第31話 ヤヨイ対カケル 2戦目
「決めた。服を買いにいこう」
しばらくして、白い服のヤヨイが言った。
「そうだね。精神体を維持するのにも慣れてきたし」
緑の服のカケルは、ヤヨイの分離時間を計っている。強制的に本体に戻されることはなかった。
まるい光のドームが消えて、肉体に戻る二人。
十代半ばの少年少女は、お手頃価格の衣料品店へと向かう。
「どうかな? これ」
「どうって言われても困る」
二人は、夏服を選んでいた。
旅荷物を少なくするため、あまり服を持っていない。
カケルも、ヤヨイに負けず劣らず、バトル以外のことには
深緑の服と赤い服を買い込んだ二人。
白い学生寮のような建物へと戻り、自室で荷物を置く。
カケルがヤヨイの部屋に行った。
昼食作り兼、料理の勉強がはじまる。
能力バトルでは目覚ましい成長を
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
利き腕ではないほうの手で料理を食べた二人が、ほぼ同時に言った。
二人で協力して食器を洗う。
すぐにまるい広場へ行く。日差しから二人を守るのは、高い場所にある傘。
模擬戦で、精神体の維持できる時間を計ることにした。
時間を計りつつも、二人は遠距離で戦う。
白い服の少女は、30分経過しても分離が解除されないようになっていた。
部屋で歯磨きをする、ヤヨイとカケル。
再び緑色の広場にきた。
スズネとタクミは、まだ戻っていない。
「ねえ。能力バトルしない?」
「模擬戦じゃなくて?」
「うん」
「正直、普通に戦っても、勝てる気がしないよ」
短髪の少年は、
「なら、素手と剣、両方を使った戦いでどう?」
ヤヨイが食い下がる。揺れるロングヘア。
「それでも……分かった。やろう」
少女の提案に賛成したカケル。その目に、炎が宿った。
二人が同意した。
戦闘空間が広がっていく。
それぞれの肉体が、光の壁に包まれる。
白い服のヤヨイと、緑の服のカケルが現れた。
外食から帰ってきていた少年少女がいる場所まで戦闘空間は広がり、止まる。
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
二人はほぼ同時にお
ヤヨイは素手。
カケルも素手だ。
おたがいに、じりじりと近付いていく。
二人が、同時に仕掛けた。
どちらも左手でかるく牽制して、つぎの攻撃を狙う。
ヤヨイは強力な攻撃がくると予想。左手に半球体の光の壁を発生させ、ガードしていた。
カケルは、その
白い服の少女は、無理せず引いていた。
カケルが左手で突きを繰り出す
ヤヨイはあわく光る剣を振るわず、左手で突きを繰り出し、当てる。
緑の服の少年は、
カケルは、もう一度左手で突きを繰り出した。今度は右側、ヤヨイの左手のほうを狙う。
なにもしないヤヨイ。
カケルの左手に、細身の剣が現れる。逆手で持つ少年。
大ダメージ狙いの攻撃を、少女は予想していた。あわく光る刀身をガードで防ぐ。
二人は、おたがいに油断のない顔つきですこし離れた。
カケルが逆手の剣を消す。
ヤヨイが右手に剣を出した。
身体の中心部をねらって、突きを繰り出す。
カケルはすこし左に移動しながら、右手で剣をつかむようにガード。
左手を振り下ろし、ヤヨイの右腕にダメージを与えた。
ヤヨイは途中で剣を消し、
「何だ?
「近付いて大丈夫かしら?」
戻ってきたタクミとスズネ。ただならぬ雰囲気に戸惑っている。
空中に浮いたゲージが、お互い3分の1減っていた。
ヤヨイには相手の動きがゆっくりと見えている。
カケルにも相手の動きがゆっくりと見えている。
見物人の目には、何が起こっているのかよく分からない速さだ。
攻防を続ける二人。どちらも大ダメージを与えることができない。両者ともゲージは、残り4分の1。
ヤヨイは笑った。
なぜ相手が笑ったのか分からないカケル。つられて笑う。
二人は、さらに戦った。
ヤヨイが左手に剣を構えて、カケルも左手に剣を構える。
ヤヨイが右手に剣を構えて、カケルも右手に剣を構える。今度はカケルが笑った。
二人は火花を散らした。
『ありがとうございました!』
勝負のあとで同時に言った二人。満面の笑みを見せる。
カケルの剣は、わずかに届かなかった。
「青春だな」
「よかったね」
見ていたタクミとスズネが、よく分からないことを口走る。
見物人に取り囲まれたヤヨイとカケルの代わりに、二人は模擬戦を始めた。
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