19
「それじゃあコレ、借りて行くぞ」
「おう」
「あ、待ってエルー…私も…」
エルーが金属防具一式を持って出て行くとリザリーも後を追うように部屋から出て行く。
…さーて、精霊用のでも作るとするかな…
先ずは魔石を作ってから金属を加工、その後に調整…
…まあ今日中には試作品は出来るだろ。
問題はどうやって性能をテストするか…だが、ソレは作ってから考えるとしよう。
…とりあえず魔石の元になる宝石選びからだ。
いや、精霊用だからな…金属防具一式と一緒で宝石じゃなくて魔石を使った方がいいかね…?
そうなると金属防具一式と同じく魔力を吸収して蓄積させる万能なタイプにするか、精霊用に出力だけを考えた特化タイプにするか…
なんなら誰でも使えるクセの無い万能タイプ…
性能が尖り過ぎて使い手を選ぶ特化タイプ…
…うーむ、どっちにするか悩むぜ…
…結局精霊用は人間用の魔導装備と差別化をするために特化型の魔石を使う事を決め、色々と準備するだけで一日が終わる。
「ていと起きてー!」
「…んあ…?」
…まだ辺りは暗い中、ショコラが気持ち良く寝てる俺を揺すって起こしてきた。
「…ふあ~…まだ朝じゃねぇじゃん…」
「お願い、貸し2あげるから私に付き合って」
あくびをしながら呟くと珍しく焦ったように依頼のような事を言う。
「…え…?告白?デート?こんな真夜中に?」
「違う!その付き合うじゃない!」
寝起きで頭が上手く働かないので思った事を率直に聞くとツッコむように否定される。
「…じゃあなんだよ…こんな夜中に…」
「軍の方から仕事を回されたの、ソレにもう5時前だよ?」
「…軍、ねぇ…まあ貸し2だからいいか…準備オッケー?」
「あ、じゃあ準備してくる!」
俺の言葉を修正するような事を言ったショコラに了承して確認すると走るように部屋から出て行く。
…アッシーとは言え、俺も変装ぐらいするかな…ふあぁ…
俺はあくびをしながら無名を少し抜いて刃に指を滑らせて切り、血を舐めて例のあの場所へと影移動した。
そして一般人には見破られないようなちょっとだけ簡単な変装をして元の部屋に戻る。
それから10分後。
「準備オッケー、とりあえずココにお願い」
「…どこだココ?ミニズマ?」
準備ができたショコラが地図を広げて良く分からない国の地域を指差すも、辺境の小国っぽいので俺は首を傾げた。
「この前行ったでしょ?」
「全っ然、記憶に無いが」
「えー、デートしたじゃん…アイスも食べてさー」
「…マジで?お前とのデートだったら覚えてるハズだけどなぁ…」
ショコラの確認に首を振ると過去話のような事を言うが、全く記憶に無い。
…ミニズマってどこだよ…まあ今の時間帯なら時差を考えてもギリギリ行けるだろ。
行った事無いから正確な場所には影移動できないけど、ある程度大まかでも多分なんとかなるさ。
そんなこんな適当な感じでショコラにアイマスクを着けさせて目的地の近くへと影移動。
「着いた?」
「着いた」
「…ココ、どこらへん?」
ショコラが確認してきたので短く返したらアイマスクを取って地図を見ながら尋ねる。
「ん~、街があっちだから…多分このへん」
「…じゃああっちだ」
地図を覗き込んで周りの景色と比べて指を差すと街の方へと歩いて行く。
「…こんな所になんの用だ?」
「良く分かんないんだけど、軍の部隊が謎の襲撃を受けて戦闘中なんだって」
後ろをついて行くように歩きながら疑問を聞くとふわっとした感じの答えが返ってきた。
「…謎の襲撃?」
「正体不明…というよりも所属不明?の部隊に襲われたって報告があったんだって」
詳しい話は私も聞いてないんだよね~、とショコラは良くそんなんで仕事を受ける気になったな…と思いたくなるような事を楽観的に言う。
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