第2話
金色ツインテ女子は両サイドのフィギュアを不審そうに眺めながらさらに奥に行くと、そこにはガラスの棚に収納されたフィギュアが天使、悪魔それぞれ一体ずつ飾ってあった。いずれもセレブのダンスパーティーにでも出るような豪奢なドレスを身に纏っていた。
「これって、値札が付いてないわ。考えるだけで恐ろしいわ。」
ひどく俗っぽい発言を残して、元の道を戻る金色ツインテ女子。
降り口の階段の先の窓側に一メートル四方の薄汚れたワゴンがあった。
金色ツインテ女子は階段を下りずに、なぜかワゴンの方に向かった。
(・・・こっち)
「何?空耳かしら?小さな声が聞こえたような気がしたわ。この異常空間で、鼓膜がウイルスに感染したのかしら?」
自分の感性に真っ正直な金色ツインテ女子は耳を欹てた。
(・・・こっちに来てくれ)
「こ、今度ははっきり聞こえたわ。ここはお化け屋敷だったのね。」
(お化けじゃねえ!)
「誰かいるの?すごく耳障りで、雑で粗野な声だけど。」
(うるさいな。口の悪い女だ。)
「ちょっと、どこから声出してるのよ。ま、まさか特殊ローアングル超専門写真小僧じゃないでしょうね?」
(そんな専門小僧いるか!いや、いるかもしれないが。そんなことより、その悪意に満ち満ちた眼(まなこ)をこっちに向けろ。)
「ネットのコメントを音声化したような魅力のない主はどこよ?」
(取説でも必要そうだな。って、そういうことじゃなく、ワゴンの中をよく見ろ!)
ワゴンサービス。そこには、売れ残ったか、新製品が出て型落ちしたか、キズモノ、とくにデザインが悪く不人気なものなど、廃棄処分寸前のフィギュアがゴミのように重ねて置かれていた。
金色ツインテ女子はワゴンの中のひとつのフィギュアを見ていた。頬に小さな汚れのついた天使のフィギュア。白い羽根は二本揃っているが、人気のないのは当然である。上半身ハダカの男子で、眇めた目つき。さらに決定的だったのは、穿いている下着がブリーフであった。これを買う人類はかなり特殊なシュミの者に限定される。
「なにこれ!こんな不気味で不良品のどこが売り物なのよ。こういう店に素人なアタシでも、これがダメっていうのはわかるわよ。」
ワゴンのいちばん上で寝転がっていた不気味天使フィギュア。動きはしないものの、金色ツインテ女子にガンを飛ばした、・・・ように見えた。
(オレを掴むんだ!)
「どうして人形が喋ってるのよ。それより、全体的にキモ過ぎるわ。病原菌が移るどころか、汚物を握りしめる気分だわ。オゾン脱臭してよ!」
(ここはトイレじゃねえ。四の五の言わずに、オレを掴め!バーゲン品の掴み取りだぁ!)
不気味フィギュアの言葉は大きくはなかったが、なぜか金色ツインテ女子の脳幹に到達したのか、女子の瞳は色を失い、ギミックな動きで、フィギュアを手に取った。
その瞬間、眩いばかりの白い光が四方八方に拡散して、フロア全体が真っ白になり、数分間時間が止まった。
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