第10話 お土産で宴会
「まずはこれ、棟梁さんと皆さんに」
新築の木のにおいがする家に入って、まずミノルが取り出したのは、酒樽だった。
「街道が少し通りやすくなったから、今はロゼからの荷物が買いやすい。あそこのワインは美味いからな」
早速コップを持って来て、床の上で酒盛りが始まる。
ワインは辛口の白ワイン。つまみに薄く切った干し肉とコイルが摘んできたキイチゴが皿に山盛りになって出された。
「コイルには、これだ」
「ありがとう!……ん?これって何?」
それは魔動のこぎりにセットして使う板切断ガイドだった。
どうしても板状に切れないコイルにと、道具屋を物色して見つけてきたらしい。
「コイルのノコギリってミレイの最新型ですよね?へえ、このガイドも使えるんだ」
「ああ。角度を変えると、好きな厚さの板が作れる。道具屋で練習させてもらったから、使い方は教えられるぞ」
ミレイはドリルやノコギリなどの木工用の魔道具で有名なメーカーだ
レイガンはミノルが買ってきたガイドに興味津々で、早速コイルのノコギリを取ってきて、ガイドをネジで留めた。
「ふ、ふふ、ふふふふっ」
「コ、コイル?」
「ああ、大丈夫だ。コイルはノコギリを持つと少し興奮するだけだ」
「切るよ!明日は切って切ってきりまくるぜえ」
ゴンッ!
「痛てっ!あれ?どうしたの、みんな?」
「な。こうすればスイッチが切れる」
「昭和家電みたいだな」
……棟梁のジョークは声が小さすぎて誰にも拾い上げられなかった。
「あとは、食料品と、魔石と、魔道具をいくつかだ」
「色々ありがとう、ミノルさん」
「ほう、良い魔石だな」
「魔道具も増えてきたからな。替えの魔石が必要になるだろう」
「あ、これ食べたい!なあなあ、開けようぜ」
「……ケンジ、少しは遠慮してください。恥ずかしいですよ」
いいよ、開けよう。皆で食べると美味しいからね。
宴会もお開きになって、それぞれベッドに横になった。まあ、広いリビングの一角にまとめて置いてあるベッドは、雑魚寝と変わらない雰囲気だったが。
コイルの足元にはルフ。
「わふん(マスター・コイル。本日もダンジョンは順調です。おやすみなさい)」
「ん、おやすみー」
開けっ放しの窓から入ってくる風は、少し海の匂いがした。
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