笑み

それは見ているだけかもしれない


半開きにしたクローゼットの暗闇から

カーテンの隙間から

天井裏から

鏡の向こうから

隣の部屋から


ただ待ち構えているだけかもしれない


あなたのベッドの下

本棚の裏

押入れの中

ベランダの室外機の影

玄関前


祈りが欠ける瞬間を

母にもらったお守りをつい忘れるとき

根付が壊れるとき

鈴の割れるとき

いつかも鍵を閉め忘れ……


ぜんぶほんとに確かめた?

ほんとにぜんぶ検めた?



だったら、ねぇ、いま影がゆれたのは本当にみまちがいだったかしら?

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