聖域の日常(おまけのお話)

第1話 聖獣会議

【まえがき】

 お久しぶりです。コイルです!

 あれから1年たって、僕も17歳になりました。

 薬草の森はダンジョンから聖域になりましたが、みんなは相変わらずです。

 ……

 随分前に完結したこのお話ですが、いまだに読んでくださる方がいるのは本当に嬉しいものです。へたくそな文章なんですけど、楽しそうに書いてるなあ←私(笑)

 久しぶりに続き書いてみない?ってそそのかされて、重い腰を上げて書き始めることにしました。そんなに長い話にはならないと思います。ちょっとだけお付き合いください。

 よろしくお願いします。

 不定期連載(目標は2日に1話)


 ――――――――



 今日も朝から、デルフ村に明るい声が響く。


「じゃあね。行ってきまーす」

「気を付けて行くのだぞ」

「はーい」

「おぎゃあーおぎゃあー」


 元気に泣き声をあげているのは、エリカの二人めの赤ちゃんのミズキだ。


 リーファンとエリカの二人がコイルの家に居候し始めてから、もう一年以上になる。最初の子供のサツキを生んだのは、ちょうど薬草の森ダンジョンが聖域になった騒ぎの頃だ。あの時はすっごく忙しくて、コイルもバタバタ過ごしていた。エリカとリーファンも赤ちゃんを育てるのにてんやわんやで、引っ越しどころではなく……。気がつけばリーファンたち一家もコイルの家に住むのが当たり前のようになっていた。

 聖獣たちも代わる代わるやってきては騒いでいるし、家の中に人があふれかえっているのが普通だからかもしれない。


 そんなこんなで今も一緒に住んでいるエリカに見送られて、コイルは薬草と脳筋達の森へと出かけた。

 今日は聖獣たちの会議があるのだ。


 デルフの木の家の階段を降りると、庭ではポックルが待っている。


「ひひん」

「おまたせー。じゃあ行こうか!」

「ひひーん」


 ポックルと並んで、のんびり歩いて森に向かう。入口には冒険者ギルドの受付があって、顔見知りの職員が座っていた。


「やあコイルくん、今日は散歩かい?」

「うん」

「気を付けて行くんだよ」


 もう子供じゃないんだけどな。

 冒険者になって家を出てから二年、コイルは17歳になっていた。

 大人の男なのだ。童顔だから分からないかもしれないけど。


 職員さんに笑って手を振り、聖域の奥へ向かう。

 ダンジョンが聖域になってから、ここを訪れる顔ぶれはかなり変わった。というか、来る人が増えた。第二層までは冒険者以外の人や家族連れも多い。

 一方聖獣たちの暮らしは、魔獣だった頃とさほど違わない。毎日聖域にやってくる人たちをからかったり遊んだり、そして脳筋たちと力比べをしてみたり。

 コイルはそんな森の様子を見るのが好きで、よくこうして歩いて登っている。


 広大な薬草と脳筋達の森は、普通に進めば第四層まで丸一日かかるほどだが、そこは聖域の管理者マスターたるコイルだ。普通は通れなくなっている場所をするすると抜ければ、数時間で第六層まで行ける。

 今日は午後からここで会議があるのだ。

 定期的に開かれる聖獣会議では、森の中の出来事が報告される。コイルもまた、デルフ村や岡山村で聞いた面白い話があれば、披露することもある。


「それでは定例会議を始めます」


 議事進行は無表情な黒髪の女性、フェイスさんだ。聖獣の顔触れは毎回違うが、今日はフェン、秋瞑、マイ、龍王の4人でちょっと少なめ。

 普段だったら秋瞑が大事なことをちゃっちゃと報告してくれて、その後は雑談になるんだけど、今日はどうも様子が違う。


「実は……マスターに相談があるんだ」


 そう言いだしたのは、鬼熊からヒバゴンになったマイだった。

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