カクヨム異聞選集 ~七日七晩の子守歌~

雪車町地蔵@カクヨムコン9特別賞受賞

七日七晩の子守歌

第零夜

お話の前に、そっと蝋燭へ火を灯して

 多くの怪談の場合、実体験なのだけどという枕詞は、友達の友達から聞いたというフレーズより、忌避される傾向にあります。

 胡散臭さが増すことと、正直聞き飽きたという思いが、混然一体となるから……だとされています。

 とはいえ、このコンテストはそういう趣旨なのですから、私は臆面もなく、使わせて戴こうと、そう考えている次第です。


 さて、前もってひとつだけ、明文化して置くことがございまして。

 私には、いわゆる霊感と呼ばれる類のものは皆無だということです。

 いうなれば、感といったぐあいでしょうか。

 それでは、いったいどんな恐怖体験があるのかといえば、次のようなものに相成ります。

 伝聞、体験談、怪談ガタリ。

 今宵より、七日七晩お付き合い願えれば恐悦至極。

 寝物語にでも、お読みくださいませ。

 それでは、蝋燭ろうそくに火を灯しながら。

 最初のお話を、さっそく語らせて戴きます。

 あれは確か、大学時代の──

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