幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ
黒陽 光
第一章『戦う少年少女たちの儚き青春』
Int.01:宿命の日、出逢いの朝
案内された訓練生寮の203号室。そこに
――――そこには、一糸纏わぬ姿で立つ、一人の美しき少女が居た。
「………」
腰まで届く、それ自体が一つの工芸品のように澄んだ藍色の長い髪に、正に大和撫子といった具合の整いすぎた顔立ち。金色に光る彼女の双眸は、何が起こったかいまいちよく分かっていないような風に、一真の方へじっと向けられている。出る所は出て、締まるところはきゅっと締まる起伏の大きい白い肌の肢体に、一真は釘付けになったまま動けなくなっていた。
――――美しい。
やましい感情を抱く余地すら与えられない程、目の前の少女は美しかった。背中の窓から差し込むカーテン越しの淡い日差しがコントラストになっていて、それが余計に強調されている。
だが、問題がただ一つだけある。何故彼女がこの203号室に居て、しかもこんなあられもない姿を晒しているのか――――。
部屋を間違えてしまったのかと真っ先に考えた。だが寮の管理人から渡された鍵でしっかり解錠してから入ってきている以上、それは考えにくい。
(なら、一体全体どういうことだ?)
考えても考えても、理由なんて思い浮かばない。ただ自分がここに居て、目の前に一糸纏わぬ姿で彼女が立つ。ただそれだけの事実が、目の前にあるだけだ。
「……悪い、邪魔をした」
ともかく、ここは一旦撤退するのが最善策と判断した一真は、とにかく一言詫びてさっさと退出しようと試みる。
「っ――――」
しかし、少女の顔はみるみる内に赤くなり。引き攣った声が彼女の口から漏れ聞こえてくると、一真は全てが遅すぎたのだと知る。
「ふ、不埒者ぉ――――っ!!!」
悲鳴と怒りを入り交じらせた少女の悲鳴が天を衝く。……そこまでは、ある意味でお約束通りの展開だった。
「こっ、こここの変質者が! 私が成敗してくれるっ!」
だが、おかしなことになったのはここからだ。
顔を真っ赤にした少女は、何故かベッドの傍らに立てかけてあった日本刀――江戸時代
「ま、待て! 俺が悪かった! 悪かったけど、やめろ! 死ぬ! 死ぬって!」
「問答無用っ!!」
振り下ろされた白刃が、目の前にまで迫ってくる。
斯くして、京都士官学校に於ける一真の生活は、こんな妙な形で幕を開けた。
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