一部 32話 奇襲攻撃

「まずは時間を稼ぐことが最優先だ。しかしあのデュラハンはなぜ攻めてこない? こちらとしては好都合なんだが」


 アレだけコケにしたのだから、すぐにでもこの町へ向かってくると思っていたが、当てが外れて首をかしげていると。


「調査によれば町外れにある共同墓地へと向かったようです。ベルディア騎士団との戦いで傷ついた軍団を、新しい死体を使い補充していると思われます」

「だからあそこの死体全部燃やせって言ったじゃん! クソ! せっかくのベルディアの頑張りも台無しだよ!」


 ギルドの報告を聞き、怒って叫んだ。


「いやあ、だってまさかここにあのバラモンドが来るなんて思ってもいませんでしたし……」

「死体を燃やすとかご法度ですよ……普通」

「まぁいい。過ぎたことだ! 回復してしまった兵力はしょうがない! それも含めてどう倒すか考えよう!」


 落ち着きを取り戻し、改めてあのデュラハンを倒す方法を考える。どうやら今晩は攻めてくることはなさそうだ。来るなら明日の夜だろう。それまでになにか策を思いつかないと……。


「敵を倒すには敵についてよく知らなければな。まずは相手について教えてくれ」


 ギルドの職員に、詳しい敵の情報を尋ねる。


「今攻めてきている魔王幹部は、『焦土のバラモンド』という通り名を持つデュラハンです。その二つ名の通り、バラモンドは攻め滅ぼした村で生物を皆殺しにし、更にその死体を操り兵力にし次の町へ進み次々と滅ぼしていく危険なモンスターです。奴が通った後には植物しか残らないといわれています」


 聞けば聞くほど恐ろしい奴だ。冒険者達が奴の名を聞いて青ざめた理由がわかった。俺はさっき思いっきり『花鳥風月』を浴びせてやったんだが、よく生きて帰れたもんだ。


「災害みたいな奴だな。国はなんでそんな奴を野放しにしてるんだ? 真っ先に倒しとけよ!」

「バラモンドは散々暴れまわった後、形勢不利となるとアンデッドの部下だけ残して自分だけ魔王城に帰ってしまいます。このためいくら王家の騎士団が追いかけても逃してしまうんです」


 部下だけ置き去りにして行くとは、なんて卑劣な奴だ。真っ先に町を逃げ出そうとした俺が言うのもなんだが。

 だが中々合理的ではあると思う。アンデッドであるという利点を生かしている。

 うーん。

 とりあえず思いつくのは……。


「兵力で負けてるんだ。それならやることは一つしかない。奇襲だ。堂々と戦ったところで敗北は見えている」


 それしかない。はっきりと告げた。

 

「アンデッドの軍隊を引き連れているということは、今度もまた同じように夜襲を仕掛けてくるだろう。だが逆に言えば昼間に攻撃をすることはない。昼間にこちらから奇襲をし、敵の戦力を減らすのだ。敵は今どこにいる?」

「バラモンドはどうやらアンナ家の居城を根城にしているようです。


 ギルドの答えに。


「新しい領主になったつもりか? だが少し勝機が見えたぞ。奴は大きな失敗を犯した」

「本当かマサキ!?」


 俺がうなずくと、冒険者達の表情が少し明るくなった。絶望的な状況に希望の光が見えた。


「ああ、あの城は元々アンナ家が所有していたものだ。貴族の城というのは大体、避難用に使う緊急通路があるはずだ。ベルディアならそれを知っているはず。城の地図を持って来い!」


 城の見取り図を持ってこさせ、ベルディアや騎士団の生き残りに話を聞き、地図を完成させた。


「愚かだなバラモンド。敵の城を拠点にするとはな。たった一日で場内の把握は出来まい。隠し通路ならなおさらだ。昼間に速やかに進入し、我が物顔で歩くアンデッドどもを一匹一匹潰していく」


 俺の考えを述べると。


「なるほど、隠し通路には気付かないだろう。俺だって知らないし」

「このままバラモンドを暗殺すれば……。奴らは幹部を失って散り散りになるかも!」

「いや、バラモンドはかなりの強敵だ。奇襲をしても勝てるとは思わない」


 冒険者達の淡い期待に、首を振って反論した。


「いいか、一番の目標はゾンビメーカーだ! 他のモンスターは後回し! ゾンビメーカーさえ倒せば、敵は兵力の補充が出来なくなる! 奴らを重点的に始末しろ! 危なくなったら逃げろ! いいな! 決して死ぬんじゃないぞ!」


