私は花にはなれない

私は花にはなれない


私は海にもどれない


私は鳥ではない


獣でもない


貝ではいられない


そうして私以外のなにものではないという悲しみがまた水盤に満ちる


その色を見定めんとすると私の顔ばかりが映る



私は山に眠れない


私は月に祈れない



物思うことを知ったとき、我れらが御祖みおやは大地と別たれた


物綴ることを学んだとき、我らが御祖は空に見放された


もはや我がトーテミズムの幻影は文学にしかない


さればこそ言の葉よ


束の間でもよいから私を眠らせてくれ


彼女は百合の如く微笑み


私は海にもどったと。

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