菓子

「ごめん、遅れちゃった」

「5分も待たされたわ」

「……なにそれ? 普通待ち合わせしてた女子にそんなことを言う?」


 なんなんだよ……前に俺が遅れたときお前がやってたことじゃんか……。


「なにその顔? なんか文句あるの?」

「ないです、はい。生意気言ってすいませんでした」

「う......わ、わかれば良いのよ、わかれば」


 なにひとつわかってないが、黙っていればなにも言われないだろう。


「それで、こんなところに呼び出してどうしたんだ?」

「あ、そうそう。これ、アンタに」

「あ゛? クッキー? 誰からだ? 彩が作ったのか?」

「はあ? そんなわけないでしょ。アタシのクラスメイトよ。今日家庭科の実習で作って、それでアンタに渡してくれって押し付けられたの」

「クッキーとかもう見るだけでお腹いっぱいになんだけど...」

「は? なに? もしかしてアンタ他の子からも貰ってるの? 誰からよ?」


 急に目がマジになったな。怖い。


「マッキーとか、洋とかからだよ。俺のクラスも家庭科の実習があったんだけど、あいつら自信満々に作り始めたくせに下手くそでさ」

「あ、なんだ、そう言うことね...」

「そうそう。それで生焼けのクッキー押し付けてきたんだよ。しかも道連れついでに俺のクッキー全部食いやがってさ」


 思い出したらまた腹が立ってきた。今度なんか仕返ししてやる。


「あはは……じゃあ、これは口直しかしら?」

「いや、しばらくクッキーはいい。一応貰っておくけどな」

「あ、うん……はい。……ちゃんと渡したわよ」

「それよりなんか食べようぜ。さっぱりしたやつ」

「そばとかうどんかしら?」

「あー……」


 なんか違う気がする……。もっと野菜を食べたい感じの……でも麺類。


「そうだな、冷やし中華で良いか?」

「私は別になんでも構わないわよ」

「なら早く行こうぜ。日陰ん中でも暑いんだ」

「そうね。……ちょっと、歩くの早いわよ」


 知らねーよ。普通に歩いてるだけだっつーの。


「あーもう、少しは気遣い出来ないわけ!?」

「今更必要ねえだろ」

「な、なによそれ!? ズルいわよ!」


 なんの話だよ。

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