 この町でも腕利きの冒険者達、そしてプリーストを選抜し、少数チームで昼間に奇襲をかけることにした。彼らに作戦の概要を説明する。


「この作戦は危険が伴う。ひょっとすれば命を落とす者もいるかもしれん。だが絶対に帰還しろ! 命令だ。もし死んだ奴がいれば、死体ごと持ち帰ってもらう! それが無理ならその場で燃やせ! わかったな」

「死体ごとかー。結構無茶言うなあ」

「死んだら燃やされるのか……。絶対に死ぬわけにはいかないな」


 ゴクリと唾を飲む精鋭たち。


「マサキ、俺たちは何もしなくてもいいのか?」

「そうだ! 俺たちだってやれる!」


 選ばれなかった多数の冒険者が騒ぐ。


「いいか、敵は死体を仲間にするような人でなしだ。もしお前達が死ねば、それがそのまま向こうの戦力に加わるんだぞ? 足手まといは必要ない」


 きっぱり却下すると。


「足手まといとは言ってくれるじゃねえか」

「なんならこの場で俺様の力をみせてやろうか!」


 ムキムキの冒険者が睨みつけてくる。


「お前達が選ばれなかったのには理由がある。今回の作戦は奪われた城に素早く侵入、危険な敵を排除し、さらに相手が気付く前に脱出だ。スピードが足りないものはいらない。それにお前達の役目は別にある。夜攻めてくるだろうバラモンドの本隊に対抗するのだ。それまで今は休め。ああ、城壁から攻撃できるように、岩や矢を集めておいてくれ」

「なるほど、そういうことか!」

「俺様が選ばれなかったのも合点がいったぜ!」


 冒険者のマッチョ集団は俺の説明に納得し、夜戦に備えて準備を始めた。




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 次の日。太陽が眩しく照りつける朝に、俺達は奇襲作戦を開始する。この強い日差しは魔王幹部にとっては関係ないだろうが、引き連れた他のアンデッドには辛いだろう。


「隠し入り口はここだな。案内ご苦労」


 騎士団の生き残り達に詳しい場所を聞く。どうやらベルディアがあのデュラハンと戦っている間に、彼らは主君を守り、ここから脱出してきたらしい。


「隊長のぶんも、お願いしますマサキ殿!」

「仲間の仇を取ってください!」


 ベルディアが敵のボスを引き付けていたとはいえ、彼らも無傷とは言えなかったようで、体中にまだ新しい傷跡が残っている。


「ああ、お前達はよくやった。俺たちに任せて休んでいてくれ。本番は夜だ」


 そうして騎士たちを帰らせる。

 騎士たちがアンデッドの集団から逃げた出口から、今度は逆に攻撃を加えようというのだ。まさか脱出用の通路が、戦闘の足がかりになるとは。


「打ち合わせどおり行くぞ。みな四人パーティで行動しろ。そしてとにかく雑魚を無視し、ゾンビメーカーを始末する。第二目標はアンデッドナイト。ただのゾンビやスケルトンに構うな」


