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…そしてやる事も無いまま車に乗る事約30分。
「…ここからは封鎖区域です、お気をつけ下さい当主様」
どうやら千代田区の封鎖区域に着いたらしく車が止まり、助手席に乗っていた男が外に出てドアを開けながらそう告げた。
「ご苦労様ぁ」
…え?護衛的な奴らはココで待機しとく系?
それとも一旦帰んの?…護衛のくせに妖怪退治は出来ない感じ?
式使のお姉さんは労いの言葉を言い車を降りると護衛の二人を残してスタスタ歩いて行ったので、疑問に思いつつ後をついていく。
「!おお!やっと来たか!」
封鎖区域内に入って直ぐに式部の姿が見え、こっちに気づくと嬉しそうな顔で近づいて来る。
「赤ぁ、コレ…遠間のお兄さんからの差し入れの弁当」
「?遠間程人から…?」
式使のお姉さんが白いビニール袋を差し出すと式部は不思議そうに俺を見た。
…こっち見んなや。
「何見てんだよ」
「…いや、珍しいな…と」
不快そうに眉間にシワを寄せてヤンキーのごとく睨みながら言うが、式部は全く気にせずに式使のお姉さんからビニール袋を受け取る。
「弁当の中身はチャーハンと八宝菜と卵スープや、とっても美味しかったでぇ」
「ほう!ソレは楽しみだ」
…たまにだけど、大阪弁というか関西弁と言うか…
式使のお姉さんが京都の方言じゃないような訛り方をする時があるのはなんでだろう?
俺も変な訛り方ってか喋り方ってか言葉使いらしいけど…
色んな方言が混じってるとやっぱ気になるよなぁ…
式部の全く気にしてないところを見ると、普段はあんな関西弁と大阪弁と京言葉が混じったような喋り方なんだろうよ。
…別にソレが悪いと思ってるワケじゃないが。
単一だけの純粋な言葉じゃない個性的な感じだと、どうしても慣れるまでは気になってしまう…ってだけだ。
「一応情報の礼だ、この俺の手作りなんだからありがたく食えよ」
「…手作り、だと?…ふむ…ではありがたく頂くとしよう…いただきます」
俺がしょうがないといった感じで言うと式部は紙を取り出し、テーブルとイスを召喚?して手を合わせた。
…え…式神って人型のモノだけじゃなくて無機物まで出せんの?
「…では、あてらは妖怪退治といきますかぁ…」
内心驚いてるが外面は変わらないため、式使のお姉さんは普通に話しかけると人型の紙を取り出して式神を召喚する。
「…そうだな……金属防具一式」
俺は一拍置いてから返事し、ポーチから小箱を取り出して更に金属防具一式を取り出した。
「…防具をつけるのか?…今日は珍しい事だらけだな…にしても美味い!!」
いつの間にか式部はテーブルとイスを片付け、俺の隣でチャーハンを食べながら話しかけてくる。
…え?もう卵スープと八宝菜を食ったの?コイツ。
…いくらなんでも早すぎるだろ…ちゃんと噛んだのかよ。
…つーかテーブルとイスの意味。
出しても使ってないんなら出す意味ねぇだろ。
「…もう食ったのか?」
「……いや、まだ八宝菜が残っている…まさか程君が料理の達人だったとはな…」
俺の問いにチャーハンをかき込み、手で口を覆いながら驚いたように呟く。
「…卵スープ一気飲みかよ…急かしてねぇんだからもっとゆっくり味わって食えや」
「…本当に美味しい料理というのは味わう前に無くなっているモノだ…ほら、もう無くなっている」
俺が金属の脛当てを着けながら呆れたようにため息混じりで言うと、式部は意味不明な事を言って空の容器を見せる。
「…おいおい、まだ5分も経ってねぇぞ?お前の早食いはどうなってんだ」
あまり早く食べすぎると消化に悪いとかなんとかじゃなかったっけ?
…アレは普通の一般人だからなのか?鍛えられた鋼鉄の胃袋なら大丈夫な系?
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