紙でできた本は好きですか?

ageha

電子化

「更新されたって本当?」

「そうそう。今朝ね」

「そうだった?通信制限来てて家じゃ無きゃ読めないんだよね」

同じクラスの同級生が話している本の話はいつも電子媒体の。中学の頃は雑誌の話をしているときは紙媒体しか読まなくても話せていたけど、高校に入ると同時くらいで雑誌でさえ電子化されてる。

「うーんとね」

「あっネタバレ厳禁だからね」

「えーそれ難しくない?」

本を読むために毎日始業の時間より大幅に早く学校に来ている私はいろんな話を毎朝聞く。彼女たちの間では更新が不定期な電子書籍がブームらしくて毎朝更新した?と話している。

「おはよ、ゆず」

「お、おはようございます」

「そろそろため口になってもいいんじゃ無い?」

「ご、ごめん。四季くん」

毎日遅刻ぎりぎりに来ては、私に声をかけてくれる彼はきっとアッチ側の人間だと思ってた。けど、最近になって彼もこっち側の人間だって知った。紙を愛する人間。

ガラッ

「お前ら早く座れ。本もしまえよ」

この先生のことはどうあっても好きになれそうに無い。数学の教師で、前々から苦手だったから担任になった時は頭が痛くなった。だって、この人は根っからのアッチ側の人間で電子書籍のことを当たり前のように本と言う。

「柏木、お前もそれしまえ」

それ、か。これこそ本物の本なんですよ、先生。


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