 部隊を俺達、コーディ達、その他精鋭と四人ずつで分けた。コーディも了解し、共に城内に侵入する。そしてそれぞれに別れ、それぞれの仕事をこなす。


「マサキ、実はですね。アンデッドというのは生命力を目印にやってくるのですわ。つまりいくら隠れていても無意味ですわ。いずれは見つかることになります」

「そうだったのか。ならスピードが命だな。相手もすぐに気付くだろうが、とにかく走り続けるぞ。素早く敵を排除し、反撃を食らう前に撤退だ!」


 マリンの忠告を聞き、改めてヒットアンドアウェイの重要さを再確認する。

 こうしてすみやかに城に潜入した。



「おい? なんだか人間の気配がしねえか?」

「そんな馬鹿な!? 人間共は町で震え上がっているはずだぜ?」


 城内を我が物顔で歩いているゾンビたち。すっかり新しい住人気取りだ。


「お前も感じるだろ? なんか生き物がいるぜ?」

「ああ? そういえば……? どっかから野良モンスターでも入り込んだんじゃねえか?」


 喋りながら歩いているゾンビたちに。


「よっ!」


 俺は物陰から出てあいさつをした。


「ああっ!? 人間!? なんでこの城にいるんだ?」

「まだ生き残りがいたのか? おかしいな? まぁいい! この場で――」

『ターンアンデッド』


 俺に何か言おうとしたが、すかさずマリンの浄化魔法を食らい、消滅するゾンビたち。


「よくやったマリン。この調子で進むぞ。雑魚には構ってられん」


 灰になったゾンビを見て、先を急いだ。


「人間の気配だ! 人間がいる!」

「おいおい気のせいだろ? お前はまだゾンビに成り立てだから、気を読むのが向いてないだけで――」

『ターンアンデッド』

「「ぎゃあああ――」」


 こうして次々とアンデッドを浄化していく。だが結果には不満足だった。


「なあマリン。さっきからゾンビの遭遇率がおかしくないか? いくら魔王軍が大軍だからといって、なんでこんなにわらわら出てくるんだ? この広い城内で。まるで俺に引き寄せられてるみたいなんだが?」


