第12話 ラスティン10歳(婚約)
アルミ合金大量生産の前準備として、まず魔法学園ではガストンさんにお願いして、一人でも多くの抽出(イクストラクト)と結合(コンポーズ)の使い手を養成してもらうことにしました。
魔法兵団の土メイジたちには、毎日元素変換(コンバージョン)を練習させ、元素変換(コンバージョン)の効率を少しでも高めてもらう事にしました。
成形(フォーム)の練習も忘れてはいけませんね。
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平民メイジ招集計画ですが、各地の領主にジュラルミン盾とチタン剣を渡す替わりに領内の平民メイジをレーネンベルク領へ移住する許可を出して貰えないかと交渉を持ちかけた所、ほとんどの領主がこれを喜んで了承してくれました。
平民メイジ達を領地の財産と考えている僕に、とって彼らが容易に提案に乗ってくることが信じられませんでした。
このことを、魔法兵団長のマティアスに尋ねてみると、
「基本的に貴族の方々は平民メイジを厄介者と思っていますからね。それに領民が移住することを禁止する法律などがある訳でもないですし。魔法兵団の国内での評判も上々ですから、勝手に出て行かれる位なら貰えるものなら貰っておけという心理なのではないでしょうか?」
という返答が返ってきた。試しに、
「トリステイン王国の国民が他国へ移住したり、他国の国民がトリステイン王国に移住することは可能なの?」
と尋ねてみると、
「国境警備はザルですからね、街道でもきちんと入国税を払えば入出国は自由ですし、街道を通らなければそれこそ規制をかけることさえ出来ませんからね」
とこれまた軽い返答が返ってきました。
他国の平民メイジを雇うというのもいいかもしれません。現在は国内の平民メイジの力を一つに纏める事の方が優先ですが、将来的にはハルケギニア中の平民メイジの力を纏めて、大きな事業などやる計画を立てる事もあるかもしれません。
おっと思考が横道に逸れてしまいましたね。今は、国内の平民メイジを集める事を重点に考えて行きましょう。
募集するメイジの最低条件は錬金が出来ることですね、あとは人格面が信用出来ることも大事ですね。ごろつきの集団を団員にしたくはないですからね。錬金の腕前以外にも、人格面を試す試験?見たいな物を追加したほうが良いのかもしれません。
何か良いアイデアが浮かぶと良いのですが。
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魔法宝石(マジックジュエル)に関しては、まず上質と評価を受けた水晶を売り出そうと思います。
無色透明の水晶だけでは、あまり流行りそうもないので、無色透明の水晶に色々な元素を結合(コンポーズ)させてみました。
・鉄で紫水晶(アメシスト)、黄水晶(シトリン)
・マンガンで紅水晶(ローズクォーツ)
・アルミニウムで煙水晶(スモーキークォーツ)、黒水晶(モリオン)
・銅で緑水晶(グリーンクォーツ)
・チタンで青水晶(ブルークォーツ)
と色々なバリエーションを作り出しました。
販売に関してですが、ローレンツ商会の力を借りずに貴族同士の口コミで販売経路を広げることにしました。
手段としてはまず母上に、銀の台座に大き目のアメシストをあしらったブローチを付けて、色々な夜会や舞踏会に参加していただき、ブローチについて聞かれたらさりげなく僕の名前を出してくれるようにお願いしました。
母上の銀髪にアメシストのブローチは実に映えたので、魔法宝石(マジックジュエル)の注文が絶対来ると信じています。
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そろそろ、エレオノール8歳の誕生日です。
僕も10歳になったことですし、例年のおもちゃやお菓子などではなくちょっと背伸びしたプレゼントをしたいと思います。
トリスティンまで足を伸ばしての宝飾店で目ぼしいアクセサリを探してみたり、商人のエドモンさんに頼んでアクセサリーを作る職人さんを紹介してもらったりしました。しかし何か違うという感じが心から離れず結局プレゼントが決まりませんでした。
結局、手持ちの宝石などで僕なりの気持ちを込めたプレゼントをすることにしました。僕が錬金抽出できる最高の金属の銀と、あまり評価の良くなかったルビーとサファイアを使って指輪を成形(フォーム)することにしました。(ネックレスなどは、細工が細かすぎて今の僕には無理でした。)
試行錯誤の末、銀の指輪に薔薇を浮き彫りにして、その左右にこの世界の月をイメージしたルビーとサファイアを配した簡素な指輪が完成しました。
(銀は化学変化をおこしやすいので、速攻で固定化(フィックス)します)
今の僕にはこれが精一杯です、エレオノール嬢はがっかりするかもしれませんが、今の僕の最高の誠意を表した物と思ってくれたら良いと思います。
さあ、明日のラ・ヴァリエール家での誕生パーティに備えて今日は早く休み事にしましょう。
翌日、馬車でラ・ヴァリエール家の屋敷を訪れると、沢山の貴族たちがエレオノールの誕生パーティに出席していました。羽振りのいい貴族は大粒のルビーのネックレスなどをプレゼントしていました。
(こんな状況では僕のプレゼントなんて霞んでしまいますね)
もやもやした気持ちを抱えながら、僕がプレゼントを渡す番になってしまいました。僕はおずおずと、エレオノールに銀の指輪を差し出しました。
「これが今の僕に出来る最高のプレゼントだよ、エレオノール」
「スティン兄様、これはもしかしてお兄様ご自身で作ってくれたものですの?」
「うん、そうだよ出来が悪くて申し訳ないんだけれど」
「いいえ、スティン兄様がご自身の手で作って貰った物を頂けるだけでエレオノールは幸せです」
拙い指輪だったけど、エレオノールには意外と好評でした。
「兄様の手で嵌めて頂けますか?」
そう言って、エレオノールは僕に左手を差し出してきました。ぼくはぎこちなくエレオノールの手をとると、彼女の指に指輪を嵌めようとしました。
最初は人差し指に嵌めようとしたんですけど、小さすぎて嵌りませんでした。考えてみれば、指輪のサイズなんて気にしていませんでした。次は小指に試しましたがこれはぶかぶかでした。薬指に試すと丁度良く嵌りました、一安心です。
その様子を見ていた、ラ・ヴァリエール公爵は、
「ラスティン殿は早熟ですな、もう家のエレオノールにプロポーズするとは!」
と言い出し、我が家の両親もそれに悪乗りして、いつの間にか僕とエレオノールの婚約が成立してしまいました。(最初は冗談だと思ったんですけど意外とどちらの両親とも本気の様です。)
「10歳の男子と8歳の女子の婚約なんて非常識です」
と主張してみましたが、貴族間ではそんなに珍しい事ではないと言われると断りにくいです。
それに加えてエレオノールが、
「スティン兄様は、私と婚約することがお嫌なのですか?」
と涙を浮かべて尋ねて来たので僕は白旗を上げるしかなかったです。
(まだエレオノールは婚約の意味分かっていないんだろうな)
こうして僕は、ラ・ヴァリエール公爵家息女エレオノールの婚約者になってしまったのでした。
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