痛かったけどなと心の中でツッコミを入れながら…そうしてようやく帰路についたのだった。
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