 たいしたことない雑魚とはいえ、こんなに出てくると流石にうんざりする。


「それはですねマサキ。私のようなアクシズ教徒には、アンデッドに好かれやすくなるという特典があってですね」

「お前のせいかよ!」


 マリンの肩を揺らした。


「そういうのは先に言っとけ! っていうかなんだその特典! 迷惑きわまりねえわ!」

「偉大なアクア様の神のオーラが、きっと迷えるアンデッドの道しるべとなるのですわ」


 マリンと口論している間にも。


「なんかあの辺に人間の気配しない?」

「うんするするー」

「気のせいだと思うけど見に行こうぜ?」


 ゾンビがまたしてもやってくる。


「またきやがった! くそっ! めんどくさ!」

『ファイアーボール!』

「ぎゃあああ!」


 今度はレイがアンデッドたちを吹き飛ばした。


「おい! 今の音はなんだ!」

「侵入者か!? 侵入者がいるぞ!!」


 レイの魔法の音が轟き、昼間に眠っていたアンデッドたちも飛び起きた。扉を開けて出てくるゾンビたち。


「もうこっそりは無理なようだな。こうなったら暴れるだけ暴れて、とっとと逃げるぞ!」


 アンデッドたちに追われながら、城内を橋って逃げる。


『ターンアンデッド』

『ライト・オブ・セーバー』 

「死ねえ!」


 三人とも邪魔するものを吹き飛ばし、ただ走り続ける。


「おい! マリン! お前アンデッドを引きつけて置いてそれだけかよ! なんか変わりにいいことないの?」


 走りながらマリンに怒鳴り散らすが。


「まぁ向こうもこっちの気配が丸わかりですが……逆にですね、私も強いアンデッドの気配を感じ取ることが出来ます」

「そんな便利な能力があるんなら先に言えよ! 『バインド』」


 マリンに怒りつつ、目の前の敵を無力化する。すぐにアルタリアの剣が振り下ろされ、真っ二つになるゾンビ。


「強いアンデッドはどこにいる!? 教えろマリン!」

「そうですわね。この城の頂上で凄まじい力を感じますが。おそらくバラモンドでしょう」


 マリンの答えに。


「あいつは放置でいい! 他には?」

「あっちからまぁそれなりの力を感じますね」


 指を刺すマリン。


「よし、おそらくゾンビメーカーか、アンデッドナイトだろう。とっとと始末するぞ!」


 マリンの示す先に向かうと、彼女の言うとおりそこにはアンデッドナイトが立っていた。


「侵入者め。バラモンド様の手にした城でこれ以上の狼藉はさせんぞ」

『ターンアンデッド』

「ふっふっふ! この俺もバラモンド様同様、光属性を吸収する鎧でできている。浄化魔法など――」


 そこまで言ったところで、背後から忍び寄るアルタリアに首を落とされた。


「フン! どりゃああ!」


 アンデッドナイトは何が起きたかもわからないまま、アルタリアのキックコンボを食らい壁にめり込んでいた。


「チッ、アンデッドナイトか。ハズレだな」


 残骸を見てぼやいていると。


「ひゃっはー私は楽しかったぜ?」


 ニコニコしているアルタリア。


「そりゃあな、俺としてはゾンビメーカーが目当てだったんだが……」


 アルタリアと話していると、気付けば回りをアンデッドたちに囲まれていた。


「よくも我らの同胞を!」

「この場で殺してやる!」


 怒り心頭のバラモンド軍。雑魚のゾンビだけでなくアンデッドナイトも集まってきた。俺達は四人で円陣を組んで警戒する。


「アンデッドは私の敵ではありません」

「マサキ様! 着ましたよ! いつでも魔法の準備は出来ています」

「このスリル、たまんねえなあ!」


 三人ともやる気満々だったが。


「待て! お前達。まずアンデッドナイトはどうやら浄化魔法が効かない様だ。マリン、無駄撃ちはするなよ」

「そのようですね」


 はやる三人を止める。


「アルタリア、アンデッドナイトはお前に任せる。奴らがパニックになったときを狙うんだ。それまで動くな」

「パニックっていつだよ?」


 アルタリアにも指示を出す。


「すぐにわかる。そしてレイ。使うなら炸裂魔法だ。そして目標はモンスターではない。壁を破壊しろ!」

「えっ? マサキ様! 貴重な魔力をそんなことに使うなんて! それではこのアンデッドたちの群れを倒せませんよ?」


 疑問を浮かべるレイだが。


「いいからやれ。俺を信じろ!」

「はい!」


 即答し、すぐさま壁をぶっ壊した。


「はっはっは、貴様らどこを狙っている!?」


 馬鹿にするアンデッドナイト。しかし。


「うわああ!! 日光だ!!」

「眩しい!! 何も見えない!」

「か、体が消えるうう!!」


 ゾンビたちは大慌てになった。上級モンスター、アンデッドナイトにとって日光など効かなくても、それ以外、この場にいる大多数の下級モンスターには効果は抜群だ。


「し、しまった! お前達! 暴れるな!」

「早く木陰に隠れろ!」


 日に照らされ混乱するゾンビたちを何とか誘導するアンデッドナイトたちに。


「ひゃっはー! 死ねええ!!」

 アルタリアの魔の手が襲い掛かる。


『ターンアンデッド!』


 逃げ惑うゾンビの背中に、マリンの浄化魔法が突き刺さり。


『炸裂魔法』『炸裂魔法』


 ようやく日陰に逃げ込んだゾンビたちに、更に壁を破壊して遮る物を破壊するレイ。


「うわあああああ!!!」

「ぎゃあああああ!!」

「や、やめろお!! 体が消えるうう!!!」


 大パニックのゾンビたち。それに巻き込まれてアンデッドナイトも混乱する。


「クソッ! 貴様ら邪魔だ! とっととどっかいけ! がはっ!」

「しゃあああああ!!!」


 体勢を崩したアンデッドナイトはアルタリアが始末していく。


「全員戻れ! いったん逃げるぞ! 部屋に隠れろ! 下がれ!」

「ば、馬鹿な! 相手はたった四人だというのに! なんでこんなことに!」


 やられ放題のアンデッド軍。

 どうしてこんなことになったのだろうか。理由は色々とある。

 まずはバラモンドの軍勢の特徴がある。奴は精鋭のアンデッドナイト以外は、弱いアンデッドを大量に使っている。もし真正面から戦えば脅威になっただろうが、一体一体はたいしたことはない。

 またバラモンドは光属性を防ぐ鎧を、自分の直轄であるアンデッド以外には渡していない。兵を現地で調達するため仕方がないが。ゾンビたちは浄化魔法や日光に無防備だ。

 さらに今が昼間だというのにも関係がある。室内なら日光を防げるが、家を破壊されるとどうしようもない。

 これらの条件が重なり、俺の奇襲は大成功したというのだ。



 だが伊達に魔王幹部の軍勢ではない。散々ボロボロにされた後とはいえ、なんとか体勢を立て直し、ゾンビ共を下がらせアンデッドナイトだけの部隊を再編し俺たちを追い詰めてきた。


「はぁ、はぁ、てこずらせやがって!」

「よくもここまでコケにしてくれちゃってさあ!」

「お前達、絶対に生きては返さないからな!」


 ボロボロに壊れた城の一角に、俺たち四人は追い詰められていた。マリンもレイも魔力が限界だ。アルタリアも相手が多数だと役に立たない。こうなったら。


『クリエイトウォーター』

「ひっ! てめえなにしやがる!」

「くっ、この期に及んで悪あがきを!」


 俺も『バインド』の使いすぎで魔力がなくなったため、初級魔法で嫌がらせをした。必死で避けるアンデッドナイトたち。なんでだ? ただの水だぞ?


「うん、もう十分やったし、そろそろ逃げるか」


 それはともかく、そろそろ撤退と行くか。


「逃がすわけねえだろ! ぶっ殺してやる!」

「お前らだけは! お前らだけは絶対に殺す!」


 相当頭にきているアンデッドナイトたち。ジリジリと迫りよってくる。


「レイ、はいこれ」

「あ、はい。マサキ様」

 レイに渡したのは高純度のマナタイトだった。魔力を回復したレイはすぐさま呪文を唱え――


『テレポート』


「あああああ!! くっそう! くっそう!」

「ゆるさねええ! お前達はなにがあってもぶっ殺してやるからな!」


 この場から立ち去る最中、悔しげに地団太を踏むアンデッドナイトたちが見えた。俺達の奇襲はゾンビメーカーの退治こそ失敗したものの、それなりの成果を上げたのだった。






「帰ったぞ!」


 テレポートで無事帰還し、冒険者ギルドへと戻った。


「おお! マサキ! よく帰ったな! どうだった? 上手く言ったか?」

「まぁそこそこかな? ゾンビメーカーは倒せなかったけどな。他のモンスターはボコボコにしてやったぜ」


 冒険者達に結果を報告する。


「ゾンビたちを次々と浄化しましたわ! これがアクア様の力です! オーホホホホ! いえプークスクス! ップークスクスですわ!」

「あの城はボコボコに破壊しておきました。これであいつらも思い知ったでしょう!」

「この剣でアンデッドナイト共を次々と切り裂いてやったぜ! ああ楽しかった! 最高だった!」


 仲間たちが戦果を話している。 


「おお! 本当か! さすが最悪のパーティーだぜ!」

「お前達が敵じゃなくて本当によかったよ!」

「外道四人組といわれるだけの事はあったな!」


 不可能だと思われていた、バラモンドの部隊に打撃を与えたと聞き、喜ぶ冒険者達。

 俺達がわいわいと盛り上がっていると、次にコーディの部隊も帰還した。


「おいコーディ! お前達も帰ったか!」

「どうだ! お前らも活躍したか!? マサキたちはバラモンドの部隊をボコボコにしたらしいぜ?」


 詰め寄る冒険者達に。


「あ、ああ。なんか俺達はな……。なんていうか……」

「そ、そうだな。うーんとなあ」


 少し困った顔をするコーディ達。 

 その顔をみて少し表情を曇らせる冒険者達に。


「城に潜入してると、いきなりアンデッドたちがすごい勢いで飛び出してきたんだ。だからもう俺達は絶体絶命かと、そう思っていたんだが……」

「私らには目もくれずに、全然別の方向に走っていって……そっちで大きな炸裂音が鳴り響いてて」

「誰もいなくなった通路を探してたら、たまたまゾンビメーカーたちの控え室を発見してだな。そこで倒してきた。なんだかな、全然苦労しなかったから、なんか恥ずかしくて……」


 そういうコーディたちの鎧をみると、無傷だった。おそらく戦闘らしい戦闘はなかったのだろう。アンデッドたちは暴れまくった俺達のほうに向かい、コーディの方には全く気付かなかったようだ。


「さすがはコーディ! やるじゃねえか!」

「やったぜ! これでもう死体を奪われることがなくなった!」

「流石ナンバーワンの部隊! コーディ万歳!」


 さっきまで俺達を崇めていた冒険者たちは、すぐにコーディに切り替えた。くっそすぐに掌を返しやがって!


「ゴホン、どうやら俺の陽動作戦が上手くいったようだな。俺達が暴れている間に、コーディが目標を駆逐する。二つの部隊のチームワークの勝利だな」


 コーディの肩を叩き、うんうんと頷く。


「あれえー、そうだったっけ? そういう作戦だったっけ? ただそれぞれバラバラにゾンビメーカーを倒すんじゃなかったっけ?」


 首を傾げるコーディ。


「いいかお前達! まだ勝利が決まったわけじゃない! これから夜になる! 奇襲に激怒したバラモンドは間違いなく夜戦を仕掛けてくるだろう! ここで耐えられなければ無意味だぞ! いいな!」


 浮ついた冒険者達に一喝し、これから始まる夜戦に備えるように叫んだ。

 

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